『俺達のグレートなキャンプ54 電気ウナギと一緒にプールで遊泳』

海山純平

第54話 電気ウナギと一緒にプールで遊泳!

俺達のグレートなキャンプ54 電気ウナギと一緒にプールで遊泳


青い空に白い雲がぽっかりと浮かぶ絵に描いたような快晴の朝。山梨県の『清流の里キャンプ場』では、鳥のさえずりと川のせせらぎが心地よいハーモニーを奏でている。そんな平和な空気を一瞬で破壊する男が一人。

「よーし!今回のキャンプもグレートに行くぞー!」

石川が朝の爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込みながら、まるで世界征服でも企むかのような邪悪な笑みを浮かべて両手を天高く上げた。その姿はさながら、悪の組織の首領が新たな作戦を発表する瞬間のようだ。

千葉は石川の隣で、キラキラと目を輝かせながら周囲を見回している。「おお、今回は綺麗な川があるじゃないですか!石川さん、今回はどんなグレートなキャンプを?」その表情は、まるでサンタクロースからプレゼントをもらえると信じて疑わない純真な子供のようだ。

一方、富山はコーヒーカップを両手で包み込みながら、すでに疲れ切った表情を浮かべている。長年の経験が告げているのだ。石川のその笑顔は、間違いなく何かとんでもないことを企んでいる時の顔だと。

「ふふふ...千葉よ、よくぞ聞いてくれた!」石川は振り返ると、まるで魔術師が大技を披露する前のような不敵な笑みを浮かべる。「今回のテーマは『電気ウナギと一緒にプールで遊泳』だ!」

コーヒーカップが富山の手の中でガタガタと震え始める。「は?電気...ウナギ...?」声は震え、顔は青ざめ、まるで自分の余命宣告を受けたかのような表情だ。

千葉は首をかしげながらも、相変わらず興味深そうな表情を崩さない。「電気ウナギって、あの南米にいるやつですか?」

「そうだ!あの電気を発生させる魚と一緒に泳ぐんだ!これぞ究極のアクアティックキャンプだろう?」石川の目は狂気的なまでに輝いている。

富山のコーヒーカップがついにカタンと音を立てて地面に落ちた。「ちょっと待って石川!電気ウナギって、あの人を感電死させるやつよね!?まさか本物を?」

「もちろん本物だ!偽物じゃ意味がないだろう?」石川が胸を張って答える。その堂々とした態度は、まるで世紀の大発明を成し遂げた科学者のようだ。

千葉の目がさらにキラキラと輝く。「うわー!本物ですか!すげー!石川さんはいつも僕たちの想像を超えてきますね!」拍手をしながら小躍りする姿は、まるでアイドルのライブ会場にいるファンのようだ。

富山は両手で頭を抱え、まるで世界の終わりを悟ったかのような絶望的な表情を浮かべる。「また始まった...今度こそ本当に死ぬかもしれない...」呟く声は蚊の鳴くように小さく、風に消えそうだった。

石川は大きなビニールプールを車から引っ張り出す。直径は優に3メートルを超え、深さも1メートル近くある本格的なものだ。「まずはプールの設営だ!電気ウナギが快適に過ごせるように、しっかりとした環境を作らないとな!」

千葉が空気入れを手に取りながら興奮する。「うわー!でかいプールですね!これなら電気ウナギも窮屈じゃないですね!」

富山は半ば諦めの境地に達しながらも、なぜか手伝い始める。もはや抵抗する気力も失せたのか、それとも長年の友情が勝ったのか。「で、肝心の電気ウナギはどこから調達したのよ?まさか密輸じゃないでしょうね?」

石川がリュックからタブレットを取り出し、得意げに画面を見せる。「安心しろ!ちゃんと正規ルートで手配済みだ!専門業者に頼んで、今日の午後には届く予定だ!」

画面には確かに『電気ウナギ(デンキウナギ)1匹 レンタル料:1日50,000円』と表示されている。富山の目が点になる。「ちょっと待って!5万円って!そんなお金どこから?」

「キャンプ貯金を全部使った!」石川が爽やかに答える。

「全部って!」富山の声が裏返る。「あなたのキャンプ貯金っていくらあったのよ!」

「30万くらいかな?」

富山が膝から崩れ落ちる。「30万...キャンプ一回で30万...」

千葉は相変わらず能天気だ。「すげー!石川さんの本気度が違いますね!これは絶対に最高のキャンプになりますよ!」

プールの設営中、隣のテントから家族連れがひょっこりと顔を出した。お父さんが人懐っこい笑顔で声をかけてくる。「おはようございます!すごい立派なプールですね!お子さんたちが喜びそうだ!」

