第8話 イキノコル◻︎シカク

この作品はフィクションです


現実に存在する国家、地名、組織、人物等には何の関係もありません


一部シーンには現実味を出すためにAi等の力を借りています


それを御留意いただいた上で拝読して下さい


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202E年L月5日 19時10分 T県 皆擬区みなぎく

優木棚葉(ゆうき たなは)

通称ユキ


スカイズタワー最上階での混乱の中、ユキは下着姿で倒れている寝御ねこを抱えて逃げていた


非常ドアを開けて寝御ねこを抱えながら必死に階段を降りる


寝御ねこのサラサラとしたオカッパヘアーの短髪が揺れる


(マジで危なかった...あのイカれたバッタ野郎達の とママの彼氏が戦ってる間に...はなれなきゃ...


でも...この...まだ若そうだし...見捨てて逃げるのは私的わたしてきにはできない...)


今日のパパ活の相手って死んだんだっけ?


というか街がコレだし遠くに住んでるママも死んでるのかな


(急いで...逃げないと...)


ユキの頭の中には不安と焦燥感が渦巻いていた


すると突然、下着姿の寝御ねこがユキの首を掴んで締め始めた


ユキは首を絞めてくる寝御ねこの手を掴んだり引っ掻いたりして必死に抵抗する


寝御ねこは邪悪な表情で苦しみ息ができなくなっているユキの顔を見つめて恍惚とした表情を浮かべ呟く


「堪らないのよねぇ...こうやってバカな人が私の罠に引っかかって死んでいく顔を見つめるの...」


寝御ねこの背中から縞模様しまもようの触手が伸びてユキの手足を取る


(わ...私を殺すつもりだ...この女は...クソっ...)


触手からは鋭いトゲが生え始めてグルグルと回転し始める


ユキの手から紫色の煙が吹き出していく辺り階段の一面が煙に包まれる


気づくと寝御ねこの顔は苦悶の表情へと変わっておりユキの首から手を離して体を震わせている


(やっぱり煙を吸い込んだヤツは...体が震えて死ぬのか...)


触手の制御が効かないのか辺りの壁や階段の手摺てすりなどが次々と破壊される


寝御ねこは苦しみながら階段から転げ落ち壁に頭をぶつけると体を痙攣させ白目を向いた


触手が溶け始めると透明な液体となり階段の下へと流れ出す


ユキの右手には白と黒の縞模様しまもようの光沢を放つタコの彫刻の描かれたシカクが付いていた


[ミミックオクトパスのシカク]と文字が書かれていた


(もしかして...コレを集めるために...クソフリーターとかは戦ってるのかな?)


疑問を浮かべているとユキの腹部に何か鋭利な物が突き刺さっていた


焼けるような痛みと共にユキは何処かに向かおうとする


必死に辺りの壁に寄りかかり階段を登り始める


(こんなことで...死ぬんだ...私は...こんな下らない理由で...


死にたくない...まだ...ママ...私は...)


ユキは誰もいない非常階段で倒れた


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202E年L月5日 19時10分 T県 皆擬区みなぎく

四ツ谷 燐(よつや りん)

職業:フリーター


バッタ人間達は動きを止めて頭を抱えている口からは黒色のゲロが流れ出している


メガネの男は動かなくなったバッタ男の頭を次々と針で横払いにして切り飛ばし呟く


「絶対正義...それ以外は...バリバリバリ醜悪...


消え失せろ...バッタ人間共...」


(あのメガネ...随分と張り切ってるな...)


四ツ谷が歩いていると黒い血を流したコートの男


蝗牙こうがの死体があった


(町中に居た化け物...コイツの仲間だよな...迷惑かけた割に...アッサリと死にやがったな...)


瞬きの最中、蝗牙こうがの死体は壁へと叩きつけられていた


全身に黄色に黒い斑点が散らばった毛並みをした化け物が四ツ谷の前に立っていた


頭には黒い逆立った髪が生えているソレはかつて出井いずるいという名で呼ばれていた男だ


気づくと周囲には男が用意したカメラで溢れている


(コイツ...一瞬で移動してバッタ野郎を壁に叩きつけてきた...


チーターの能力か...コイツ...)


