馬車の中でのやらかし

 俺とアルは今、王都に向かうために馬車に乗っている。ちなみに対面ではなく隣どうしで座っている。何故かはわからない。だが対面に座ろうとしたら、膝の上に座るよ?と脅しなのかどうかわからない脅され方をしたので、仕方なく隣どうしで座っている。


 女子って良い匂いするな~。…おっと、仕方なく座っているだけですよ?


「それで?」


「ん?」


 ん?じゃないが。…ってか、わかって言ってるのかこれは。


「いや、王都に着くまでまだ時間があるだろ?だから魔術本の解読に移りたいんだが…数分前にも同じことを言ったぞ?」


「やればいいじゃん。私も手伝うよ?」


「ああ…手伝ってくれるのはありがたいが、俺の荷物、お前の後ろにあるから退いてほしいんだが………いや、早く退いて?」


 アルは俺に言われると、少し後ろを気にするような動作を見せたが、直ぐに切り替え、姿勢を正し始めた。


「荷物を気にするよりも、私のことを気にしてよ?最近雑に扱いすぎ」


「お前ほど雑に扱っても許される女子を俺は知らないんだが…」


「結構傷付いた…慰めないと、この荷物は私が貰っていく」


 それは結構困る。しかし、慰めるつったってどうすれば良いんだか…仕方ない。強行手段に出るとしよう。


「よっと」


「あっ、ちょっ」


 片腕でアルを持ち上げ、反対側の席に持っていく。


「俺にイケメンのような行動を望んでも無駄だぞ………ってどうした?」


「いや、えっと…やっぱ男性には力じゃ敵わないんだなって…ちょっと怖かった…かな?」


 あ~流石に急に持ち上げるのは不味かったか。…どうしようか。俺にその気は無い。と言うことはわかってくれていると思っているが、どうだろうか。


「…悪かった。流石に持ち上げるとかまではする必要無かったよな?ちゃんと交渉すれば俺の荷物も返してくれていたんだよな?」


 おい、顔を反らすな。


「ま、まあ私も面倒くさい女の真似してごめんね。本の解読…しよっか?」


「そうだな。今回はどちらも悪かったと言うことで…」


 1日後


 気まずい。あの件以降、アルと目が合ったら反らされるようになった…。


「なあ…アルさんや。そろそろ昼だぞ?まだこのめんどい状態を続けるのか?なあ、俺に気付いて欲しくてそうなっているのなら、なにか言ってくれ。頑張って考えるから…」


「………違う。前のループの時はもっとあなたにベタベタしてたのに、昨日ので変に意識しちゃって…その、頭が混乱してて…」


「…まあ今までが異常に距離が近かっただけで、これが男女としては普通の距離感なんじゃないか?ハハハ…」


 絶対違う。これが男女の普通の距離感なら、俺はとっくに誰かに殺されている。アルも流石に間違いに気づくだろう。と思っていたが…。


「そ、そうなのかな!?なら今までの私ってなんだったのかな!?」


 このアルの様子を見た俺は、お目目ぐるぐるって本当になるんだ…と、そう思った。

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