君と奏でる青春歌
雪兎
第1話 出会いは君とピアノ旋律と
私の名前は今井雪。
現在進行形で同じ部活の河合雫さんの創った音楽に驚きで本当に目玉が飛び出そうです。
唐突だが皆さんには座右の銘があるだろうか
『ノーミュージック・ノーライフ』
これが私の座右の銘だ。
この言葉の意味は音楽がない人生なんて考えらないという意味だ。
その通りだと思う。
ていうかそもそも私がこんな思考になったには十分すぎる音楽設備が整った環境でここ14年程育ってきたからだ。
父親は歌手。
母親はバイオリニスト。
おじいちゃんはトランペッター。
おばあちゃんはフルーティスト。
こんなの音楽に触れずに生きていくなんて無理だよね。
おしゃぶりの代わりにリコーダー。
ガラガラの代わりにタンバリン。
そして14歳の今、
私は吹奏楽部でトランペットを吹いている。
この吹奏楽、まぁまぁ強い方の学校で入部試験とかある。
音楽一家だから突破したけど。
その過酷な試験は脱落者が多々いるのでこの部活、とても人数が少ない。
だが人がいないくせに元気だけある。
こんなこというのもまぁあれだが、吹奏楽部の中でも私は重宝されている方だ。
異常な楽器経験
家族の職業
トランペットがプロ並みに上手い
とか。
そういいながらも上には上があるもんで
だけどそれが
こんなに間近にいるなんて思わないよな。
「眠い。眠すぎる」
目覚ましのアラームで目が覚める。
時計を見ると7時50分。
えーっと…?
確か毎朝乗る電車が8時発だから…
「よし。朝ごはんは諦めよう」
階段を転げ落ちるような形で降りる。
母や父は基本演奏会なのでいない。
これが10年ぐらい続いているからなんとも思わないけど。
爆速で髪を結ぶ。
形が崩れたゆるすぎる二つくくりの三つ編みの出来上がりー。
「…やっぱなんか食べたい」
これも爆速でパンを焼く。
くわえたまま外でへ飛び出す。
ラブコメだったらここで男子と衝突!みたいなのが期待できるがそもそもこんな発車ギリギリで移動している人間は私ぐらいだろう。
パンを吸い込むように食べる。
「間に合え間に合え…」
駅に着く。
プルルルルルル
発車の鐘が響き渡る。
やばい。
本当にヤバくなってきたぞー。
がんばれ私の足の筋肉。
「ふおおおおおおおおおお‼︎」
ダダダダダダダ
扉が閉まる直前になんとか車両内に入ることができた。
「へっ!これが私の力‼︎」
「お嬢ちゃんいつも全力ダッシュしてギリギリすぎるだろー。いつかドア挟まれちゃうぞー。」
ほぼ毎日会うサラリーマンのおっさんが声を掛けてくる。
「大丈夫っすよ。このおかげで私50メートル走今年1秒早くなったんすよ」
「ならいいけど…」
プシュー
電車が駅に到着する。
ドア付近でスタートダッシュが切れるよう構える。
何故電車で間に合った私がこんなに焦っているのか。
答えは簡単。
あと10分で学校に着いていないといけないからだ。
「いくぜ‼︎」
スタートがうまく決まる。
走る。
走る走る。
学校に着く。
着席チャイムが鳴る。
私は校庭の中。
大丈夫。
私の担任はチャイムが鳴ってから3分後くらいにくる。
「おおおおおおおおおおお‼︎」
朝から乙女の声とは思えないほどの声量で後者に入る。
もうホームルームが始まっているクラスもあるので頭を下げて走る。
よし!見えてきたぞ!2-B!
スピードを落とさず教室に入る。
はっ!
いる!
先公が!