出井いずるいは物凄いスピードでバッタ人間達を殺している律島りつしまの元へ駆け寄ると連続での素早いパンチを繰り出した


鈍く律島の骨が折れる音が鳴り響いた


律島は宙を舞いながら床に右手の針を突き刺して体制を立て直す


針を引き抜くと目の前から走ってくるチーターの化け物に針を使った剣撃を繰り出した


出井いずるいはチーターの瞬発力を活かしたのかテンポを変えて律島に回し蹴りを繰り出した


律島は転げ周り口から血を吐くと呟く


「チーターのスピードは確かに脅威だな...バッタ人間にしても...今回のゲームは今までよりも難易度 なんいどが高いようだな...


楽に勝ち進められると思い込んでいたのは...僕にとって大きな誤算だった...」


律島は自分の周囲の床に針で円を描いた


「シカクの性能はシカク者との相性で強くもなり弱くもなる...


だがチーターは基本的に持久力が無い...体力も短時間しか持たないし...そこは相性でも変えられない


そしてシカク者が一度に使用できるシカクは2つまで...下手なシカクを組み合わせたとしても...


僕の[ハチのシカク]の針には勝てない...一撃いちげきで仕留める」


出井いずるいは高速移動の最中に周囲の死体を掴んで律島の方に投げ込んだ


律島はソレを読んでいたかのように死体を貫きつつ前進して出井の体を針で突き刺した


針は粉々に折れて地面に散らばり出井は律島を抱き締めて動けなくした


「どれだけアンタが蜂でブンブン飛び回っても...今の俺のパワーと防御力じゃ俺には勝てないっスよぉ...」


出井の左手には灰色と黒の光沢を放つラーテルの彫刻が描かれたシカクが握られていた


出井は話を続ける


「視聴者のんなには蝗牙こうがさんがT県を隅々まで地獄に帰る所を見せる予定だったけど...


予定を変更しまして...やっぱ俺が前に出て率先して殺していこうかなと!


アンタをチーターの超スピードとラーテルのパワーで引きづり回ス...」


律島は出井の手から離れようと体を動かすが締め付けられて身動きが取れない様子だった


(なんだか2人の戦いを観察しちゃったけど...


どーせメガネも死ぬなら...ここで2人とも撃つか...)


四ツ谷が辺りを見渡すと逃げ遅れた観光客がチラホラと生き残っていた


(ここで少しは恩を売って...助かったコイツらを上手く利用できないかなぁ...)


四ツ谷気は右手に持った銃の側面が開いて何かを入れるような四角い穴が出来ている事に気づいた


四ツ谷は試しにポケットにしまった

[カエルのシカク]を装填して引き金を引いた


粘液を纏った骨の弾丸は緩やかな軌道をえがいて出井の足をジグザグに貫通し膝をつかせた


律島は隙を見計らって出井の首筋に噛み付くと万力のような力で肉を喰い引きちぎり始めた


律島は目の前のチーターの化け物の血液を吸い付くすと顔を血で汚しながら呟いた


「僕の本当の能力は噛むことで吸血し...相手に痛みを与えると共に回復する...


[アブのシカク]だよ...」


(あのメガネ...ハチに擬態してやがったのか...


本当の武器は針じゃなくて強靭きょうじんあごか...)


律島はハンカチを取り出すと自分の顔についた血を綺麗に拭き取った


出井は激しい痛みから全身が動かなくなりマネキンのように固まった体勢で倒れた


出井の死に様は彼の近くに転がっていた安物のカメラが撮影していた


すると非常口からユキが現れフラフラと歩き始めた


ユキは四ツ谷の方を睨むと何かを投げてきた


四ツ谷は[ミミックオクトパスのシカク]と

[ドクウツギのシカク]を受け取っていた


ユキは四ツ谷の方に中指を立てると口から血を吹き出して倒れ込んだ


四ツ谷が血を流して倒れるユキに駆け寄ろうとすると律島が何かに気づいたのか怒鳴る


「近づくなァーッ!!殺されるぞ...」


ユキの体には死んだバッタ人間の爪が貫通して突き刺さっていた


ユキの近くの蝗牙こうがの死体が糸に吊られるかのように起き上がり動き出した


律島は四ツ谷の横に立って震えた声で話し出す


「既に死んでいるのに...アイツは動き出した...さっきのキミの弾丸では殺せてなかったのか?」


四ツ谷は目の前の光景を目の当たりにして混乱していたが律島に肩を叩かれ正気を取り戻した


「人間を殺したらシカクを受け取るはず...アイツのバッタのシカクを...俺はもらってない」


蝗牙こうがの首の怪我は周囲のバッタ人間の血肉が うごめいて集まりふさがった


四ツ谷は床に倒れるユキを見るが既に顔に生気は感じ取れず手遅れだった


蝗牙の周りのバッタ人間は周囲の窓ガラスを叩き割ると何処どこかに飛んで行った


外を見ると気付かぬ間に風は止んでいて雨や雷も無くなっていた


ただ静寂の中でバッタ人間の羽音だけが街を包んでいた


(本当に世界が終わるのか...ユキちゃんも死んで...本当に...)


