赤ずきんを被って森へ入ったら、銀狼が助けてくれました(継母と双子の妹にはもう懲り懲り)

風野うた

第一章 クロ―シェ伯爵家のアリアドネ

第1話 遭遇

「ぎゃ~~~~!」


 赤ずきんを被った女は籠を落とし、その場に倒れ込んだ。


 突然、大声を上げられたライナスはオロオロとしてしまう。大丈夫ですか?と声を掛けたいが、今のこの姿で人の言葉を話したらもっと驚かせてしまうだろう。


 シュンとした彼は銀色の尾を地面に下ろし、ゆっくりと彼女へ近づいた。


『美しい・・・』


 ライナスは息を呑む。


 赤ずきんの中を覗くと太陽の輝きを集めたような金色の髪とメレンゲのように真っ白な肌が見えたからだ。小ぶりの口びるもプルンとしていて愛らしい。


『ここに置いて行くわけにもいかない。――――どうしたら・・・』


 ここは森の奥深く。この先には悪名高き狼皇子の住まう城のみ。


 そんな場所へふらりと現れた女。いつもなら怪しむ対象となるのだが・・・。ライナスはすっかり気が動転していて、疑うことを忘れてしまったのである。

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