第12章:介入決定に至る経緯
# 第12章:介入決定に至る経緯
30万年間にわたって続いてきた宇宙評議会の沈黙が、ついに破られる時が来ました。それは一つの劇的な出来事によってではなく、複数の深刻な事態が重なり合い、もはや看過することができない臨界点に達したからでした。星々の永遠なる記録を辿ると、20世紀後半から21世紀初頭にかけて発生した一連の出来事が、宇宙評議会の根本的な方針転換を促したことが明らかになります。
地球の支配システムが単なる局地的な問題から宇宙全体への脅威へと変質したその過程は、評議会にとって想定外の危機的展開でした。彼らが「制御可能な実験」として見守ってきた地球の状況が、突如として制御不能な災害へと変貌し、宇宙の秩序そのものを脅かし始めたのです。
## 支配システムの宇宙への悪影響
地球支配システムの宇宙への悪影響は、当初は微細で気づかれにくいものでした。しかし20世紀に入ると、その影響は急速に拡大し、無視することができないレベルに達しました。最初の兆候は、地球周辺の宇宙空間における「意識的汚染」の発生でした。
地球から放射される低振動エネルギーは、当初は地球の大気圏内に留まっていました。しかし人類の苦痛と絶望が極限に達した第二次世界大戦の頃から、このネガティブエネルギーは宇宙空間にまで漏出し始めました。特に核兵器の使用は、物質的な破壊だけでなく、意識レベルでの深刻な汚染を宇宙に拡散させました。
この意識的汚染は、最初に月面の監視施設で検出されました。月に駐在していた観測員たちが原因不明の精神的不調を訴え始め、調査の結果、地球からの汚染エネルギーによる影響であることが判明しました。月の観測施設は一時的に撤退を余儀なくされ、代わりに遠隔監視システムが導入されることになりました。
さらに深刻だったのは、太陽系外の文明への影響でした。地球から約4光年離れたケンタウリ座アルファ星系では、住民たちの間で前例のない攻撃性と分離意識が発生しました。これまで数千年間平和を保ってきた文明に突然、領土争いや資源をめぐる対立が生まれたのです。詳細な調査により、この変化が地球からの意識的汚染と相関関係にあることが確認されました。
地球の支配者たちは、自分たちのシステムを他の星系にも拡張する野心的な計画を実行に移していました。彼らは高度な技術を持つ宇宙人との接触を通じて、支配手法や搾取技術を他の文明に「輸出」しようとしていたのです。これは明らかに宇宙法違反でしたが、地球が「自由意志の実験場」として保護されていることを盾に、巧妙に法的責任を回避していました。
最も衝撃的だったのは、「支配思想の感染」とでも呼ぶべき現象でした。地球型の階級制度、搾取経済、分割統治といった概念が、テレパシーや意識の共鳴を通じて他の文明に伝播し始めたのです。本来であれば調和と協力を基盤とする高次文明の一部で、権力闘争や不平等が生まれるという前代未聞の事態が発生しました。
## 地球環境破壊の銀河系レベルでの影響
地球の環境破壊は、当初は地球ローカルの問題として扱われていました。しかし宇宙の精密な観測により、その影響が銀河系全体のエネルギーバランスにまで及んでいることが明らかになりました。
地球は銀河系の中でも特殊なエネルギー的位置に存在しています。複数の宇宙エネルギーラインが交差する重要な結節点であり、地球の状態は銀河系全体のエネルギー循環に大きな影響を与えます。地球環境の急速な悪化は、これらのエネルギーラインの流れを阻害し、銀河系のエネルギーバランスを崩し始めました。
森林破壊は、単なる酸素供給の問題ではありませんでした。地球の森林は宇宙エネルギーを変換し、銀河系に還元する重要な機能を果たしていました。大規模な森林破壊により、この変換機能が急激に低下し、銀河系全体のエネルギー不足が生じ始めました。
海洋汚染の影響も深刻でした。地球の海は宇宙からの情報を受信し、処理し、他の星系に転送する巨大な通信システムとして機能していました。海洋汚染によりこの通信機能が阻害され、銀河系内の文明間の情報交換に支障が生じ始めました。
