第19話 学校外周マラソン心臓破り大会④

“影日向くん”を着た奏センパイは何と4人抜きで……ご自分のクラスである2年1組にもう少しで追いつくところで河本くんにバトンを渡した。


“影日向くん”はちょっと得意げに私に語り掛ける。

「なかなかいい線行ったろ?」


「影っち!!マジ凄じゃん!」とヨッシー


 うん、“影日向くん”としては1周目だけど、奏センパイとしては2周目なんだ。凄いよ!!奏センパイ!!


 残念ながら次で一人抜かされて、その次でさらに差が開き……アンカーの柿崎くん(サッカー部だけど、足が速い)にバトンが渡った。


 柿崎くん、大きなストライドで猛追を始めたのだけど……


 曲がり気味の上り坂へ差し掛かったところで、ブレーキも掛けずに下って来た自転車に激突しそうになり、身をかわした柿崎くんは道路脇に転がった。


 とても嫌な予感がして

 私は、でカレの傍へ急ぐ。


 痛みに耐えているカレの膝にそっと手をやり、ふんわり触ってみる。


 酷い状態ではないようだ。


 しかし、このままでは……

 我がクラスは棄権になってしまう!

 せっかくここまで来たのに!!

 幸い、コースの3分の1は走り終えているから……

 私は意を決した。


「私が走る!! バトンを貸して!」



「ダメだ!!」

“影日向くん”の声がした。


「オレが走るよ! 見ただろ? さっきのオレの走り」


 センパイ!! ダメだよ!! 3周も走るなんて!!!


 バトンを握り締め頭を振るかぶりをふる私に

“影日向くん”は手を差し伸べた。

「ケガをしてるヤツを走らせるなんて男が廃るすたるよ」


「だって!!」


「杏!」


 に周りの……ヨッシー達も反応する。


「時間がない!! その代り、もし1位で走り抜いたら……オレの女になれ!!」


「えっ?!」

 ビックリして手の力が抜けたその一瞬に、スイッ!とバトンを抜き取って

“影日向くん”は脱兎のごとく駆け出して行った。



 ◇◇◇◇◇◇


 1位のゴールテープを物凄い勢いで引き切った“影日向くん”は……さすがにゼイゼイしながら芝生に転がった。


 私は、そんな“カレ”を抱き起して縋り付いた。


 色んな感情が

 胸の中をグルグルしている。


“影日向くん”ときたら……私に抱かれたままで、歓声と共に来たクラスの皆と無邪気にVサインやハイタッチをしている。


 こんな事になってしまって!

 私達は……

 いったいどうなってしまうんだろう……





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