第15話:秘めたるメロディ
輝先輩のライブに誘われてから、
私の心は、毎日が文化祭みたいやった。
ワクワクとドキドキが止まらへん。
スマホのスケジュールアプリには、
ライブの日程を何度も確認する私がいた。
「本当に、私が行ってもええんかな……」
そんな不安と、大きな期待が、
胸の中でごちゃ混ぜになっていた。
学校でも、輝先輩の姿を目で追ってしまうことが増えた。
廊下ですれ違うたびに、
心臓がドクンと鳴る。
彼が私に声をかけてくれるたびに、
顔がカッと熱くなる。
以前は怖かった視線も、
今は、どこか心地よく感じるようになった。
これが、「恋」なんやろか。
人見知りで、ずっと孤独だった私に、
こんな感情が生まれるなんて。
戸惑いながらも、その感情を、
大切に抱きしめたくなった。
そんな恋心が、和歌の中でどんどん大きくなる。
彼が誰かと楽しそうに話しているのを見ると、
胸の奥がチクリと痛む。
こんな感情も、初めてやった。
これが、嫉妬、なんやろか。
私なんかが、そんな感情を抱いていいんやろか。
でも、抑えられへん。
教室の隅で、彼の姿を目で追ってしまう。
彼が笑うたびに、私の心も明るくなる。
彼が真剣な顔をしていると、
私もなぜか胸が締め付けられる。
告白。
頭の中に、その二文字が浮かんだ瞬間、
体が硬直した。
無理。
私には、そんな勇気ない。
人見知りで、自分の言葉を
うまく伝えられへん私が、
憧れの輝先輩に、告白なんて。
考えただけで、顔が真っ赤になるし、
心臓が爆発しそうになる。
伝えきれない想いを抱え、
和歌は自身の得意な詩作にその気持ちを込めることを決意する。
ノートを広げ、ペンを握る。
真っ白なページに、
彼への想いを綴っていく。
言葉にできない感情を、
文字にしていく作業は、
私にとって、唯一の救いやった。
これは、誰にも見せへん。
私だけの、秘密の歌。
そう決めた。
輝を想い、純粋な気持ちを歌詞にした「告白ソング」を作り始める(まだ詞だけで、曲はまだない)。
『初めての場所 見慣れない都会(まち)』
『人見知りな私 俯(うつむ)いたまま』
あの美術室で口ずさんだフレーズが、
自然と頭に浮かんだ。
あの時、彼に聞かれたかもしれへん歌。
あの歌は、きっと、
彼に出会う前から、
彼への想いを、
無意識のうちに歌っていたんやろう。
言葉を紡いでいくうちに、
胸の奥で、新しいメロディが流れ出した。
それは、優しくて、切なくて、
でも、確かな希望を感じさせるメロディやった。
『月の灯りが 照らす島で
私はずっと あなたを探してた』
彼の名前「輝」を、
歌詞の中に、そっと忍ばせる。
月が輝く島で、
私がずっと探し求めていた光。
それが、彼なんや。
ノートのページが、一枚、また一枚と埋まっていく。
彼の笑顔、彼の声、彼の仕草。
彼との、わずかな会話。
握った手の温もり。
一つ一つの記憶が、
歌詞となって、ノートに刻まれていく。
まるで、私の心の中を、
そのまま言葉にしているようやった。
この歌は、私だけのもの。
誰にも聴かせへん。
でも、いつか、この気持ちが、
彼に届く日が来るなら。
そんな淡い期待も、心のどこかにあった。
この歌が、私の秘めたる想いを、
全部受け止めてくれる。
そう信じて、私はペンを走らせ続けた。
秘密の歌に、和歌の切ない片想いが凝縮されていく。
完成した歌詞は、私の恋心を、
隠すことなく、ストレートに表現していた。
それは、私にとって、
初めての、そして最高の「告白」やった。
この歌が、いつか、彼の心に、
静かに、そして確かに、響くことを願う。
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