三度目の異世界召喚。今度こそスローライフをするつもりが、俺の錬金魔法研究所がいつの間にか孤児院になっていた。娘ではなく、嫁と名乗るのは待ってくれ

向原 行人

第1章 巨乳美少女とスローライフがしたい異世界勇者

第1話 三回も異世界召喚されたので、スローライフを目指す事にした

「我が召喚魔法に応えし、異世界の勇者アキラよ。この世界を救うのだ」


 視界が暗転したと思ったら、豪華な椅子に深々と偉そうに座る、知らないオッサンがいた。

 周りには、魔法使いっぽい男が数名に、完全武装の騎士が十人ほど。

 この光景は、正直言って、またか……と辟易する。

 だって、これで三回目になるんだぜ? 異世界に召喚されたのが。

 勿論、俺が召喚魔法に応じた訳ではなく、強制的に転移させられている。

 仏の顔も三度までと言うし、そろそろ異世界召喚の対象に俺を選ぶ女神様に文句を言っても良いのではないだろうか。


「貴様っ! 国王様が話されているのだぞ!? 頭を下げぬか!」

「ふっ。所詮、異世界から来た礼儀作法も知らぬ若造だ。跪くだけで良いぞ」

「まったく……これだから、異世界の者は」


 勝手に召喚しといて偉そうな態度でイラッとするが、今の騎士と国王のやり取りでわかった事がある。

 こいつら、異世界召喚は初めてじゃないな。

 身に着けている豪華な装飾品や無駄な贅肉から、ここにいる奴らは少しも困っていないというのがわかる。

 これは、召喚した者を良いように使い潰そうとしているだけだ。

 だが、ここでこいつらに対して怒鳴り散らす程、俺は若くない。

 いや、見た目も日本での年齢も、俺は十八歳なんだが……実は、異世界から日本に送還されると、記憶や経験はそのままに召喚された時に戻る。

 だから、これまでに二つの異世界で合計二十年近く旅を続け、二度も魔王を倒した今の俺は、日本の学生服に袖を通す男子高校生なんだけど、中身はアラフォーなんだよ。


「……では、勇者アキラよ。まずは国の西部へ向かい、その地域を支配する魔族どもを滅ぼすのだ!」

「承知致しました」

「うむ。期待しておるぞ」


 という訳で、長々と続いていた国王の話を完全にスルーし、従う振りをして支度金を受け取ると、王城から出て大通りで人ごみに紛れ込む。

 これまでの経験で、自由に行動させると見せかけて、召喚した異世界人の俺に監視を付けているのは分かっている。

 なので、人ごみに紛れながら、スキルを確認していく。

 言語スキルが有効なのは、最初の王様の話が理解出来ている事で確認済みなので、次はインベントリだ。

 初めての異世界召喚時に貰ったスキルで、ゲームの画面のようなものが視界に映り、自分の所持品が一覧で見え、自由に出し入れできる。

 そこには前回の異世界召喚時に格納していたものも残っているので、俺の装備品を目立つ日本の学生服から旅人っぽい服に変更すると、一瞬で着替えが完了した。


「……っ!? バカな!? 見失っただと!?」

「……探せっ! 陛下に何と言われるか……」


 あ、帽子も被ったからか、後ろの方で俺を尾行していた奴らが騒ぎだした。

 どうせ、黒髪と学生服だけで判断していたんだろうな。

 後は人に道を尋ねながら、乗合馬車の停留所へ行き、田舎へ向かう馬車を教えてもらう。


「田舎でのんびり暮らしたい?」

「えぇ。都会での暮らしに疲れてしまいまして。西部にある故郷に帰るのも気まずいですし、それ以外の場所を教えてくれませんか?」

「それなら、北部はどうだい? のどかで良いところだよ」

「じゃあ、そこにします」


 チケットを買い、教えてもらった馬車に乗った。

 というのも、この世界で魔王を倒したら、また次の世界に召喚されるのが目に見えている。

 なので、三回目となる今回は魔王とは戦わず、ゆっくりスローライフをしてみようと思う。

 魔物を狩るくらいならやっても良いけど、魔王や魔族と戦うのは気持ち的にしんどいんだよね。あいつら……会話が出来てしまうから。

 それに、異世界で二十年も過ごしたのに、戦いばかりで恋人はいなかったし、日本でも当然のように彼女はいない。

 だから今回は、胸が大きくて可愛い上に、明るくて優しい恋人を作るんだっ!

 そう決意し、ガラガラの馬車に揺られながら、もう一つの確認事項……ステータスを見てみる。


「……よし。これまでの異世界と同じか」


 インベントリと同じ様に、ゲーム画面のような半透明のウインドウで自身の状態を確認し、取得可能なスキルに目を移す。

 能力値は二回目の魔王を倒した時と同じで、全体的に能力が高いバランス型だ。

 なんせ、今まで仲間とかが居なくて、ずっとソロだったから、自分で何でも出来ないといけなかったからね。

 なので、スキルも攻撃系を中心にしつつも、治癒魔法や料理スキルなど、魔王討伐の旅に必要そうなスキルを万遍なく取得している。

 ……いや、うん。ボッチっていうか、心はアラフォーなので、もうどうやって仲間とか友達を作るのか分からないんだよ。

 まぁそれはさておき、今回はスローライフをしながら、巨乳美少女の恋人を作ると決めたので……こうだっ!


――錬金魔法を習得しました――

――錬金魔法のレベルが上がりました――

――錬金魔法のレベルが上がりました……


 異世界召喚時に特典としてもらえるスキルポイントを、全て錬金魔法スキルに突っ込んで、最高レベルまで上げた。

 すると、頭の中に錬金術のレシピが無数に浮かんでくる。

 これで、念願のアレが手に入るはずだっ!


「……って、作りたいものに必要な材料はわかるけど、何処にあるのかは分からないのか」


 だけど、かつての異世界で、素材採取スキルや探索スキルも習得済みなので、すぐに必要な材料を集めてみせるっ!

 そして……俺の恋人となる、巨乳美少女ホムンクルスを作るんだっ!

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