第20話:一軍への扉、新たな誓い
支配下登録の報せは、
私たち二人の人生を、
大きく、そして確かな光で照らした。
雄太の顔には、
これまで見たことのないような、
清々しい笑顔が広がっていた。
彼の努力が、ついに報われたのだ。
けれど、雄太は、
決して立ち止まることはなかった。
支配下登録は、あくまで通過点。
彼の目は、すでに次の目標、
「一軍昇格」へと向かっていた。
その日から、彼の練習は、
さらに熱を帯びていった。
野手として、彼は打撃フォームを微調整し、
守備練習にも、これまで以上に時間を割いた。
彼のバットから放たれる打球は、
日を追うごとに、ますます鋭さを増し、
二軍の練習場に響く快音は、
まるで彼の進化を告げるかのようだった。
守備では、グラウンドを縦横無尽に駆け回り、
どんな打球にも食らいつく。
その姿は、まさにプロの選手そのものだった。
私もまた、彼の隣で、
これまで以上に彼を支えることを誓った。
彼の体調管理はもちろんのこと、
精神的なサポートも、より一層、
気を配るようになった。
疲れて帰ってきた彼に、
温かい食事を用意し、
彼の好きな音楽を流して、
少しでもリラックスできる時間を作った。
マッサージをする私の手にも、
彼の筋肉の張りは、相変わらず伝わってくる。
けれど、その張りは、
以前のような疲労の色だけでなく、
確かな成長の証のように感じられた。
佐々木コーチは、
雄太の成長を間近で見守り、
的確なアドバイスを送り続けてくれた。
「田中くんは、本当にすごい。
諦めない心と、努力する才能がある」
佐々木さんの言葉は、
雄太にとって、何よりも大きな励みになっていた。
そして、私にとっても、
彼の言葉は、雄太を信じ続ける力になった。
二軍の試合では、
雄太の活躍が、ますます目立つようになった。
打率も着実に上がり、
ホームランも増えていく。
守備でも、幾度となくチームのピンチを救う。
彼のプレー一つ一つが、
観客を魅了し、
彼のファンも、少しずつ増え始めていた。
スタンドから聞こえる「田中!」という声援が、
日に日に大きくなっていくのを感じた。
ある日の試合後、
雄太が私に言った。
「美咲、俺、一軍に上がるよ」
その言葉は、確信に満ちていた。
彼の瞳は、強い光を宿し、
まるで、すでに一軍の舞台に立っているかのようだった。
私は、彼の言葉に、
ただ頷くことしかできなかった。
彼の決意が、私にも伝わってくる。
その時、私の心の中にも、
確かな未来の光が見えた気がした。
夜、二人で未来について語り合った。
「一軍に上がったら、まず、
美咲を招待するからな。
最高のプレーを見せるよ」
雄太が、そう言って笑った。
その言葉を聞くたびに、
私の胸は、期待でいっぱいになった。
彼が一軍の舞台で輝く姿。
多くの観客の前で、
彼の夢を叶える姿。
その日が来ることを、
私は何よりも楽しみにしていた。
「そして、いつか、
また二刀流にも挑戦したい」
雄太が、ふとそう呟いた。
彼の声は、静かだったけれど、
その言葉には、揺るぎない決意が込められていた。
彼の胸に燻る、秘めたる二刀流の夢。
それを、彼は決して忘れてはいなかった。
私は、彼の真意を悟り、
彼の手に、そっと自分の手を重ねた。
「うん。雄太なら、きっとできるよ。
どんな夢でも、私が支えるから」
私の言葉に、雄太は優しく微笑んだ。
その笑顔は、迷いを断ち切った、
清々しい笑顔だった。
彼の夢は、もう彼の夢だけじゃない。
私と、そして彼の周りの大切な人たちの夢になっていた。
彼の挑戦は、私にとっても、
人生を賭けた挑戦だった。
この先に何が待っていようと、
私は彼と共に、この道を歩んでいく。
そう、心に誓った。
夜空には、満月が煌々と輝いていた。
彼の温かい手のひらが、私の手を握る。
その温かさが、私たちの絆を、
何よりも強く、私に感じさせた。
私たちは、固く手を繋ぎ、
新しい未来へ向かって歩き出した。
アオハルに還る夢。
その夢は、今、確実に、
私たちの目の前で、輝き始めていた。
一軍への扉が、
もうすぐ開かれようとしている。
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