エピローグ 香子の日常



 それから数か月後。


 無事にーー《というには大事になりすぎた)嫁入りを果たした香子は、新しい家で妻としての役目を果たすために頑張っていた。


 家の手入れに、家計のやりくり、火事や訪問客の相手など、やるべき事は山ほどある。


 忙しい日々を送っていたが、旦那となった男性は、香子に優しく、無理に関係を進めようとはしない人物だった。


 そのため、香子はゆっくりとだが、新しい日常になじみつあった。


 しかし、ーー。





 買い物をして行きつけのデパートから家に帰る途中。


 いつもより遅くなった黄昏れの時間帯の中、香子はその影を見た。


 額から黒い角を話した、人間ではないなにかの影を。


 物陰から、空間の揺らぎに消えたそれを見て、香子は心の中で旦那となった男性に詫びながら、空間の揺らぎに向かって駆ける。


 その時、彼女の頭の中に浮かぶのは、黒い角を生やした一の名を持つ鬼の姿だった。



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鬼の国と人食いの呪い 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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