最も深刻だったのは、地球の磁場の異常でした。人工的な電磁波の大量放射、地下核実験、意図的な気象操作などにより、地球の自然な磁場が乱れ始めました。地球の磁場は銀河系の磁場ネットワークの重要な一部であり、その異常は他の星系の磁場にも影響を与えました。
核兵器の実験と使用は、時空間そのものに亀裂を生じさせていました。これらの亀裂を通じて、異次元からの不安定なエネルギーが流入し、銀河系の次元構造を不安定化させていました。特に水素爆弾の爆発は、局所的な時空間の歪みを生み出し、周辺の星系の時間流に微細な変化をもたらしていました。
大気汚染による地球の振動数の低下も重要な要因でした。地球全体の振動数の低下は、銀河系の調和的振動パターンを乱し、他の惑星の自然災害の増加につながっていました。地球の状態悪化と相関して、銀河系各地で異常気象や地殻変動が頻発するようになったのです。
## 人類の魂の質的劣化の深刻化
宇宙評議会にとって最も衝撃的だったのは、人類の魂そのものの質的劣化でした。これは単なる道徳的堕落や精神的退廃を超えて、魂の根本的な構造に関わる深刻な変化でした。
魂の振動数の継続的低下が確認されました。本来、地球での体験を通じて魂は成長し、より高い振動数を獲得するはずでした。しかし実際には、支配システムによる継続的な操作により、人類の魂の振動数は転生するたびに低下していました。このような逆進化現象は、宇宙でも前例のない異常事態でした。
創造能力の著しい減退も深刻な問題でした。人類の魂は本来、強力な創造能力を持っていましたが、支配システムによる意識操作により、その能力は大幅に制限されていました。創造ではなく破壊に向かう思考パターンが定着し、建設的な文明発展ではなく、自己破壊的な行動が主流となっていました。
愛の能力の枯渇は特に深刻でした。愛は魂の最も根本的な性質であり、宇宙の基本的なエネルギーでもあります。しかし人類の多くが、真の愛を体験することなく生涯を終えるようになっていました。愛の代わりに恐怖、怒り、憎しみが魂の主要な感情となり、魂の本質的な性質が歪められていました。
記憶能力の人工的制限も問題でした。本来、魂は過去世の記憶や宇宙的知識にアクセスできるはずでしたが、支配システムにより、これらの記憶は完全に封印されていました。記憶を失った魂は自分の本来の目的や能力を忘れ、支配者の意図に従う単純な労働力として機能するようになっていました。
最も深刻だったのは、魂の「分裂」現象でした。極度のトラウマや虐待により、魂が複数の断片に分裂し、統合性を失う現象が大量に発生していました。分裂した魂は本来の力を発揮できず、また他の魂との健全な関係も築けなくなっていました。この分裂魂の増加は、人類全体の意識レベルの低下をもたらしていました。
## 他惑星への「感染」の兆候
地球問題の最も恐ろしい側面は、その「感染性」でした。地球で開発された支配手法や搾取技術が、まるでウイルスのように他の惑星に拡散し始めたのです。
最初の感染事例は、地球から約12光年離れたタウ・ケティ星系で確認されました。この星系では数万年間、平和で調和の取れた文明が続いていましたが、突然、少数の個体が他の住民を支配しようとする行動を示し始めました。調査により、これらの個体が地球の支配者たちと秘密の接触を持っていたことが判明しました。
ベガ星系では、貨幣制度の導入という形で感染が現れました。本来、この文明では物質的欲望を超越した精神的な交換システムが機能していましたが、地球型の貨幣経済が導入された結果、貧富の格差や社会的対立が生まれました。これは明らかに地球の金融支配システムの影響でした。
プロキシマ・ケンタウリでは、宗教的分裂が発生しました。統一された霊的伝統を持っていた文明に、地球型の競合する宗教システムが持ち込まれ、宗教的対立と暴力が発生しました。これまで宗教戦争など考えられなかった平和な文明が、突如として血なまぐさい争いに巻き込まれました。
