全てを失った。それでも景色はきれいだった

寝子

プロローグ

「……最期くらい、綺麗なものを見たいな」

それが、俺の最後の言葉だったと思う。
心臓を刺され、血の温かさが全身を抜けていく。
目の前には、裏切った恋人と、親友と、俺を見捨てた仲間たち。

その奥――曇った空が、夕日に照らされて淡く赤く染まっていた。
きれいだ、と思った。
何もかも失ったというのに、不思議と涙は出なかった。

そして――

「……あなた、生きてるの?」

「…………ここは、どこだ?」

目を開けると、そこは見知らぬ森の中だった。
空は、さっきと同じように綺麗だった。

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全てを失った。それでも景色はきれいだった 寝子 @jyk3

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