石川が満面の笑みで振り返る。「おはようございます!実はこれ、電気ウナギと一緒に泳ぐためのプールなんです!」

お母さんの顔が一瞬で青ざめる。「で、電気ウナギ!?あの感電する魚の?」

「そうです!本物の電気ウナギと一緒に泳いで、大自然との一体感を味わうんです!」石川が身振り手振りで熱弁する。

小学生の太郎君が目をキラキラさせながら飛び跳ねる。「うわー!すげー!電気ウナギって本当にいるんだ!僕も一緒に泳ぎたい!」

お母さんが慌てて息子を引き寄せる。「だめよ太郎!危険すぎるわ!」

お父さんは意外にも興味深そうな表情を浮かべる。「いやあ、面白そうじゃないですか!私も昔、アマゾンでピラニアと泳いだことがあるんですよ!」

富山が苦笑いで頭を下げる。「すみません、うちの仲間がちょっと常識外れでして...」

「いやいや、キャンプは冒険してなんぼでしょう!」お父さんが手を叩く。「もしよろしければ、私も参加させてもらえませんか?」

石川の目がさらに輝く。「おお!大歓迎だ!みんなでやれば楽しさも倍増だからな!」

お母さんが天を仰いでため息をつく。「この人たちみんな頭おかしい...」

午後2時。ついに運命の時が来た。『エキゾチックアニマルレンタル』の軽トラックがキャンプ場に到着する。作業服を着た配達員が大きな水槽を慎重に運んでくる。

「電気ウナギのお届けでーす!」

水槽の中で、体長1メートル近くある黒っぽい魚がゆらゆらと泳いでいる。見た目は確かにウナギだが、その威圧感は半端ではない。まるで水中の王者のような風格を漂わせている。

