空、見上げた。

@sijin

第1話 

不安がつのる、理由も分からないまま。

今日も小学校に行き、二時間目で早退して歩きながら家に帰る。

石を蹴りながら、暑い太陽を見上げて帰路につく。ものすごく青い空だったけれど、その時の自分には、何も感じなかった。


家に着くと、好きな音楽を聴きながら本を読む。

昼ご飯は食べずに、ゲームをして時間をつぶす。

ある日、不登校を理由に病院に行った。診断されたのは多動症と抑うつ症だった。


自分が何を求めているか、わからなかった。不安は膨らみ、一ヶ月間きちんと通っていた塾にも足が向かなくなった。

そんなある時、ネットで障害者を傷つけた事件のニュースが流れてきたけれど、その時の自分は「障害者だから」としか思えなかった。


やがて、いつの間にか卒業式を迎えた。あっという間だった。

中学生になってもなかなか学校に行く気持ちになれなかったけれど、学年主任から「一年で十日休んだら進学は難しい」と言われたことで、なんとかお昼まで学校に行くようにした。五月のことだった。

そうしているうちに、気がつけば中学校生活が少しずつ楽しくなり、最終的には学校を休まず通い続けるようになった。


ある日、塾の友人が誘ってくれた。「四人ぐらいで海に行こう、いいだろ修」

「まあ、行ってもいいかな」と思い、計画を立ててみんなで出かけた。その時は七月上旬。

いざ海に行ってみると、「来てよかった」と思えるほど楽しかった。――せいしゅん――。友達と一緒に食べたかき氷、見上げた青い空。学校に行けていなかった頃の自分には、きっと「美しい」とは思えなかっただろう。あの夏の日差しは、いつまでも心に残っている。


家に帰ると、親が言った。「こんな笑顔の修を見るのは久しぶりだ。こんな顔してたの、二、三年前だったかな」

その言葉に少し驚いて、ご飯を食べて、寝室に行った。

寝る前――ふと、あのネットで見た事件を思い出していた。

今思うと、多動症や抑うつ症の自分を、恨んで、憎んで、悲しくて否定したかったのだと思う。でも、その必要はもうない。

僕は、あの時より、ずっと青くなった。

きれいな青に、染まっていた。


しばらくして高校に進学し、夏休みに今度は彼女と一緒にあの海を訪れた。

同じ海、同じ空。

だけど、小学生のときより、中学生のときより、もっと青いと感じた。


中学時代の思い出をなぞるように楽しんだ。

その時、ようやく気づいた。

――あのときは、まだ分からなかった何かが、

今、心の中に築かれている。


“青春”。

この上なく澄んだ青色の、青春。


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