悪夢(2025年6月28日)
ド根性バエル
悪夢日記(小説ではない)
多分俺は兵士だった。
何かの作戦で工場を調査していた際、ふとコンテナの下を覗くと敵国の子供たち(少年兵)が隠れているのを見つけた。仲間に見つかると殺されるだろうと思い、外まで逃がしてやることにした。
言葉は通じないが身振り手振りで先導し、なんとか出口あたりまで誘導することができた。
すると、最年少と思われる子が走り出してしまった。バタバタと足音が鳴ったのを、外の警備に当たっていた仲間は聞き逃さなかった。
俺は説得しようと叫んだが間に合わず、目の前で子供たちはみんな殺されてしまった。俺も敵兵に与した裏切り者として殺されかけたが、命だけは許され、懲役刑を受けるため本国に送られることになった。この際に右足首の健を切られた。たぶん痛かったと思う。
護送後、罰として重度の精神病患者や知的障害者、病人が収容される地下病院での勤務を強いられた。職務は主に収容者の世話や対話などだった。
日の当たらない地下で同僚もおらず、毎日毎日精神病患者と話しているのは気が滅入った。
しかし、単に気が滅入るだけの仕事ならマシだった。
その病院の実態は、なぜかは分からないが、重度の病人たちを金持ちに売り、資金を調達するための人身売買施設だった。ビジネスとして成り立つのかと思ったが、実際俺の目の前で病人が買われて驚いた。
俺の本当の仕事は、売れる病人を作ることだった。
重度の肥満で動けなくなった患者に対して更に高カロリーな食事を与え、自分を美少女だと勘違いしてる太った中年男性をおだてて増長させ、自分をキリストだと宣う統合失調症患者を崇拝し、俺に殺してくれと乞い願う理性ある患者たちに麻薬をうち延命させていた。
日に日に悪魔のようになっていく人間を見るのは、ひたすら恐ろしかった。自分もやがてこうなると思ったのもあるが、それ以上に俺が彼らをここまで壊したことが怖かった。
俺の仕事は売れる病人を作ることと、暴走する彼らの肉壁になること。
心身ともにバケモノと化した彼らは俺を罵り、殴り、そして愛した。
俺は彼らに罪悪感と恐怖を抱き、それでも逃げることができず職務に従事した。
自称キリストを育てているある日のことだった。
看守の気まぐれか、昼休憩に地上階の食堂を使えることになった。
廊下を歩き、窓を見て、久しぶりの太陽に感動していると食堂についた。
そこでは一般の職員たちが楽しそうに食事していた。彼らは俺の現実の友人たちの姿をとっていた。
その瞬間自分が恐ろしくなって、急いで地下に引き返した。そのままキリストに祈り、こいつを殺すことを思いついた。
それだけじゃなく、患者を全員殺してやろうと考えた。
キリストに新しい聖書だと言って魔導書を渡した。キリストは敬虔な信徒からの贈り物に喜び、嬉しそうに本を読んでいた。俺は急いで地上階への出口を閉じ、ガソリンを撒いて火をつけた。
最期を悟り、俺は燃える病棟を歩き回って自分が壊した人々を鉄柵越しに見舞った。
すると、火事に気づいた身体の元気な患者たちが俺を殺そうと駆けつけてきた。
俺は廊下奥の独房に逃げ込み、必死に扉を抑えていた。
そこで目が覚めた。
悪夢(2025年6月28日) ド根性バエル @Dokonjo-bael
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