第15話 マリア様 業務改革と魔法計算機そして獣よけを作る5

私は魔法陣のホログラムに図面を引いていく。ところどころ曲線などが入り、複雑な構造になっている。そして私はあえてこの世界の距離のメートルを使わずにこの世界の標準のクラートを使う。

 クラートはメートルの二分の一なので簡単だ。


 図面を引いていて思ったが、やはり害獣は普通の害獣ではないので大型の装置になってしまう。


 私は図面を引いた後に陛下にこの図面通り鉄線やライトニングクリスタルを用意できるかを聞いた。


「うむ、こちらで部品はなんとかしましょう」


「一応ライトニングクリスタルの魔法が切れたら魔法師にエネルギーを補充してくださるようにしていただければ安く済みますわ」


「うむ、それでは魔法師も用意しよう」


「一応陛下にも言っておかなければならないのですが、この鉄線には絶対触れないようにしてくださるように係のものに言って頂けると助かります」


「触るとどうなるのですか?」


「恐らく気絶するほどの電流が流れます」


「でんりゅう?」


「し、失礼。ライトニングクリスタルのパワーが流れます」


「なるほど、それをでんりゅうというのですね」


「そ、そうですございますわ」


 陛下はでんりゅうとはどこの言葉なのかと聞いてきたが、私は私が作り出した造語だということにしておいた。


「造語ですか」


「混乱させてすみません」


「いえ、あなたの発明自体がこの世にはないものなので、別に今更一つや二つわからないものが出てきても驚きませんよ」


 地球では当たり前のことでもこの世界の人間にとっては無い物なので、これから言葉にも注意しようと私は思うのだった。


 私は男性の元へ向かうと陛下にした同じ説明をした。男性は嬉しそうにしながら私にお礼をいう。


「本当にありがとうございます」


「少なくとも近日には害獣よけが出来ると思いますのでお待ちください」


 そう言うと私は陛下の元へ駆け寄ると、陛下に言った。


「なるべく早く作るようにしましょう、まだ生きている作物も多いので」


「うむ」


 それから数日後の獣よけが出来がり、その獣よけはこの国で有名になり、家でも作って欲しいという嘆願が多く入ることになった。


 またそれと同時に陛下への書類の配布は行政化することで私たちや陛下も大分負担が減ったようだ。


 それから暫く経ってから私は魔法計算機の理論体系を魔法師たちに教え、この国に魔法計算機が誕生することになった。


◇◆◇


 私とルークスお兄様と陛下が書類整理をしていると陛下が私にお礼を言ってきた。


「本当に書類整理が楽になりました。これも全てマリア様のおかげです」


「とんでもございませんわ。私はこの国のためになればよいと思ってやっていることなので、私のわがままなのかもしれませんわ」


「わがままなどとんでもない。魔法計算機も計算するうえであまりにも楽になったので、本当に私は嬉しい限りです」


「喜んで頂けることがなによりでございますわ」


 そこでルークスお兄様が口を挟んできた。


「魔法計算機も害獣避けも特許を取るようにと父からいわれているぞ」


「特許ですか」


「ああ」


 そうすれば私の懐にお金が入ってくるので、困っている人たちに使おう。


「陛下、やはりこの国にも貧民がいらっしゃるのですか?」


「まあ、どこの国でもいますね。一応教会などで炊き出しや、色々やっているのですが」


「それならば私に入る特許はその困っている方に使うことにします。そうすれば貧民も助かるでしょう」


 その私の言葉に陛下が驚いた顔をした後に、微笑みへと徐々に変わっていった。


「あなたという人は、本当に素敵な人だ」


 素敵と言われると私の心臓がドキドキとするので辞めて頂きたいですわ。とも言えず私は顔を赤面させた。そんな私を見て陛下はぼそりとなにかを喋った気がしたが聞き取れなかった。


 そこでルークスお兄様が渋面を作りながら言ってきた。


「マリア、全ての貧民を助けるという気持ちはいいのだが、一応そのお金で自立できる人にはきっちり自立してもらうようにすることも忘れないように。それこそ父の言うとおり死に金するなということだ」


「わかりましたわ。となると貧民を助け、自立できる人を作る行政的部門も必要になりますね」


 そんな私の言葉に陛下は顎に手を当てると言った。


「そうなるとなかなかに忙しくなりそうですね。一応そういう部門も作るようにしましょう」


「私の案からこうなった気が致しますが、何卒お願い致しますわ」


「いえ、あなたの案は国をよき方向へ変えるものです、お願いしますとというのはこちらのほうです」


 陛下にそういう嬉しそうに微笑むのだった。武人のように見える方が優しく微笑むとドキリとする。

私は胸のドキドキを止められないまま業務へと戻るのだった。

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