千葉が水槽に顔を近づける。「うわー!本物だ!思ってたより大きいですね!」

配達員が慌てて千葉を止める。「あ、あまり近づかないでください!この子、結構気性が荒くて、最大600ボルトの電気を出すんです!」

富山の顔がさらに青くなる。「600ボルト!?それって家庭用電源の6倍じゃない!」

「大丈夫です!」配達員が慌ててフォローする。「普段はそんなに強い電気は出しませんから!興奮したり驚いたりした時だけです!」

石川が手を叩く。「よし!それじゃあ静かに、優しくプールに移そう!」

配達員と石川、千葉の三人でウナギを慎重にプールに移す。ウナギはプールの中をゆったりと泳ぎ始め、とりあえず落ち着いているようだ。

「それでは気をつけて!何かあったらすぐに連絡してくださいね!」配達員がトラックで去っていく。

残された四人とウナギ。静寂の中、プールの水面がちゃぷちゃぷと小さな音を立てている。

石川が水着に着替えながら宣言する。「よし!それじゃあ早速入ってみよう!」

富山が絶望的な表情で止める。「ちょっと待って!いきなり入るの?せめて様子を見てからにしましょうよ!」

「大丈夫だ!ウナギも落ち着いてるじゃないか!」石川がプールサイドに立つ。

千葉も水着に着替えて並ぶ。「僕も一緒に入ります!石川さんと一緒なら安心です!」

お父さんも水着になって参戦。「私も混ぜてもらいます!これは貴重な体験だ!」

三人の男たちがプールサイドに並ぶ様子は、まるで死刑台に向かう囚人のような悲壮感と、同時に子供のような無邪気な興奮が入り混じった複雑な雰囲気を醸し出している。

「せーの!」

三人が同時にプールに飛び込む。水しぶきが上がり、ウナギがビクッと体を震わせる。

「うわー!冷たい!」千葉が歓声を上げる。

「ウナギだ!本物のウナギがいる!」お父さんが興奮している。

石川がウナギに近づこうとした瞬間。

「ビリビリビリ!」

「うわあああああ!」石川が飛び上がる。髪の毛が逆立ち、目が点になっている。

富山が慌てて駆け寄る。「石川!大丈夫!?」

「だ、大丈夫だ...ちょっとピリッときただけだ...」石川がフラフラしながら答える。

千葉とお父さんは慎重にウナギから距離を取りながら泳いでいる。「すげー!本当に電気が流れるんですね!」

「これは確かにスリリングだ!」お父さんも興奮している。

ウナギは三人が入ってきたことで少し警戒しているようだが、攻撃的な様子は見せていない。ただし、時々思い出したように軽く電気を放電する。

「ビリビリ!」

「うわっ!」千葉が小さく跳ねる。

「ビリビリ!」

「おお!」お父さんが笑いながら電気を受ける。

プールの周りでは、お母さんと富山が心配そうに見守っている。太郎君は興奮して飛び跳ねている。

「お母さん!僕も入りたい!」

「絶対だめ!」お母さんが息子を抱きしめる。

富山はため息をつきながら呟く。「あの人たち、楽しそうだけど本当に大丈夫かしら...」

プールの中では、三人がウナギとの共生を図ろうと必死だ。石川が優雅にバタフライで泳ごうとする。

「見ろ!ウナギと一緒に泳ぐ俺の美しいフォームを!」

その時、ウナギが石川の足に触れる。

「ビリビリビリビリ!」

「ぎゃあああああ!」石川が水面から飛び出す勢いで跳ね上がる。その様子はまるで漫画のキャラクターが感電した時のような、髪の毛が逆立って目が白目になっている状態だ。

千葉が心配そうに駆け寄る。「石川さん!大丈夫ですか!」

「だ、大丈夫だ...電気ウナギとの友情を深めているところだ...」石川がヨロヨロしながら答える。

お父さんが感心する。「これは確かに他では味わえない体験ですね!」

その時、隣のキャンプサイトから人だかりができ始めた。

「あそこで何かやってるぞ!」

「プールで泳いでるけど、何か変な魚がいるね!」

「あれって電気ウナギじゃない?」

「え?本物の?」

あっという間に野次馬の輪ができ上がる。石川は俄然やる気を出して、観客に向かって手を振る。

「皆さん!これが究極のアクアティックキャンプです!電気ウナギとの共演をご覧あれ!」

そして華麗に平泳ぎを披露しようとした瞬間。

「ビリビリビリビリビリ!」

今度は連続攻撃だ。石川が水中でビクビクと痙攣している。

「石川さーん!」千葉が慌てて助けに行こうとして、自分も感電する。

「ビリビリ!うわー!」

お父さんも巻き添えを食らう。

「ビリビリ!おお、これは刺激的だ!」

三人が水中でビクビクと痙攣している様子は、まるでシンクロナイズドスイミングの新しい演技のようだ。観客たちは大爆笑している。

「あはははは!何あれ!面白すぎる!」

「電気ウナギに感電してる!」

「でも楽しそうだね!」

富山は頭を抱えながら呟く。「もう見てられない...でも確かに盛り上がってるのよね...」

キャンプ場の管理人さんまでやってきた。「これは面白いイベントですね!でも安全面は大丈夫ですか?」

石川が水から上がって、髪の毛をボサボサにしながら答える。「大丈夫です!これも自然との共生の一環ですから!」

管理人さんが苦笑いする。「まあ、怪我さえしなければいいですが...でも確かに他では見られない光景ですね」

観客の中から声が上がる。「僕たちも混ぜてもらえませんか?」

石川の目がキラリと光る。「もちろんだ!みんなで楽しもう!」

富山が慌てて止める。「ちょっと待って!人数が増えたらウナギがもっと興奮するかもしれないでしょ!」

「大丈夫だ!ウナギも慣れてきたみたいだし!」

結局、次々と人がプールに入り始める。大学生のグループ、家族連れ、カップルまで。プールは人でごった返し状態になった。

「うわー!電気ウナギだ!」

「ビリビリ!きゃー!」

「面白い!もう一回!」

「ビリビリビリ!」

「ぎゃー!」

プールは笑い声と悲鳴が入り混じった大騒ぎになっている。ウナギは最初こそ戸惑っていたが、だんだん慣れてきたのか、適度に電気を放ちながらも穏やかに泳いでいる。

