もう一つの仕事

楓 紅葉

見切り品の椅子

私は車のトランクに入れられて新しい職場に行こうとしていた。

数時間前私は店に飾られていた。いつも通りに客には立ち止まられないで時間だけが進むそんな日常。傷があって年季がかかっていた。よく言えばアンティークというものだろうか。

「これ良いな。家にいたらなんか頑張れそうだな。」

こちらを見ている二十代半ばだろうか女性が見ていた。物好きもいたものだなと思ってしまった。椅子に座って色々と考えているのだろうか一向に立ち上がる姿は想像できなかった。

「これ貰えますか。」

その言葉に耳を疑った。だって値段は四万ぐらいでおつりがくるのだから。自分が人間だったら、絶対に買わないだろう。

「見切り品なので二万でいいですよ。傷だってありますし。それでもいいですか。」

それを聞いて今にも小躍りしそうな顔になって嬉しがっていた。この子は表情が分かりやすいんだなと思った。

自室に入ると部屋はとっちらかっていた。椅子が置けるスペースがないぐらいには。

「今からやればなんとかなるよね。」

そうして掃除が始まっていた。頑張るっていうのは片付けの事だったのねと思って片付くのを待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る