あと3秒で教室に入る。
「お前遅刻しすぎだろ」
「先生に言うぞー」
「来い!先生!早く!」
クラスメイトが声援を送ってくれる。
ドンっと席に座ったところで先生が教室に入ってくる。
今日も相変わらず筋骨隆々なご様子で。
ふー。セーフ‼︎
「今日の欠席は…いないな!遅刻もいないな!よし!ホームルーム始めるぞー」
「違いますせんせー。今井が遅刻しましたー」
「あ、そうなのか。じゃあ遅刻リスト書き込んどくなー」
あの男子…コロス…。
先ほどの男子をしばき倒してから授業が始まる。
今井雪という人間は義務教育に悲観的である。例を挙げて説明してみよう。
数学
「えーつまりここで単項式の連立方程式となるわけですねー」
よし。寝よう。
机に突っ伏す。
「今井さーん?」
先生が夢の世界に行きそうな私を引き止める。
何してくれんだ。
だが私は半分夢の中。
つまりあんぽんたんな答えを返す。
「つまりーこのーxの答えはー?」
「え…。答えは…プリンアラモード…」
「あ、ちょっとそれは…聞き間違えかも!もう一回言ってくれない?…今井さーん?」
「んあ?なんでそんな聞くんですか。言ってるでしょ…高級マカロンって…」
「…」
本格的に寝る前に先生の声がぼんやり聞こえる。
「今井さん…今のは減点だよ…?」
…やっべ。
こんなかんじが6時間続く。
だがしかし私は音楽は得意だ。
理由はもちろん家族の設定からというのもあるが。
それだけではなく…
私は普通にいろんなジャンルの音楽を聴く。
私のファミリーは基本クラシックが好きで家では常にオーケストラなどの音楽が流れているが私は結構どの系統の音楽でもいける。
いわゆる雑食だ。
クラシック、J-pop、ボカロ、K-pop…
それぞれの良さがあるし、本当に音楽って面白いと思う。
そんな話はさておき
今日は音楽ないし、他の授業でも私は結構寝ているのでかっとばすとしよう。
昼休み
鞄の中に常備しているヘッドホンを取り出す。
今日はー
国際的に有名な洋楽!
ーLet's play music. Let's jump into the wonderful blue. It's okay because I'm with you.ー
いい音楽…
最高やな。
あー心が潤った。
「おー今井ーお前なんの音楽聞いてんだ?」
「えー洋楽。聴いてみる?」
「おー」
男子がヘッドホンをつける。
そこでアイドルソングに切り替わった
ーみんなー♡来てくれてありがとう!僕の名前はー?ー
ーsei‼︎ー
ーそうだよ!偉い子には新曲お届けしまーす!ー
ーキャー‼︎‼︎ー
名もなき男子がそっとヘッドホンを取り外す。
「うん…もう大丈夫…ありがとう…」
「うんー」
えもしかして今私コテコテのアイドルオタクだと思われた?
この音楽も独自性があってアリだと思うけどなー。
別にいっか。1人くらい。
「なぁ…あいつさっきアイドルソング聞いてたぞ」
「え…キモ…」
「引くわー」
終わった。
午後の授業
寝る!
そもそもなんで昼飯の後に授業するのかいまだに理解に苦しむ。
掃除
サボりじゃん!うえーい♪
箒をギター代わりにして歌う。
「私の名前は今井雪!名国中学!2年っ‼︎」
「雪ちゃんなんでロック歌ってんの…?」
「それは!私!の!KA・KU ・ME・I ‼︎」
「今井、ゴミ撒き散らすな」
「私の夢?宝くじで5兆円っ‼︎‼︎先生なんてかっ飛ばせ!特に教務主任‼︎お前も掃除しろよ‼︎所詮人間!私のビックさ!寛容さ!見よ!納めよ!教務主任も掃除しろやぁ!」
「なるほど。それでは今井さんにお手本になってみんなよりも長く掃除してもらいますか」
あ。
き、ききき教務主任‼︎‼︎
「あはぁ…先生…これには世界問題が関連する多大な理由がありまして…」
「それでは」
くそ先生様はクイッと己のひん曲がった口髭を撫でると言った。
「教師は生徒には安全快適な学校生活を送ってもらう必要性があるので掃除を放棄した理由、教師を侮辱した理由、全て放課後職員室で聞いてあげるから来なさい」
帰りのホームルームが終わる。
外で教務主任が待ち構えてる。
怖。
みんなでさようならと担任に言った後爆速で荷物を片付ける。
周囲を確認する。
入り口は教務主任。
もう一つの入り口には校長。
よし、リスキーだがこの方法でいこう。
そろそろと開いている窓に近づく。
