第9話 出会い
大輔は待望のオークステーキを焼くための準備を始める。
「フライパンや鉄板がないからどうするか・・日本にあった溶岩プレートや石焼を参考に、生活魔法の土木工事を応用して似たものを作ってみるか」
生活魔法の土木工事を応用して、土と岩を使いステーキを焼くためのプレートを作る。
さらに念のため、出来上がったプレートを生活魔法の聖なる水で消毒をする。
【聖なる水
・神の祝福により生み出された水。
街の教会なら小瓶で金貨数枚が必要。
・あらゆる邪気・邪悪を浄化する。
※お化けなんてへっちゃらさ!!!
ついでに細菌も消毒できる。 】
「なあ、チビ。これ、おそらく聖水・だよね。なんで生活魔法で作れるんだろう。俺は聖職者になった覚えはないぞ。煩悩は捨てきれんから無理なはずなんだが。でも消毒に使えるなら問題ないだろう。この水を師匠に掛けたら効くのかな。師匠はいわゆるお化けだもんな。今度試してみるか」
「ワフ・・・(いいんじゃない)」
聖なる水は自分の生活魔法で簡単に作れるため、金貨数枚する聖水を惜しげもなく消毒に使う。
火を起こす場所の左右には、プレートを置く柱を生活魔法を使い増設。
プレートを柱に乗せ真下には小枝を置いて、生活魔法で火を付けた。
プレートがいい具合に熱くなってきたところでオークのラードをプレートに乗せる。
ラードが溶けたところに厚切りのオークファイターの肉を乗せる。
肉の焼けるいい匂いと肉の焼ける音がたまらない。
裏返して塩を軽く振りかける。
ナイフとホークはプレートと同じ要領で作ってあり、これも聖なる水で消毒して準備万端である。
チビのオークステーキも出来上がったので専用のプレートにのせてチビの前に置く。
大輔はナイフとホークを手に取りステーキにナイフを入れる。
ナイフが抵抗なく肉にスッと入っていく。
ナイフの出来は問題ないようだ。
ホークで刺して口に運ぶ。
口の中に肉汁とオーク肉の旨みが広がる。
「これだ。これだよ。あ〜米が欲しい。ステーキ丼にしたい」
大輔とチビは黙々とオークステーキを食べ続けていた。それぞれが厚切りステーキ3枚を平らげていた。
「あ〜この瞬間は幸せだ。この異世界いることを除けばだけど、チビ、美味かったか」
「ワゥ(美味かった)」
その時、大輔の気配察知が近づいてくるものをキャッチしていた。
いつでも動けるように油断なく様子を見る。
そこに現れたのは一人の老人。老騎士のラデウスであった。
白髪をオールバックで固め、銀色の鎧を着ている。
「これは失礼。お食事中でしたかな」
「お〜〜〜〜!この森で初めての人間だ〜!!!」
「初めての人間・・・ですか?」
大輔の歓声に戸惑うラデウス。
「この森の中に迷い混んで、かれこれ1ヶ月以上。初めて人に会えました。よかった」
「森の中で迷われていたんですか?」
「恥ずかしい話ですが、遠くの国から旅をしてまして、気がついたらこの森の中に迷い込んでまして、いくら歩いても歩いても街に辿り着けず困ってました」
大輔は鑑定(極)を使いラデウスを見ていた。
【氏名:ラデウス
種族:人族
状態:健康・警戒・戸惑い
職業:ハートテリウス公爵家家宰
レベル:48
スキル:剣術 6
格闘術 3
気配察知 3
生活魔法 1
礼儀作法 4
異空間倉庫 2
補足:
・王国最強の剣術の達人
・公爵家から厚い信頼
・実直と忠節の騎士 】
『あちゃ〜そりゃ〜、警戒するよな。どう見ても俺の姿は怪しさ満点だもんな。流石の俺でも今の俺を見たら警戒するな。ハートテリウス公爵家家宰か、公爵家のお偉いさんだな』
大輔は鑑定で見えた内容から考え、かなりの人物でありある程度信用できそうだと見ていた。
だが、貴族に仕えている以上、最終的に信用できるかどうかは主人である公爵様しだいだな。
「そ・それほどこの森の中で迷われてたんですか、それは大変でしたね」
その時、大輔の気配察知に強い気配をとらえていた。
その気配はどんどん近づいてくる。
「少し待っててくださいね。招かれざる客がきたようですから。ちょっと片付けますから」
「招かれざる客?」
すると2本のツノを持つ高さ5mほどの鬼のような風貌の魔物が現れた。
「こいつはオーガでいいのか?」
通常は褐色の肌をしているが、目の前のオーガは黒色の肌をした鬼であり、その瞳は赤く輝いている。
ラデウスはその魔物を見た瞬間驚きの声をあげ警戒する。
「これは、オーガです。しかもあの肌の色は変異体のオーガ。ランクBでは無くランクAに分類される危険な魔物です」
慌てたラデウスは、剣を抜いて大輔達の前に出ようとした。
大輔は、ランクAと言われてもオーガと呼ばれる魔物がさほど強いとは思えていなかった。
脅威と言えるほどの強さを感じていないため、ラデウスの前に出てオーガに向かってゆっくりと歩いていく。
「何をしているんです。不用意に近づいては危険です」
「う〜ん。大丈夫じゃないかな。チビはそこで待っててね」
「ワゥ(は〜い)」
「で・ですが危険です」
