古い型のバスを降りて、夜の帷が降り
始めた見知らぬ土地を行く。鉛色に垂れ
込めた雲の下には昏い色の海が見えた。
緩い登り坂の、葛折り。
鬼堂老街
古びたアーケード街にある茶房に入る。
薬罐からは湯気が立ち上り、奥の薬箪笥が
医薬道元を思い起こさせるも。
老婆の淹れたお茶には何の味もない。
蔦の絡まる煉瓦の先に、男がゆっくりと
回っていた。鬼火の様なランタンが手招く
時代遅れの町。忌中の家では喪服の人々が
挙って何かをしている。太公望が漁るのを
尻目に古い橋を渡り、廟へと続く石段を
登り…。
終始、不穏な空気の中で。
打ち捨てられた坑道の先には、一体何が
あるのか。
そこに見たものは諦念か、それとも。
このまま、闇に溶けて行くのだろうか。