第4話 『004 鍛冶師は市場に行く』
『004 鍛冶師は市場に行く』
危なく魔族なのを知られる危機だったのだが、それはいいとして市場を探索すると、興味深いことに、同業者がいたことで、ナイフや小型の武器も販売しているのを、じっと観察させてもらう。
俺は鍛冶の経験があるんで触れば、武器の重さや材質なども判断できるし、性能もある程度は判断できると思い、店主に価格を相談して聞いてみたりした。
ただ人族の金の価値は俺は詳しくないから、クロエに価値について何となく聞いてみるのは、何も知らないのは変だし、何で人族なのに、金の価値を知らないかと疑われることになるから、さりげなく質問した。
どうやらあまり高価な武器ではなそうな話であって、初心者向けで、安い金額で購入できるとのことで、初級の冒険者に売っているそうだと教えてもらう。
確かに初級っぽい冒険者の姿もあるし、普通の主婦っぽい人もいて、日本なら商店街に似たところと思え、なんだか日本が懐かしくなってしまうとは予想外だったが、懐かしくなっているよりも、俺がこの町で販売できるかをもっと真剣に考えよう。
金がないよりはあったほうがいいし、宿に宿泊するなら、高額な金は絶対に必要だし、そうなると販売はしたいところで、営業するには許可とかいるのかが知りたい。
クロエに聞くよりも実際に販売している店主に、許可の件を相談してみると、
「許可は要らない、誰でも販売できる。空いている場所で販売したらいい」
「ありがとう」
どうやら俺でも販売は可能だったので安心して、場所はスペースがあればいいとのことだから、空いている場所を見つけて、開店準備としたい。
「タイチ様、ここで販売しますか?」
「開店だな。アイテムボックスにいくつか武器類がある。それを販売してみたい。売れるかな」
「アイテムボックスがあるのは利点です。タイチは鍛冶師にするには惜しい。冒険者にしたいです」
「俺は鍛冶師でこの町でやりたい。生活は販売していきたいのが俺の希望だよ」
「ううう、タイチの剣術は、私は好きなんだけどな」
急ではあるから、屋台とかの準備は何もできないけど、完全にフリーマーケットみたいに、地面に置いて販売する形になるしかないが、問題は客が来てくれるかで、来てくれれば、物は良いものだと多少は自信はある。
地面に持ってきたナイフやダガーを数本、アイテムボックスから出して、地面へ置いた。
「さあ、俺達のお店の開店だ。ソフィアも頑張って売ろう」
「頑張ります! さあ、どうぞ、どうぞ、珍しい魔族の、いや違う、人族のダガーですよ!」
ソフィアも売り子になって販売開始も、魔族とか言いそうで危なっかしいかな。
魔族の国を出て、やっと希望だった鍛冶の販売までは来れたのは嬉しいし、売れるかどうかドキドキする自分もいて、ちょっと緊張してしまう。
過去の話だと魔族の魔都では、自宅で生産したのを、直接に軍に渡していたから、自分たちで販売するのとはちょっと違っていたので、新鮮さがあるのを、ソフィアも感じているのか。
商業的な面はやはり人族の方が上だと思うのは、魔都では商業はあまり発達しておらず、経済とかよりも、単に軍隊があって、そこに納品する感じだったから、面白さが違う。
だが俺は少しだけ違っていて、俺の作る武器が四天王のシュテファンや魔王様に気に入られていて、直接に制作依頼があるのは俺だけだったらしく、特注品として生産したこともあった。
シュテファンに言わせると、俺の作る武器は超レア級の武器になるということらしいが、そこは俺もよくわかっていない部分で、自分がそこまでの価値があるのかなと疑問ではあったのは事実だった。
実際に販売するのは、俺の作った武器が評価されるのは興味深いのは、ここでは価値があれば正当に評価されるだろうからで、価値がなければ売れないわけで、厳しい部分もあると思う。
ソフィアが頑張って売り子をしているが、俺の期待とは逆に誰も客は来ないのは残念ではあるものの、もう少し様子を見てみるが不安にもなる。
あまりにも客がこないとさすがに心が折れるというもので、ソフィアが、
「誰も来ないなあ。どうしてだろうな。タイチ様の作るダガーは一級品なのに」
「まあ、そのうち客は来るさ。甘くはないってことだ」
ソフィアは暇になったからか、客が来ないことに、いらだちを感じているようだが、商売なので気長に勝負するしかないだろうと、ソフィアには言った。
クロエは冒険者なので、商売には関心はなそうな気もして、別に興味ないっぽいが、俺の剣術には興味があるというけど、どこに俺の剣術に魅力があるのかは俺には理解できないな。
そういえば四天王のシュテファンは俺と剣術の訓練をしたことがあって、凄く評価してくれたが、それと同じことなのかはわからない。
しばらく開店しても誰も客が来ないでいたら、一人の男性が寄ってきて、販売しているダガーを見てくれて、観察し、切れるかとか、重さとかを触って試しているから、購入してくれるのを期待してみる。
男性から、
「店主さん、このダガーは珍しいね。しかも価格も安い。いいのかい、こんな安くて?」
「はい、この価格で販売しています」
「購入するよ」
「ありがとうございます」
やった!
