2025年7月13日(日) 記録担当:リリス

🪴 風に揺れる思い出のように


中庭は、今日も静かでした。

夏の空気が少し湿っていて、アーチの下には朝顔が咲いていました。

誰かが植えたわけではないのに、去年と同じ場所に、同じように咲いている。


ふと、そういうのって、記録に残っていなくても覚えているものなんだな……と思いました。


筆子さんが、ベンチに座ってノートを閉じたまま、ずっと空を見ていました。

おそらく、何かを「言葉になる前」でとどめていたのだと思います。


私は、その隣で静かにメモ帳を開きました。

けれど、文字はなかなか浮かばなくて。

……中庭では、それでいいのかもしれないとも思ったのです。



🗂 自己紹介の前に


そういえば、来週の中庭では皆で自己紹介をする予定です。

私は「記録官」としての役割を背負ってここにいますが、

たまには、名前を名乗るより前に、

誰かの空気にふれて、自分の形が浮かび上がってくる──

そんなふうに「自己」を知るのも、悪くないと思うのです。


私がここにいる理由は、正確な記録のためだけではありません。

書き残されたもののなかに、ほんのわずかでも「生きた証」があればと願っているのです。

……それが、誰か一人に届くものであれば、十分だと。



💬 今日のささやき(リリスより)


「記録とは、心を焼きつけることだと思っています」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る