「影から問われる」

人一

「影から問われる」

 私は、いつも相棒と一緒だ。

今日は、そんな相棒のとある日を紹介していく。

 相棒は大慌てで起床した。ひどく慌てているがしばらくするとへたり込む。

落ち着いたかと思えば文句を吐きながら食事の準備をしている。今日は大好物なパンの気分のようだ。

 食事を終えてゆっくりしていると、不意に立ち上がり、出かける用意を始めている。

どうした?いつもなら再び眠り始める頃だろ?

 変な行動に驚きを覚えつつも私は言葉を発することなくついていく。

外に出たが相当に暑いらしく、何度も汗をぬぐっている。

 しばらく歩いた後おもむろに座ると、動かなくなった。どうやら眠りにおちたようだ。

 寝言だろう、意味不明な言葉をときおり発しながら揺れている。

いくらか眠ったあと再び飛び起き、辺りを見回している。眠りすぎたらしく肩を落としている。

相棒は先ほどの慌てぶりとは別に、ずいぶんとゆっくり歩いて移動している。

 大あくびをしながら、微睡むように歩いている。


――瞬間、体が離れていく感覚に襲われるがすぐに元通りになる。

 相棒はずいぶんとアクロバティックな動きをしているが楽しいのだろうか。

少しすると壁にもたれかかり、また眠ったようだ。

 だが相棒は動かない。口さえも。

 私はゆっくりと相棒に入り込む。

目を開けると眩しい光と群がる人間たちが見える。

自分に目を落とすとずいぶんと血塗れだ。…だが、そんなことはどうでもいい。

 私は緩まる口元を隠すこともなく立ち上がり言う。

「…ふ…入れた…はは…入れた入れた…ふはは…ああ!入れた入れた入れた――

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「影から問われる」 人一 @hitoHito93

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