二百十日(にひゃくとおか)の少し前

転生新語

プロローグ ほのぼの登山道

 私こと、PSピーエスファイブプロは早朝そうちょうから、おんなともだち二人ふたりれてざんどうあるいていた。せいしきめいしょうながいので、みなさまにはプレステなどとばれている。仕事しごと配信はいしんぎょうなど、多岐たきわたっております。梅雨つゆ時期じきだけど、今日きょうはいい天気てんきかった。


「プロさん……ま、ってー」


 私たちは同業者どうぎょうしゃで。いま弱弱よわよわしいこえをあげたのは、最近さいきんになって機種デビ販売ューたしたさいねんしょうのツーだ。スイッチツーったほうが、おぼえはあるだろう。小型こがた携帯けいたいである彼女かのじょは、どうにも体力たいりょくがない。ノートパソコンなんかも小型こがたはいねつむずかしいから、仕方しかたないよね。


「ほら、ツーちゃん。しっかりしないとプロちゃんにいてかれるよ。いてあげる」


 私は先頭せんとうあるいていて、そのうしろに二人ふたりがいる。ツーとをつないではげましているのは、シリーズエックスだった。正式せいしき名称めいしょうだとエックスボックスというのが苗字みょうじみたいなもので、私は彼女かのじょエックスばこんでいる。エックスだとエスエヌエスの、もとツイッターと区別くべつができないので。


あさうちかったでしょう? ひるになったら気温きおんがるから、もっときつくなるわよ」


ねむーい、きつーい。プロさん、きびしーい……」


 私の言葉ことばに、ツーが不満ふまんらす。エックスばこわらいながらツーのいていた。べつわるはや集合しゅうごうしたわけじゃなくて、私はゴルフをしたことないけど、あれも早朝そうちょうからはじめることがおおいらしい。そうしないとかえりがよるになって、不都合ふつごうきたりするのだろう。やまのぼりなら遭難そうなんしかねないから大変たいへんだ。


「ほら、ブツブツわない。インドアの仕事しごとばかりしてると、運動うんどう不足ぶそく健康けんこうになっちゃうんだから。たまに、こうやってあるかないと体力たいりょくかないの。さぁ、あるいてあるいて」


 三人さんにんでのやまのぼりを提案ていあんしたのは私で、ちょっと先輩風せんぱいかぜかせてもらった。ちなみにシリーズエックス発売デビ時期ューは私よりはやいのだけど、初代しょだいエックスボックスが発売はつばいされた時期じきはプレステよりもあとなので、エックスばこは私を先輩せんぱいとしてあつかってくれている。ありがたいことだった。


なかひとなど、いない!』というのはネットスラングだけど、配信はいしんぎょうをしているブイチューバーだって、実際じっさいにはなかひとがいるのだ。そとでの運動うんどうだって必要ひつようだし、それは私たちゲームだっておなじなのである。


「ツーちゃん、頑張がんばって。ここ、初心者しょしんしゃようのコースだから、そんなにきつくないよ。いて、ゆっくりいきって、いてみて」


「うん、頑張がんばる……。はこちゃん、ありがとう」


 私の背後はいごで、微笑ほほえましい空気くうきながれる。場所ばしょ特定とくていされたくないから詳述しょうじゅつけるけど、体力たいりょくがないツーでものぼれるくらいの登山とざんコースを私はえらんでいるのだ。かえりはロープウェーを使つかうから、どもでものぼれる程度ていど負荷ふかぎない。


 私たちゲームも、こうしてえないところで、地味じみ努力どりょくというか体力たいりょくづくりをおこなっているのであった。まあ『なかひとなど、いない!』ということになっているので。私たちをかけても、こえなどけず、そっと見守みまもってもらえればありがたい次第しだいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る