石川が満足そうに胸を張る。「どうだ!これぞグレートなキャンプだろう!」

千葉が感動で涙ぐんでいる。「石川さん、本当にすごいです!こんなに多くの人を笑顔にするなんて!」

富山も最初の心配をよそに、だんだん楽しくなってきたようだ。「確かに...みんな本当に楽しそうね...」

お父さんが石川に握手を求める。「いやあ、素晴らしい企画でした!家族でこんなに笑ったのは久しぶりです!」

太郎君も結局お母さんの許可をもらって、恐る恐るプールに入った。案の定、軽く感電して「うわー!」と声を上げるが、すぐに「もう一回!」とはしゃいでいる。

お母さんも最初は心配していたが、みんなの楽しそうな様子を見て安心したようだ。「確かに危険だけど...こんなに盛り上がるなんて思わなかったわ」

夕方になり、電気ウナギとの遊泳タイムも終了。みんながプールから上がって着替えている間、石川がまた悪だくみのような笑みを浮かべる。

「さあ、次はお楽しみの時間だ!」

千葉が首をかしげる。「お楽しみって何ですか?」

石川がBBQセットを取り出す。「電気ウナギの蒲焼だ!」

その場にいた全員が凍りつく。

「え?」

「ちょっと待って石川!まさかそのウナギを?」富山が青ざめる。

「もちろんだ!せっかく電気ウナギがいるんだから、最後は美味しく頂かないと!」石川が堂々と宣言する。

観客たちがざわめき始める。

「え?あのウナギを食べるの?」

「可哀想じゃない?」

「でも確かに美味しそう...」

千葉が困った表情を浮かべる。「でも石川さん、さっきまで一緒に泳いでた仲間ですよ?」

「そうだからこそだ!最後まで責任を持って付き合うのが、真の友情というものだろう?」石川が謎の理論を展開する。

お父さんが興味深そうに口を挟む。「電気ウナギって食べられるんですか?」

「もちろんです!南米では普通に食用として親しまれているんです!」石川が得意げに説明する。

富山がため息をつく。「まあ、レンタル代5万円払ったんだから、食べないともったいないのかもしれないけど...」

石川がプールからウナギを慎重に捕まえる。ウナギは最後の抵抗とばかりに強い電気を放つ。

「ビリビリビリビリ!」

「うわあああ!最後まで手強いやつだ!」石川が必死にウナギを押さえつける。

なんとかウナギを捕まえた石川は、手慣れた様子で処理を始める。「実は昔、料理の専門学校に通ってたことがあるんだ!」

「え?そうなんですか?」千葉が驚く。

「まあ、3日で辞めたけどな!」

富山が頭を抱える。「3日って...」

それでも石川の手際は意外にも良く、あっという間に電気ウナギが美味しそうな蒲焼に変身した。甘辛いタレの香りが辺りに漂い、観客たちの食欲をそそる。

「おお!すごくいい匂い!」

「本当に美味しそう!」

「電気ウナギって普通のウナギと味が違うのかな?」

石川が蒲焼を切り分けて、みんなに配り始める。「さあ!電気ウナギの蒲焼をご賞味あれ!」

恐る恐る一口食べた千葉の目が輝く。「うわー!めちゃくちゃ美味しいです!普通のウナギよりも弾力があって、なんか電気が通ってるような刺激的な味がします!」

お父さんも感動している。「これは絶品だ!確かに普通のウナギとは一味違いますね!」

富山も食べてみて驚く。「本当に美味しい...こんなに美味しいなら、最初から食用って言ってくれればよかったのに」

観客たちも次々と蒲焼を味わって、大絶賛している。

「これは新しいグルメ体験だ!」

「電気ウナギと泳いでから食べるなんて、こんな贅沢ないよ!」

「来年もやってください!」

石川が満足そうに胸を張る。「どうだ!これが究極のグレートキャンプだ!体験して、味わって、最後まで楽しむ!」

太郎君が蒲焼を頬張りながら言う。「お父さん!来年も絶対に参加しよう!」

お母さんも笑顔で頷く。「確かに危険だったけど、こんなに楽しい思い出ができるなんて...」

夜になり、キャンプファイヤーを囲んで三人が座っている。石川は満足そうに焚き火を見つめ、千葉は興奮冷めやらぬ様子で今日の出来事を振り返り、富山は疲れ切った表情ながらも、どこか満足そうな微笑みを浮かべている。

「今日は本当にすごい一日でしたね」千葉がコーヒーを飲みながら言う。

「みんなあんなに喜んでくれるなんて思わなかったわ」富山が火の粉を見上げながら呟く。

「これぞグレートなキャンプの真髄だ!ただ楽しむだけじゃなく、みんなで体験を共有する。それが一番大切なことなんだ」石川が哲学者のような表情で語る。

「石川さんの企画はいつも突拍子もないけど、結果的にはいつも最高の思い出になりますね」千葉が感謝を込めて言う。

「でも次回はもう少し安全な企画にしてよね?」富山が釘を刺す。「電気ウナギでも今回は奇跡的に誰も大怪我しなかったけど」

石川がニヤリと笑う。「次回は『トラと一緒にBBQ』なんてどうだ?」

富山と千葉が同時に「それは絶対にダメ!」と叫んだ。

「冗談だって!ははは!」石川が手を振って笑う。「でも何かもっとグレートな企画を考えるからな!」

星空の下、三人の友情は今日もまたひとつ深まった。そして石川の頭の中では、すでに次回の『グレートなキャンプ』のアイデアが湧き上がっているのだった。今度は一体どんな動物と、どんな無謀な...いや、グレートな冒険が待っているのだろうか。

焚き火の炎が静かに燃え続ける中、三人の笑い声がキャンプ場の夜空に響いていた。


次回『俺達のグレートなキャンプ55』もお楽しみに!

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『俺達のグレートなキャンプ54 電気ウナギと一緒にプールで遊泳』 海山純平 @umiyama117

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