ー 異世界ローカル線で、風景に身を預ける休日。ー

【6:30 AM】今日は“移動”そのものを楽しむ日。

おはようございます、ルークです。

今日は、異世界ローカル鉄道「セラ=リーヴ線」に乗って、ゆったりとスローな列車旅をします。


最近は、目的地にすぐ着く“転移ゲート”や“空間跳躍タクシー”が人気だけど――

たまには、時間をかけて移動することでしか見えない景色がある。


今日は、そんな旅に身を任せてみます。


【8:00 AM】セラ中央駅。木造りの駅舎と、マナ気流式の汽車。

セラ中央駅に到着。

ここは、魔素で走るローカル汽車の発着駅で、

木の香りと少し煤けた空気が懐かしい雰囲気を漂わせている。


改札では、手彫りの木製乗車札をもらう。

近代的な魔導交通とは違う、手のかかるプロセスが、旅の質を変えてくれる。


今日のルートは、セラから終点リーヴまでの6時間の片道旅。

全10駅。途中下車自由。


【8:30 AM】出発。列車はゆっくりと、風景の中へ。

汽笛の音が響き、列車がゆっくりと動き出す。

マナ気流を動力にした静かな走り出し。


窓の外には、朝露に濡れた畑、マナ牛が草を食む丘、小さな石造りの村々。

都市の喧騒から少しずつ離れていくこの感覚がたまらない。


席には、読みかけの異世界紀行エッセイと、地元のハーブパン。


「今日は、何も急がない。目的地すら、はっきり決めない。」


そんな日があっていい。


【10:00 AM】第4駅・グレイヴ村。途中下車して、朝の市場へ。

気まぐれに途中下車。

グレイヴ村の朝市がちょうど開かれていたので、ふらっと立ち寄る。


・魔素ハチミツ入りのクロワッサン

・地元の陶器職人が焼いた小皿

・おばあちゃんが売る魔素漬けの漬物


まるで、旅というより“もう一つの暮らし”を覗いているような感覚。


旅というより、「風景の中に混ざっていく」。


買った陶器は、今日の小さなお土産としてリュックへ。


【12:00 PM】車内ランチと、旅人との静かな会話。

列車に戻って、車内でランチ。

駅で買ったハーブパンと魔素ジャム、あとは魔導水を一口ずつ。


向かいの席には、年配の旅人がひとり。


「若いの、転移で移動しないのは珍しいね。」


そう言われて、思わず笑ってしまう。


「たまには、ゆっくりしたくて。」


「そりゃいい。俺も昔、冒険者やってたけど、今はこうして“景色を味わうだけの旅”が贅沢だよ。」


言葉少なに、でも静かに心が通う。

旅は、人との距離も近くする。


【14:00 PM】終点リーヴに到着。静かな港町で、ひと呼吸。

午後2時、終点リーヴに到着。

海辺の小さな町で、魔素を使った帆船が静かに並ぶ港が広がっている。


カフェ「ネリノ」で、海風を感じながらレモングラスティーを飲む。

観光地でも名所でもない。

でも、この港の静かさが、すごくしっくりくる。


「この時間、全部“移動のなか”で生まれたんだな。」


旅は、何かを見るためじゃなく、

“今いる自分”と、少しだけ違う自分になるためにある。


【17:00 PM】帰りは…今日はしない。もう一泊していこう。

予定では、日帰り旅だったけど、

今日はこの町で一泊することにした。


宿も、予約なしでふらっと見つける。

小さな魔素ランプの灯る古い宿。


明日の朝もゆっくり起きて、

また違う列車で、違う景色を見に行こう。


【20:00 PM】港の夜風。静かに今日を振り返る。

夜、港のベンチに座って、波の音を聞きながら手帳を開く。


「今日は、目的地に着かないことが、価値だった。」


異世界にも、“速さより深さ”を選ぶ旅が、確かにある。


「今日も、いい休日だった。」


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34歳、リアルな異世界の休日の過ごし方。 雪風 @katouzyunsan

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