レベル上げには恋が必要なようで
@11ko-ki
第1話 ジョブ「恋愛マスター」、君に決定!
西暦20XX年。
AIとARが融合し、街中を歩くだけで情報が目に飛び込む時代。コンタクト型のスマートデバイスが主流になりつつある中、大学生・中野陽翔(なかの はると)は、少しだけ旧型のARグラスを愛用していた。
「やっと来たか、『モン・リア』…!」
帰り道、キャンパスを出た陽翔はARグラス越しに浮かぶホログラム広告に目を止めた。
《リアリティーRPG『モン・リア』 本日リリース!君の現実が、冒険に変わる。》
現実世界を舞台に、モンスターとのバトル、仲間との連携、ジョブチェンジが可能な最先端ARゲーム。
しかも、グラスを通じていつでもどこでもアクセスでき、現実の通学路も、駅前のロータリーも、戦場になりうる。
陽翔はワクワクしながら、大学前のベンチに腰掛け、アプリを起動する。グラスの視界に、立体的な起動画面が浮かび上がった。
「うわ、すげぇ……」
透明なグラスの先に広がる現実の世界。その上に、ドラゴンの尾のようなエフェクトや、草むらから這い出るスライムの影が表示され、まさに“現実とゲームの融合”だった。
しかし、彼のテンションが最高潮に達したのは、ジョブ選択のはずのタイミングだった――
『現在、初期プレイヤーにはランダムジョブを自動割り当て中です』
「……え、選べないの?」
そして、運命の表示が空中に浮かび上がる。
『あなたの初期ジョブは――**恋愛マスター(超レア)**に決定しました』
「……は?」
さらに詳細が次々と表示されていく。
【恋愛マスター】
レベルアップ条件:現実世界で“恋愛経験値”を獲得すること。
例:好意を向けられる、デートをする、告白される、など
※レベル10未満では他ジョブに変更できません。
「ふざけてんのか……」
陽翔は思わずグラスを外した。
現実で恋愛なんて、自分にとってはラスボス級の難易度だ。高校時代、隣の席だった子を3年間好きだったが、結局名前しか話さなかった。
ああ、よりによって“恋愛マスター”なんて――
剣士や魔法使いがよかった。
現実世界をARで冒険するんじゃなかったのか。どうして俺は、“恋愛”を冒険しなきゃいけないんだよ。
陽翔は苦笑して、グラスをケースに戻す。
そのまま『モン・リア』をログアウトし、プレイ停止。アカウントも放置。
こうして、彼の“冒険”は、始まる前に幕を下ろした――
それから、3ヶ月の時が流れた。
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