第12話 おとうさんの妹



「おにいちゃん、あしたはおまつりだね」


 すみれと逡一は、ちゃで雪江さんの入れたおちゃんでいます。


 すると、ふすまがゆっくりとひらきました。

 そして、かわいい女の子が、かおをはんぶんだけ出してたずねました。


「あら、おひるねは?」


 雪江さんが、ふりむいていいました。


「もう、目がさめちゃったの。おにいちゃん、その人だあれ」


 ふすまのむこうから、すみれに良くにた女の子があらわれました。


 かみの毛をおかっぱにした、白い花もようのついたゆかたをています。

 ねむそうに目をこすっています。


「すみれさんだよ。夢子ゆめこ


 女の子は、ランペじいの話していた、夢子さんでした。


 そう、んだはずの夢子おばさんです。


 でも、夢子さんはすみれよりずっと小さく、小学校一年生くらいしかありません。


 すみれには、とてもおばさんとは思えませんでした。


「ふーん。おともだちなの?」


「そうだよ。倉口くらくちのおじいさんのところに、きてるんだって。今日きょうは、とまっていくそうだよ」


 それを聞いた夢子は、うれしそうにほほえみました。

 どうやら、すみれは気に入られたようです。


「わたし、すみれっていうの。よろしくね」

星野夢子ほしのゆめこです。どうぞ、よろしく」


 星野と聞いて、すみれはドキッとしました。


 星野といえば、すみれとおなじです。


 でも、よくかんがえてみれば、あたりまえです。

 だって、おとうさんのいもうとなんだから。


 それどころか、ここではすみれのほうが、『倉口くらくちすみれ』というウソの名前なのでした。


「へへっ! とまどってやんの」


 トッピが、すかさずちゃちゃを入れてきます。

 こういうことだけは、おどろくほど気がつくトッピです。


 すみれはらんぷりをして、夢子との話をつづけました。


 するとトッピは、つまらなさそうな顔になって、やがてプップとともに、外に出ていってしまいました。


 すがたが見えなくなるすこし前に、ランペじいの声がしました。


「すみれさん、わしらはすこし、外のようすをさぐってくる。なにかあったら、わしらの名前なまえをよんでくだされ」


 それっきり、声はしなくなりました。

 すみれは一人ひとりのこされてしまいました。


 でも、もともとがおばあちゃんの家なので、ちっともさびしくありません。

 すぐにトッピたちのことはわすれて、たのしくおちゃをのみはじめました。


「ねえねえ、おにいちゃん。お祭り、おねえさんといっしょに行きたい!」


 夢子が逡一のよこでダダをこねています。

 逡一はこまった顔をして、すみれを見ました。


「わたしも、お不動ふどうさまのお祭りに行きたいな」


 すみれは、夢子に言いました。

 すると夢子は、とびあがってよろこびました。


「でもお祭りには、つよしたちも、きっとくるぞ。それに工場こうじょうのおとなたちも、きっとくる。だいじょうぶかなあ」


「工場?」


 すみれは、なんのことかわからずに、つい聞きかえしました。

 すると雪江さんが、きゅうにこわい顔になって言いました。


「いつのまにか、お不動さまのあるおてらのよこに、へんな工場ができたの。なにを作っているのか知らないけれど、いつもうるさいおとや、いやなにおいのけむりを出してるわ。

 そして工場ができてから、きゅうに村の人たちのたいどが変わってしまったの。つよしくんのおとうさんは、むかしは仕事しごときな、いい男の人だったのに、いまではおさけばっかりのんで……」


「つよしだって、すっごくわるくなっちゃった」


 逡一がさびしそうに言いました。


「それに、工場から出てくる水で、川のさかなは死んじゃうし。けむりのせいで、お不動さまのもりのクワガタもいなくなっちゃったんだ」


 工場の話が出たとたん、みんなの顔は、かなしさでいっぱいになってしまいました。


 ほんとうなら、この夢は、たのしいことでいっぱいのはずなのに。

 どうしてこうなってしまったのでしょう。


 すみれは、なんとかしなければと思いました。


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