蝗牙は律島と四ツ谷の方に飛びかかる


四ツ谷は迷いなく銃の引き金を引く


何度もプシュッという音がなり無数の骨の弾丸が蝗牙を貫通した


律島は思い切り蝗牙の頭に回し蹴りを食らわせ顔を吹き飛ばした


飛んで行った蝗牙の顔の肉は吹き飛びドロドロの黒い液体に包み込まれ漆黒のドクロになった


首が無くなった蝗牙の死体は2人がジッと見つめているとブルブルと振動を始めた


上半身のコートを突き破り尖った棒状の物が体の肉を引き裂いて露出した


四ツ谷は余りにも不可解で醜い目の前の化け物に絶句していた


周りのバッタ人間の死体は声を出す


「お...俺も...能力を...偽ってたぞ...


俺の...ホ...本当の能力は...バッタじゃない...


[トウチュウカソウ]...虫の死体を突き破って生えるキノコ...だよ...」


(バッタ人間は...バッタじゃ無かったのかよ...)


冬虫夏草とうちゅうかそうと呼ばれるソレは、昆虫に寄生して体からキノコを生やす真菌


中には宿主の行動を操る「ゾンビ化現象」で知られる種もある


彼は話を続ける


「蝗牙は生きた人間の体を俺がコントロールして動かしていた...俺は菌を宿らせれば生きた状態の人間も動かせる...


バッタ人間は殺した人間に蝗牙の遺伝子を含んだ菌糸を植え付けさせ作らせて貰ったよ...


蝗牙の遺伝子を含んだ死体もバッタの能力を使う事が可能だったみたいで...上手くいったよ


俺は...ずーっと遠くから君達をしていただけだ...


初めから戦ってもいないし直接は誰も殺していない」


周りのバッタ人間は律島に素早く飛びかかると彼を自分達の体から引きちぎった鋭利な羽根で突き刺して切り刻んだ


律島だったものが辺り一面に血の池を広げた


もはや彼の顔立ちも特徴的な赤いネクタイも何処に行ったのか分からないくらいに細切れになっていた


四ツ谷は絶望していた


何処にいるかも分からない、この凶異的きょういな男を


撃ち殺すすべなんて無いからだ


1人のバッタは四ツ谷の目の前に立って宣言する


「これから俺の最後の分身体を殺すことで81枚のシカクを俺の自宅に集める...


キミのは82みたいだからね...取らずに残しておくよ」


目の前のバッタ男は突如として自分の頭を鋭い爪で貫いて倒れた


気がつくと四ツ谷の周りには誰も居なかった


ユキの死体や律島の死体、観光客達の死体


死んでいた、彼以外の人間は全員


四ツ谷は人生で初めて自らの行動に無力感に打ちひしがれた


四ツ谷は甲斐性かいしょうもなく泣いた


その間も日本中に広がったバッタ男は一斉に自らを攻撃し始めていた




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202E年L月6日 0時53分


勝利者であるはスマートフォンを弄りながら考えている


「どうしよっかなぁ...ゲームには勝ったけど...何をすれば良いんだろう?コレから...」


彼の頭の中に聞き覚えのある女の声が響いた


「私を抱くとか?それとも...世界を元に戻す?」


彼は右手に持っていた白い冬虫夏草の彫刻が掘られた正方形のカードを見ていた


[トウチュウカソウのシカク]


「もっと熱狂的な...ストーリーのある殺しがみたい...


そうだなぁ...意外と1日で81枚を殺し回って集めるのは簡単だったしなぁ...」


彼はベットに寝っ転がりながら考えていた


(ヨツヤ リン...アイツは今頃は...何をやってるんだろう?


恐らく俺と同じく初参加組だろうし同期として頑張っていて欲しいなぁ...


世界を作り替えて...良い思い出を残しながら...


新しいゲームを作って観察しようかな...)


コレは彼が人生で初めて世界を作り替えて世界を破壊はかいしたはなし



202E年L月6日 1時2分



世界が変わる



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ノコル◻︎シカク 貸氏444 @Kasisisi444

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