キラーク✖2(BL番長VS魔族令嬢)

亀川暗(キセンクライ)

第1話「セプテンバーラブ」

 「どうしてここへ…屈強な、衛兵は?」

白いドレスに身を包んだ、美しい姿の金色で長髪のその少女…ナユタは、一瞬驚きを見せたが、現れた青年に既に惹かれるものを感じていた…

 「だり〜…スマンな…外にタバコ吸いに来ただけだ…お前に何もしねぇよ…」

城のテラスに背もたれして、百円ライターに火を付けようとするスーツを着崩したユウヤ… 

 「ここ…禁煙だよ…」

ナユタは、半笑いでたしなめたが、無視される…

 「ふ〜…くっだらねえパーティーだったな…」

タバコをふかし、空を眺める青年に、少し距離を置きながら、近づく少女…

 「でも…妃様…キレイだったよ…」

 「ありがとよ…俺の母ちゃんだ…」

 「でも、スゴイね…あの兵士達を…」

「あぁ…弱ぇ〜な…あんなんじゃ、窮地の時に守ってもらえね〜ぞ…」

 「フフフ…その時は、君が守ってくれる?」

 「か、考えとくよ…」

(何だ…この女…調子狂うぜ…)

出会った事の無いタイプの女性に触れ、戸惑うユウヤ…


(ユウヤの物語)

 俺の名前は、皿屋敷ユウヤ…人は俺を、番長って呼ぶ(ただのあだ名だ)…

 この日本に似つかわしくない、場違いな建物…いや城は、王家の建造物(王様の王でなくて、苗字だ)で、その王の頭首と俺の母(皿屋敷 妃)が再婚する事になって…一夜にして大富豪の息子さ…で、ここで披露宴が開催されんだけど…あんまり退屈なもんで、屋上に逃げ出そうとしたら…そこにいる先客の、警備員に取り押さえられそうになったってわけだ。

 「ここには…入れませんよ…」

 「どけ…一服したいんだよ…」

(何だコイツら…懐に手を…まさかな…)

光の速さで繰り出される鉄拳に、なすすべも無く…黒服は、地面に伏していた…

 「やっと…ココアシガレットが食えるな…」

 そこにいた、美しい女の子…見惚れて震える手を誤魔化すため、お菓子のタバコに火を付ける。何か、いい匂いがする…

 少しの会話で…何だろう…通じるものを感じる…

 「ねぇ…君、ボクとエッチな事しない…」

 「は…」

(初対面の俺に、何言ってやがる…バカなのか、この女…でも…)

 「でも?」

「こ…心が読めるのか…」

 「いや…口に出してたよ…それに、フフ…カラダの一部も反応してる…カワイイ…」

(ち…近い…この女…首筋に息を吹きかけてきやがる…しかも…この甘く切ない香り…)

「ホラ…心を解放して…フリーユアマインドだよ…」

彼女の手が…俺の隆起した部分に触れる…

ジー…

入口から解放された、別の意思を持つ俺は、冷たく柔らかい指に包まれる…

 「もう…こんなに…ボクで、興奮してくれるの…うれしいな…」

ボクっ娘か…でも、萎えない…むしろ…

 「ん…んん…ハァ…ハァ…も…もう…」

 「いいよ…ボクを…穢して…」

飛沫が…その美しい脚を標的にした…

「ゴメン…」

 「どうして謝るの…ボク達…結ばれたんだよ…」

しまわずに、彼女を抱きしめる…湿り気を帯びたまま…また、匂いを求めている…

 「ボクを…君の中に…あっ、待って…後ろ…」

ガンッ!

頭部に激痛が走る…油断した…さっきの奴等の仲間に取り押さえられ…薄れゆく意識の中で、彼女のカワイイ声がかすかに聞こえる…

 「やめて…この人は、ボクの…」


 自宅のベッドで目覚める…そうか…この豪邸…今日からこんな場違いな所で暮らすのか…そう、母親の再婚相手の屋敷で…

(そういえば…両親は、新婚旅行でいないんだったな…確か義理の弟がいるとか…)

 ガチャッ!部屋の戸が開く…

 「お早う…」

そう言って、入って来た初対面の弟は、とても美人だった…髪は短かったけど、見覚えがある…それにこの匂い…

 「ボクだよ…兄さん…」

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