8

松田と三咲、

出席番号で席が決まるならば順当である。



しかし納得いかない。



なぜ大男が前で、私が後ろなのか。







「成長期かー?これ以上デカくならんでいいぞー」








蒔田の一言にクラスが笑い声に包まれた。





松田のこういうところが憎めない。




どこまでもマイペースで、

寝るかバスケかの二択しか頭にないような。




それでも誰からも咎められず、

むしろ受け入れられている。




空気を読んでいないようにみえて、

気づくと空間の中心にいる。




本人はきっと

何も考えていないだろうけれど。





ずるい








例により、蒔田のロートーンな

「静かにしろー」が響いた。








「今から校外学習のお知らせを配ります。後ろにまわせー。ちゃんと家持って帰れよー。親御さんにちゃんと渡して、き……………」








先週知らせがあった

芸術鑑賞会の日程表らしい。




平日の真っ昼間に自由行動、

授業はなし。



高校生にとってそれは、

都合よく解釈していい日、という意味だ。





ざわつくクラスメイトたちに紛れ、


私は内心、ちょっとワクワクしていた。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る