第2話 君がいない間に、世界は動き出してた
陽翔が「モン・リア」を封印してから、3ヶ月が経った。
季節は夏。
大学の講義もレポートばかりになり、陽翔はエアコンの効いた図書館で静かに過ごす日々を選んだ。
ARグラスは相変わらず使っていたが、もっぱらスケジュール管理とニュースチェックが目的だった。
ところがある日――
「うおっ、またかよ」
図書館でグラスをつけたまま歩いていた陽翔は、いきなり視界に飛び込んできた“巨大な炎の竜”に思わず声をあげてしまった。
だが、周囲の学生たちは驚くどころか、慣れた様子で竜に向かって“構え”を取っていた。
「…なんで大学内にまで出てんだよ……」
それは、モン・リアのエンカウントエリアだった。
ARグラス越しに映る世界は、完全に“冒険の舞台”へと変貌していた。街を歩けば武器を振るう学生、恋人同士でパーティを組むカップル。
カフェには「ギルド集合中」と表示されたホログラムが浮かび、駅前では“イベントボス:サンダータイタン”の出現予告で人が群がっていた。
「すげえな……3ヶ月でここまで……?」
ニュースアプリによれば、『モン・リア』は世界ダウンロード数1億を突破し、政府も観光活性化の一環としてゲーム連動エリアの設置を推進しているという。
「……みんな、現実をゲームにしてるんだな」
そして――
偶然開いたSNSのトレンドには、ある言葉が踊っていた。
《#恋愛マスター最強説》
「……は?」
そこには動画が貼られていた。
美少女プレイヤーが、華やかに笑いながらAR越しに告白され、
《好感度+350!経験値獲得!》
《ジョブ特技【恋愛バリア】発動!仲間を魅了状態に!》
《レベル20ボーナス:キューピッド・アロー解禁!》
「……ふざけてんのか……!」
陽翔は立ち上がった。
再びグラスを装着し、久々に『モン・リア』を起動した。
“Welcome back, 恋愛マスター!”
――このまま、勇者になるつもりだった。
戦士や剣士に憧れてた。でも、それじゃ俺じゃなかった。
「レベル10にして、勇者になってやる。そのために――恋愛、してやるよ」
ARグラスの向こうに広がる世界が、少しだけ輝いて見えた。
レベル上げには恋が必要なようで @11ko-ki
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