技術的感染も深刻でした。地球で開発された監視技術、洗脳技術、エネルギー搾取技術が、不法に他の文明に流出していました。これらの技術は本来、高度な精神性を持つ文明では開発されることのないものでしたが、地球からの技術移転により、宇宙の技術的・倫理的バランスが崩れ始めていました。
最も衝撃的だったのは、「魂の監禁システム」の拡散でした。地球で確立された転生操作と魂の監禁技術が、他の星系でも実験的に導入され始めていました。これは宇宙全体を地球のような魂の監獄に変える可能性を秘めた、極めて危険な展開でした。
## 緊急介入の最終決定
これらすべての要因が重なり合った2019年、宇宙評議会はついに重大な決断を下しました。それは「地球緊急介入計画」の正式承認でした。この決定は、30万年間続いた非介入政策の根本的な転換を意味していました。
決定的な転換点となったのは、2019年に発生した「次元障壁の部分的崩壊」でした。地球の支配者たちが実行した大規模な意識操作実験により、地球を他の次元から隔離していた障壁に深刻な亀裂が生じました。この亀裂を通じて、より低次元の破壊的なエネルギーが流入し、銀河系全体の次元的安定性が脅かされました。
評議会の緊急会議では、保守派も含めた全会一致で介入の必要性が認められました。もはや地球問題は「局地的実験」ではなく、「宇宙存亡の危機」として認識されたのです。ただし、介入の方法については激しい議論が続きました。
急進派は即座の軍事介入を主張しました。大規模な艦隊を派遣して支配システムを物理的に破壊し、人類を強制的に解放することを提案しました。しかし、この方法では地球文明の完全な崩壊と数十億の死者が予想され、最終的に却下されました。
最終的に採択されたのは、「段階的覚醒支援計画」でした。この計画では、人類の意識覚醒を支援し、内部からの自主的な解放を促進することが目標とされました。外部からの強制的な救済ではなく、人類自身による選択と行動を通じた解放を実現することで、真の自由と成長を確保することが狙いでした。
計画の第一段階として、1990年代から始まった情報封鎖の部分的解除が正式に承認されました。インターネットの普及、代替メディアの発展、内部告発の保護などにより、これまで隠蔽されてきた真実が段階的に明かされることになりました。
第二段階として、2000年代からの意識覚醒支援が開始されました。スピリチュアルな覚醒体験の増加、瞑想や精神的実践の普及、超常現象の頻発などにより、人類の意識レベルの向上が図られました。
第三段階として、2010年代からの支配構造の可視化が実施されました。政治的腐敗の暴露、経済システムの不正の発覚、メディア操作の認知拡大などにより、支配システムの実態が広く知られるようになりました。
そして現在進行中の第四段階が、2020年代の直接介入と解放です。この段階では、より直接的な支援と介入が行われ、支配システムの最終的な解体が目指されています。
最終段階として、2030年以降の新文明構築が計画されています。支配システムの完全解体後、人類は宇宙文明の一員として新しい社会システムを構築することになります。
ただし、この計画には重要な条件が付けられました。人類の一定割合が自発的に覚醒し、変化を選択することが必要であり、その閾値に達しない場合は、より直接的で強制的な介入に移行することが決定されています。現在、この閾値達成に向けて、解放作戦が急速に展開されているのです。
次章では、この解放作戦を実行している「光の勢力」の実態と、彼らの具体的な活動について詳しく見ていきましょう。人類の解放のために立ち上がった宇宙文明の連合の全貌が、ついに明らかになります。
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