「大丈夫、大丈夫」
のんびりとオーガに近づいていく大輔。
オーガが一瞬で間合いを詰めて腕に硬化のスキルを発動させて殴りかかった。
大輔は素早く剣をぬき、すぐに鞘に戻した。
剣が鞘に収まる音がすると同時に、殴り掛からんとしていたオーガの腕が切り落とされ、地面に落ちていた。
「ウォォォ〜〜〜」
オーガの絶叫が響き渡る。
それを見たラデウスは驚愕の表情を浮かべる。
「馬鹿な、硬化のスキルが発動した特殊個体のオーガの腕は、魔鉄よりもはるかに硬い。それをただの鋼の剣で、しかも付与魔法すら付与されていない剣を使い斬っただと!あっさりと斬り落とすなんてあり得ない。しかも、この私が剣の動きを見切れないなんて」
ラデウスの額からは玉のような汗が浮かんでいる。
オーガは、大きく後ろに飛び退き、残っている腕に何やら魔力を集めていた。
そして巨大な炎の球であるファイアーボールを放った。
大輔は、オーガの放ったファイアーボールに怖さを感じておらず、大輔は素早く剣を抜き上段に構える。そして剣をファイアーボールに向かって斬り下ろした。
ファイアーボールは真っ二つになり左右に分かれて木々に当たり燃え上がっている。
「そんな・・あり得ない・・・魔法のファイアーボールを単なる鋼の剣で切り裂くなんて、あり得ない」
立て続けに大輔の剣捌きに驚愕の表情を浮かべるラデウス。
オーガのファイアーボールが大輔に向かって放たれた瞬間、スキル弱点看破が働きファイアーボールの弱点の部分を色を変えて示し、同時に牙龍剣術の技と理が発動。
大輔はスキル弱点看破の示すその部分に剣を振り下ろすことで、火魔法のファイアーボールを切り裂いていた。
驚いているのはラデウスだけではなく、魔法を放ったオーガも驚愕の表情を浮かべている。
そして大輔は無意識に小声でつぶやいた。
「牙龍剣術・・電光石火」
一瞬のうちにオーガの後ろに立つ大輔がいた。
その姿にラデウスが気がつくとオーガの首が落ちて、オーガは前に倒れた。
大輔が他者に聴かれないように小声でつぶやいた牙龍剣術と電光石火の言葉を、ラデウスはしっかり聞き取っていた。
そしてその言葉の持つ意味をすぐに理解していた。
多くの人々が御伽話に聞く剣術。
どんな圧倒的な強者が相手であっても剣のみで打ち破ると言われる伝説の剣術。
500年前に消滅して以来、多くの剣豪が復活を試みてその名を語るが、すぐに嘘がバレることになり、その剣豪とともに消えていく剣術。
その本当の使い手が目の前に立っている可能性があることを理解した。そしてそのことを公爵家の実質的な絶対権威であり、ハーフエルフであり、500年前のハートテリウス公爵家初代の娘であるシェリルにだけは報告を上げなければならないと考えていた。
シェリルはハーフエルであるため、人族よりも圧倒的な長寿を誇り、いまだに健在であった。
「あ〜よかった。魔法を使われた時にはどうなるかと思いましたよ」
「これほどの剣術家とは知らず失礼いたしました。ぜひ、お名前をお聞かせください」
ラデウスは、出来る限り丁寧な態度で接して、大輔が何者なのか聞き出すことを考えていた。
「えっ・・そんな大層な人間ではありませんから、教えるほどの名前ではありませんよ。街の方向だけ教えていただければ大丈夫ですから」
「あ・失礼たしました。自らの名を名乗るのが礼儀でございました。申し訳ございません。私はハートテリウス公爵家家宰を務めますラデウスと申します」
「は・・はぁ・・ご・ご丁寧に・どうも」
「ぜひ、お名前を」
大輔は仕方なく苗字は言わずに名乗ることにした。
「え・え〜と・・ダイスケと言います。こいつは相棒のチビ」
「ワウワウ(よろしく)」
ダイスケは、警戒しながら気配察知の範囲を広げ、周囲の確認をすることにした。
他にも誰か警戒していた範囲よりも外で隠れている可能性を考えたからである。
気配察知の範囲を300mから徐々に広げて行き3kmまで広げた時、先ほどのオーガと同じ反応が多数。別の場所にいるのをキャッチした。
同じ場所にそれよりもはるかに小さな反応。もしかしたら人間なのかもしれない。
反応の動きから戦っているのようだ。
「あんた、連れはいるのか。俺の気配察知に、ここから3kmほど離れた場所でオーガらしき反応とそれと戦っている人間らしき反応がある」
「なんですと、いかん!お嬢様が!」
焦り戻ろうとするラデウス。
「ここは助けないと師匠にどやされることになるよな」
ダイスケは魔物の跋扈する森の中は自己責任だと思っているが、人間なら見捨てる訳にはいかないとも考えていた。
「仕方ない。面倒だが助けるとするか。チビ、行くぞ。身体強化・・縮地」
ダイスケは、身体強化を自分にかけて縮地の連続使用を使い、フェンリルのチビと共に森の中を走るラデウスを一気に抜き去り、人間たちがオーガと戦っていると思われる場所へと向かった。
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