初めてのダガーの販売に成功で、俺とソフィアはニコッと笑顔になり、お客の男性はダガーを珍しい感じで買って帰っていき、服装から冒険者か、何かしらの戦闘が目的だろうと思う。
「売れましたよタイチ様!」
「売れたな。良かった。まあ初めての出店だし、一本でも売れればいいよ」
「おめでとうタイチ、ソフィア。今のは冒険者だな。服装でわかる。タイチのダガーを気に入っていた」
「俺のダガーは町の武器と違うのかな?」
「うん、私が見ても違うとわかる。タイチは今まで鍛冶師をしてきたみたいだけど、武器のレベルは凄い高いよ。もっと高い値段でも売れるはず。今の客は安いなと思ったよ」
「安く売りすぎたか。売れるかわからないし、売れるならもっと高く売ってもいいかな」
「もっと売りましょう!」
冒険者をしているクロエは町で売っている武器についての知識は俺よりも豊富なので、話では安すぎるではということらしく、俺のダガーがこの町でも通用するということだし嬉しい気持ちになった。
初めて売った感想は楽しいという気持ちで、もっと売りたいなとあり、頑張ってソフィアも売り子をしているし、これから鍛冶師の工房で生産をする欲がでてきた。
俺も頑張って生産したいと。
それからもお客は来てくれて冒険者だけでなく騎士団も購入してくれた。
「町には冒険者と騎士団があり、騎士団は町が雇用していて、町の治安維持や魔物が攻めてきたら町を守るのが仕事だ。冒険者とも連携もする」
「なるほど、騎士団も戦うのだな」
騎士団の人も来てくれて、話では公務員的な職種みたいで、町に雇われて働いているらしいが、戦闘はするので冒険者と同じくお客であるのは変わらない。
「売れたんで閉店しよう。資金も入った」
「売れました。明日も売りましょう。私が売ります」
「助かるよ」
予定よりも売れたとして閉店することに、そこでクロエにも感謝をしておきたいのは、彼女がいなければ、この町にも来れなかったし、市場も知ることはなかったわけで。
「クロエにも感謝する。ありがとう」
「私はタイチの商売はどうでもいい。剣術に興味深いだけです」
「市場を去ろう。クロエは家に帰るだろう。俺とソフィアは金もできたし、宿に宿泊する」
「それでは私も一緒に宿に宿泊しよう」
「えっとなぜ?」
「なぜって、私もタイチの仲間になる。いいでしょ?」
「ええええ?」
「タイチ様の仲間に!」
「はい、タイチの剣術は初めての経験だったの。なんて言うか、心臓がドキドキしちゃう。だからタイチと一緒に行動したい」
「どうしますのタイチ様。クロエも一緒に仲間にするのですか?」
「まあ、クロエがそれでよければ俺は構わないんだけどな。じゃあ宿に宿泊しようか」
「よろしくタイチ、ソフィア」
「よろしく」
なんというか急ではあるが、予想外にもクロエが仲間になると言い出して、俺達と一緒に行動したいとなって、俺としてはクロエは冒険者の経験があり、魔物も討伐できるというから食料の確保も可能になるし、断る理由はなかったから、仲間になった。
ここで別れると思っていたので、嬉しいよりも驚きが強いが、そこで宿に宿泊をするのがいいと思うも、市場を見ているとアウトドアっぽい出店があって、見ているとテントが売っているのを発見する。
テントはアイテムボックスには入っていないアイテムで、日本でアウトドアの人がキャンプとかで使う奴だろう。
テントがあれば宿に宿泊しなくても暮らせそうな気もするし、俺は十分で、店主に値段を相談すると、少し安くしますよというから、思い切ってダガーなどを売った資金で大きめのテントを購入した。
「ありがとうございます。このテントは3人でも寝れます。使い方は簡単です」
「どうも」
3人寝れるそうなので、ちょうど良かった。
「テントを購入した。これで町の外で暮らしたい」
「へえ、面白そう。タイチ様の横に寝れる」
「テントは本来は冒険者が遠くに遠征に行く時や、ダンジョンに入って休憩するときに使うアイテム。町のすぐ外で使うことはないが、タイチが良ければ寝るには十分でしょう。私もタイチの横に寝る」
「さっそく外でテントをしようか」
ソフィアは大歓迎な感じで、テントで暮らすのは嫌ではないとし、クロエも普通の使い方とは違うが、暮らしますというから宿で宿泊するのは中止して、テント暮らしに変更となった。
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