第18話 ふたりでひとつの贈りもの2

『なにさ!』


『ふんっ、だ!』


『……』


『……』


 そうして始まる取っ組み合いの喧嘩。これで今日何度目だよ? まったく、喧嘩するなら別の場所でやってくれ。それかどっちかが帰ればいいだろう。


「ほら、2人ともやめろ。喧嘩するんじゃない」


『まったく、お前らは何度喧嘩すればいいんだ』


『ほら、離れろ離れろ、離れてれば喧嘩できないだろう』


 俺とシロタマとカエンでピョコとクルリを離す。そうして離した2人を、ピヨ太たちがまた近づかないようにバリアする。


 ピョコは跳狐というあやかしで。小さな狐火を足元に灯して、その炎を踏み台にして高く跳ねることができる。驚かせて遊ぶのが大好きな、いたずら好きのあやかしだ。


 そしてクルリは、跳狸というあやかしで。葉っぱを使うことで、一瞬だけ姿を消し、まるで瞬間移動したかのように素早く移動できる。かくれんぼが大好きで、隠れるのがとびきり上手なあやかしだ。2人の名前も俺が考えたぞ。


 いつも2人は、いつも一緒にいて、仲良しコンビと呼ばれるほどで、確かに1人でいるところを見たことはなかった。


 そんな2人はカエンたちと違い、毎日遊びに来るのではなく、時々遊びに来る感じだったんだけど。ここ3日程前から毎日やってきては、ずっと喧嘩しっぱなしで帰る、というのを繰り返していた。


 仲良しコンビと呼ばれるほどの2人が、どうしてこんなに喧嘩を繰り返しているのか。あまりの酷さにに、もちろん俺は理由を聞いたよ。だってそうだろう? ずっと俺の所へきて喧嘩されてもな。


 もしも理由を聞いて、俺かシロタマたちあやかしが、喧嘩の原因を取り除き、2人が仲直りしてくれれば。もうこんな面倒からは解放されると思ったからさ。

 

 だけど、どうにもそれが簡単じゃなかった。いろいろと面倒ごとが絡み合っていたんだ。


 実はこの2人には、人間の子供の友達がいる。ただ、あやかしというのは伝えずに、動物として子供と友達になったらしい。

 その子はある山のふもとに住んでいる、おじいさんの所に引っ越してきた子で。2人もその山に住んでいたから、その子が引っ越してきてから、すぐに仲良くなったようだ。


 そして今回の喧嘩だけど、この子供が2人にぬいぐるみをくれた事が発端だった。その子は俺と同じで、ぬいぐるみを作るのが好きらしく。1週間前に、その子は自分で作ったぬいぐるみを、2人にプレゼントしてくれたんだ。


 でも、そのぬいぐるみが……。その子が2人にプレゼントしたのは、1つのぬいぐるみで。2人で仲良く一緒に遊んでね、とその子に言われたと。


 それを見た2人は、というかピョコはショックを受けた。実物を見ていないから、その辺はなんとも言えないけど。ピョコ曰く、そのぬいぐるみはクルリそっくりだったらしいんだ。プレゼントは1つ、それなのにその姿はクルリそっくり……。


 それでピョコはこう思ったんだ。今までずっと一緒に遊んできて、みんな友達だと思っていたのに、何で自分の姿じゃないの? 僕は友達じゃなかったの? クルリの方が好きなの? と。


 それから2人は喧嘩するようになってしまったんだ。最初はクルリも、なんとかいつもみたいに遊ぼうと、ピョコに元気になってもらおうとしたらしい。

 もしかしたら今、ピョコのぬいぐるみを作ってるかもとか、せっかくのプレゼントのぬいぐるみ一緒に遊ぼうよ、なんて誘って。


 だがピョコは、大好きなあの子と遊んでくれば? ぬいぐるみは僕じゃなくて、クルリのじゃん、と拒否。


 それでそんな毎日を送っているうちに、2人は完璧に喧嘩をするようになってしまったんだ。挙句……。


 3日前、喧嘩のすえに、ぬいぐるみを壊してしまったらしい。しかもその現場に、ぬいぐるみを作ってくれた子供がきてしまい。2人はその場から逃げて、お互いが悪いとさらに喧嘩に。


 その延長で、今俺の所に来て、喧嘩しているって感じだ。なんで俺の所なんだよ、って聞いたら。子供に謝りに行って、ぬいぐるみを俺に修復してもらおうと思ったと。


 だけど、正体を明かしていなかったからな、まずはそこからって事で。突然子供に話しに行っても、怖がられて2度と会ってくれなくなってしまう可能性もあるし。

 たとえ大丈夫だったとしても、ぬいぐるみを壊してしまったことに、せっかく作ったのにと子供が怒っていて、会ってくれないかもしれない。というような心配事だらけで。

 

 謝りに行きたいのに行けない。お前がいけよ、そっちが行けよで。今度はどっちが謝りに行くかでも、さらに喧嘩になっているっていう。


「まったく、ずっと喧嘩してるつもりか? 2人で壊したんだろ? なら2人で謝らなくちゃダメだろう」


『僕のせいじゃない』


『ボクだって違うもん』


『お前たち、良い加減にしないか。本当に自分が悪くないと思っているのか? 確かにぬいぐるみは1つしかもらえず、クルリに似ていたかもしれない。なぜそんな事をしたのか、それは俺にも分からんが。だがな、大切な物を2人が壊したのは事実なんだぞ』


『そうじゃぞ。2人がどう言おうと、作ってくれた相手には、きちんと謝るべきではないのかの』


 シロタマたちが説得してくれる。だけど……。


『僕知らない!!』


『ボクだって知らない!!』


 そう言い残して2人は、窓から出て行ってしまった。


『はぁ、まったくあの2人は』


『どこに子供が住んでるのか。ちょっと探して、向こうの様子を見てくるか。それでなるべく2人に謝らせるか』


『だがな、2人の言ったこともな。あやかしだと伝えたらどう反応するか』


『でもこのままじゃダメだろう、3人にとってな』


 みんなが、これからピョコたちにどうさせるかを考える。俺的にはみんな今までのような関係に戻って欲しいんだけど。その方法がな。


 こうして少し考えた後、良い案が浮かばずに、とりあえず宴会を始めたみんな。だけどこの2日後、俺の所にまさかの依頼が舞い込んだんだ。

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