窓の外10メートル下には細長いパイプが続いている。
待ちかねた教務主任が教室に入ってくる。
「今井さん。お話があるので職員室きてください」
「はーい…
なーんて!」
教務主任についていくフリをして窓からクラッと落ちる…。
と見せかけて
パイプの上に着地そのまま駆け抜ける。
「うわっ!あっ!生きてるよかった!てか危な!戻ってきなさい!今井‼︎」
「さよーならー」
敬語を忘れた教務主任を置いていき、そのままパイプの上を飛び跳ねながら部活へ行く為に音楽室へ行く。
「しっつれーしまぁーす‼︎‼︎」
「あ!成績底辺!」
「だまりやがれ」
「今日は窓からのご登場かー?」
「運動神経良くてごめん⭐︎」
「ゴリラってんだよ」
「おん?」
「ゆっちゃん今日一緒に練習しよー」
「おっ!りっちゃん!いーよ!」
唯一私の価値が分かっているこの子は私の友達、パーカッションパートの舞野梨花ちゃん。
二つ名は『天下のドラマー』
その名の通りドラムがプロ級にうますぎる。
優しくてかわいい。
ついでにモテる。
ケッ。
私たちがどこで練習するか相談していると
「え⁉︎メスゴリと舞野さん今日も一緒に練習すんの⁉︎」
「メスゴリって誰かな?」
「1人しかいないだろ。お前だよ」
「手前マジぶっ飛ばすぞ」
何故。
何故隣の女はもてはやされ
何故もう1人の女はメスゴリというあだ名がつくのか。
チッ。
やりとりを続けつつトランペットを準備する。あーやっぱトランペットいいわー!
このキラキラ高級感がたまんねえのよ。
「でへ、でへへへへ」
「ゆっちゃん…。」
気づいたら水ちゃん。
「え?あーごめんごめん!行こー!」
「キモ」
「…以後気をつけます…」
パッパカパーパパパパパパパー
トランペットのファンファーレが鳴り響く。
「ゆっちゃんやっぱ上手だねー」
「でしょ。もっと褒めてくれていいのよっ!」
「…ははは…」
「なんだその愛想笑い
てか私今日かくかくしかじかでさー」
教務主任との出来事を共有する。
「えーそれ見つかったらヤバくない?」
「うん。でも私は悪くない。何故ならこの学校の悪の根源は教務主任!宿題多すぎやろがい‼︎‼︎」
楽器を吹く。
時々会話する。
楽しいなー!
だが、楽しい時は一瞬というべきか。
先ほどの言葉を発した直後、私の後ろに教務主任が立っていた。
逃げようとすると肩を掴まれる。
「今井さぁーん?行きましょーかー」
「ヤダヤダヤダヤダてか肩掴むとか変態行為ですよ先生!」
「生徒を守る為ならこのくらいの接触は大丈夫と定められています」
「うわあああああああた、たたたたたた助けてくれ!我がベストフレンドよ!」
「ゆっちゃん…」
先程まで仲良く話していた部活仲間は
「どんまい!しっかり反省しな!」
あっさり裏切った。
「あああああああああああああああ‼︎‼︎」
その後こってり絞られて
職員室から脱出できたのは6時30分。
もう部活時間終わってんじゃねーか。
デカめのため息をつきながら
学校から帰る。
…っとその前に
楽器を片付けてっと…。
あれ?なんか上の方から音楽聞こえるな。
抱いたのは違和感。
だってここは最上階。
つまり人がいるなら屋上。
でも屋上ってなんか立ち入り禁止の札とか鍵とかかかってなかったっけ。
楽器片付けてから屋上へ繋がる階段に近づいてみる。
♪〜♫〜
やっぱり。
さては上に誰かいるな?
階段を上がり禁止札を飛び越えてドアに近づく。
1年前まで鍵がかかっていたはずなのにドアが開いていた。
そろそろドアを開ける。
そして視界が屋上で包まれると同時に
屋上主のパソコンから流れる聴いたこともない儚く美しい、それでいて元気のあるピアノ旋律。
風にはらんで揺れる薄い茶髪。
「え?」
私は
今まで体験したことないほど素晴らしい音楽に私は出会ってしまったらしい。
音楽が終わる。
ボケーっとしていた私が我に戻される。
これは…何も言わずに帰るなんて論外だろ。
この作曲主が誰か知りたい。
スタスタ歩く。
そしてその子の真横にしゃがむ。
「えっ」
その子は
私と同い年
私と同じ吹奏楽部
私と同じクラスの
清楚美少女として男子どもからの人気を集めている
フルートパートの
河合雫だった。
君と奏でる青春歌 雪兎 @happyyukidaruma246
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