俺は魔女を見た
シーサル
第1話 俺は魔女を見た
俺は魔女を見た。
信じれない?
全然いいよ。俺も信じることが出来なかったし。
もし聞いてくれるのなら半分冗談気分で聞いてくれ。
夜に目が覚めたんだ。
夜中の1時で、疲れているはずなのに眠気がなかった。
だから俺はとにかくテレビを見ようとリビングに向かったんだ。
「え?」
俺はその時雷が落ちた様な感覚がしたよ。
紫の帽子を被った女性が立っていたんだ。それにとても美しい人がね。
なんで自分の家に……
そうそう、君の言う様に俺も夢かと思ったよ。
施錠はしっかりしているのにどうやって入ったのか?
とか
泥棒だからとにかく警察に
ってね。
でも彼女が帽子を脱いで隠れた顔が現れた時は本当に息が止まったよ。
ずっと見れ取れてて考えていた事を全て忘れてしまった。
そして魔女はニコリと笑った後、俺に問うたんだ。
「どうやら迷っている様だね」
って。
俺は思わず頷いてしまって、魔女はそんな俺を見つめていた。
そしてまた微笑み、俺に近寄ってきたんだ。
そんな妄想よりもって?
いやいや、本当、本当。
で、俺の鼓動は魔女が1歩動くごとに早くなっていって、その時は死ぬかと思ったんだ。
本当に凄かった。
睨むなよ。もう少し聞いてくれ。
でな、魔女は限界まで近づいてこう言ったんだ。
「私があんたの悩みを解決してやる」
ってね。
ようやく意思が正常になって、
「あなたはいったい誰なんですか?」とか「なんで自分だけ?」
ってとにかく思いつく限りの質問を並べたんだ。
「落ち着きたまえ」
でも、そんな俺もその一言で冷静になってしまったんだ。
まるで抱きしめられた様に……
関係があるのかって?
あるから!
で、質問とかどうでも良くなって、
「お願いします」
って言ったんだよ。
そうしたら魔女は
「それなら条件をつけよう」
って言ってきたんだ。
それを聞いて俺は……了承した。
夢を叶える為ならってね。
「契約完了だ」
と言った瞬間に、体に違和感があった。
今回がギュッと固められる感じ。
窮屈だったね。あと気持ち悪かった。
「じゃあ移動しようか」
といって魔女は何処からか魔法の箒を2つ取り出して、片方を渡してきたんだ。
魔女の真似をしてその箒に乗ったんだけど、その瞬間「ふわっ」と浮遊感が出て、足と地面が離れたんだよ。
信じられないだろうけど、段々と高度も上がっていって、そのまま俺達は窓から外に出たんだ。
「捕まっておいて」
っていう包まれる様な安心する様な声で僕に告げた。
「ほわぁ」ってしてたんだけど、その後の速さに驚いたよ。
ビュンッ!
振り落とされる感じ。
ほんとに速くて、着いた頃には吐き出しそうだった。
え?何処に着いたかって?
病院だよ、病院。
君が通っていたね。
彼女は驚いた顔をする。
で、そのまま病院に入った。
魔女は凄くて、壁を通り抜けられるんだ。
俺も彼女についていって部屋についた。
そうそう、君の部屋。
そして魔女は君の額に触れて
「-+¥(@"3"481」
ってよく分からない言葉を吐いたんだ。
すると光が溢れ出して、僕は目を瞑った。
そして次に目を開いた時には……君が息を吹き返していた。
……そしてここは何処だと思う?
彼女はようやくそれに気づいて頭を振ってあたりを確認した。
白い空間。
一瞬記憶消失の様に自分の事を忘れていた。
そう、君の感情の中。
息を吹き返して時間が経ったからそろそろ目覚める頃かな。
「まさか……」
「そう、僕は君を助ける代わりに命を失う事にしたんだ」
「えっ」
彼女は衝撃で声が出ない。
「叔父さん、叔母さんは、公園で捨てられていた俺を救ってくれた。でも……その代わり彼らの実の子である君が病にかかった。それも生存率1%のね」
「……」
全てを思い出した様だ。
「とっても悲しんでいた。俺の声が響かないぐらいに。だからあの契約の時に覚悟したんだ。恩返しをする為に君を救って僕は死ぬってね」
「……なんで?」
「君と叔父さん、そして叔母さんが好きだったからだよ。血も繋がっていない俺を助けて育ててくれて……感謝しかない」
「……」
「さぁ……もう時期君は目覚める。魔女は俺の最後の願いで喋らせてくれているけど、それも終わりだね」
「行かないで」
「バイバイ」
はっ
彼女は目覚めた。
「うわぁぁ!」
「良かった!」
両親は泣いている。
長期間ベットで眠っていたのにも関わらず、1日で急に急変したらしい。
「あの人……本当に……?」
あれ?
あの人って誰だっけ?
「ねぇ、私に兄弟って……」
「どうした?記憶消失か?そんな兄弟いないぞ?」
「だよね」
私は久しぶりの再会に涙を垂らしながら抱き合った。
1ヶ月後には退院となった。
私は久しぶりの学校へ行き、2か月もすれば追いついて普段の生活をしている。
幸せだ。
病気から治って、友達もいて、文武両道。
でも……心の奥がむずむずしている。
「リサ!行くよ!」
でも……なぜか私はこの人生を幸せに暮らさなければいけない気がする。
たくさんの命を救わなくてはならない様な気がする。
「はぁい!」
その頃には、違和感はすでに無くなっていた。
---
「まさか……後遺症が残る事を恐れて自分の存在を抹消してくれとは。なかなか面白い奴だったな」
魔女は椅子に腰掛ける。
「何がそこまで動かすのか……私には分からない。人間は不思議な生き物だ」
はぁ
と溜息をついた。
「さて……人間を観察する為にも、様々な感情を知らなくては」
そしてまた魔女はその場から消えて、人間に干渉していくのであった……
Fin
俺は魔女を見た シーサル @chery39
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