最強への至り方

アラクネ

第1話 生まれて0秒、ステータス確認。さて、スクワットだ


 暗闇に沈む意識。

 無音、無重力、無感情の世界。だが──確かな執念だけがそこにあった。


(ここは……どこだ……)


 静寂の中で、彼は思い出していた。

 自分の名前。人生。屈辱。絶望。

 そして──死んだという事実。


(……なるほど。これが、転生……か)


 そう、彼は前世で落ちこぼれだった。


 力がすべての世界で、力も、才能もなかった。

 周囲から蔑まれ、笑われ、捨てられた。

 誰よりも強くなりたいと願った──ただそれだけなのに、力を得ることは叶わなかった。


 最後の記憶は、魔物の群れに囲まれたとき。

 家族は、彼を“囮”として差し出した。


 その瞬間、理解した。

 この世界は残酷だ。

 弱者には、生きる価値すらない。


(……もし。もし次があるのなら──)


 今度こそ、強くなる。誰よりも、何よりも。

 頂点に立つ。そのためなら、魂すら売ろう。


 ──その願いが、最強の目にとまった。


『……ほぉ……いいじゃねぇか、その目。死ぬ間際まで強さを望むとは……よほど悔しかったと見えるな?』


 声が響いた。

 重く、嗤うようでいて、どこか期待を含んだ声音。


『よし、なら転生させてやろう。俺の退屈、ちったぁ紛らわせてくれよ。最強を目指すってのは……そういうことだろ?』


 そう言い残し、声は消えた──


 次の瞬間、世界が眩い光に包まれた。


 


 


 空気が肺に流れ込む。

 視界はぼやけ、音が乱反射し、全身が痛い。だが、


(よし、覚醒成功。記憶、完全保持)


 そう、彼は──リュカ・アークライトは、

 意識を保ったまま、生まれてきた。


 


 病室には、取り乱す助産師。混乱する医師。

 だが彼は、そんなものに構っていられない。

 生後0秒から勝負は始まっているのだ。


(まずは確認。最優先事項だ)


 周りの人達は産声を上げないリュカを、見て息をしていないのでは無いと慌てている。


 ──が、次の瞬間。


「ステータスオープン!!」


 赤子とは思えない明瞭な発声。

 病室に響き渡るその言葉に、空間が一瞬止まった。


「……え?」


「い、今……赤ちゃんが喋った……?」


「ステータス……だと……!?」


 産声代わりのステータスオープン。


 驚愕と混乱の渦。

 だが当の本人は、周囲の反応など一切無視。


 なぜなら、彼の目の前に、光のプレートが浮かび上がったからだ。



【ステータス】

名前:リュカ・アークライト

年齢:0歳0日0時間0分

レベル:0

ランク:F

所持スキル:超成長アンリミット【SS】

基本ステータス:

 HP(体力):50

MP(魔力):100

 SP (気力):60

 STR(筋力):70

 DEX (技量):10

 AGI(敏捷):10

 VIT(耐久):10

 INT(知力):10

特殊ステータス:

 CHA (魅力):SS

 BLD (血統):F

 GLT (成長):SS

 【合計:320】




(ふむ……320か。悪くないスタートだ。だが、まだ足りない)


 彼が目指すのは、世界ランク1位──

 現在その記録は、ステータス合計1兆超えとされている。


(……ここからだ)


 その瞬間、彼はぴくりと身体を動かした。

 周囲の大人たちが、再び悲鳴を上げる。


「立とうとしてる!? え、無理無理無理無理!!」

 「赤ん坊だよ?!無理に決まってるでしょ」


 無視だ。そんなのはどうでもいい。

 彼にとっては、今この瞬間すら無駄にすることは出来ない。


(まずは筋力。やることは決まっている)


 彼は、生まれたばかりの身体をベッドの上で屈めた。


 そして──


「スクワット開始」


 1回。2回。3回。

 骨がきしむ。身体が悲鳴を上げる。

 それでも、動きを止めない。


(痛みは成長の証。世界よ、これが俺だ……誰よりも強く、最強になってやる)


 赤子がスクワットをする光景。

 それは恐怖でしかなかった。


 助産師はその日、看護師長にこう言ったという。


「すみません、やめます……あの赤ちゃん、なんか……人じゃなかった……あれは…化け物でした!」


 


 ──こうして、リュカ・アークライト。

 生後0秒の赤子にして、修行を始めた伝説の男の名が、世界に刻まれる日が始まったのだった。


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成長チート系の話なのでアホみたいにインフレします。

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