第2話 『002 鍛冶師はロレッタ国へ行く』

『002 鍛冶師はロレッタ国へ行く』


 俺は考えたのは、鍛冶師の仕事をするということで、そのためにソフィアにも俺の自宅へと来てもらうとし、ソフィアから、


「タイチ様の自宅ともお別れです。最後です。私もすっとこの作業場で鍛冶師の仕事をしてきました。なんだか二度と使わないとなるととても悲しいわ」


「俺も悲しいさ、しかし完全にお別れじゃない」


 俺の自宅は住むのもあるが、自宅に鍛冶師の仕事をできる作業場も併設していて、魔王軍で遠征する時以外は、この作業場で鍛冶師の仕事をしていたのが、なつかしいし、記憶が俺にはある。


 鍛冶師の仕事をして剣やナイフ、盾を作成したのは俺にとっては仕事以上に俺に充実感を与えてくれたし、日本でもブラック企業での仕事で嫌な気分を忘れさせてくれた時間だった。


 ソフィアも来ていたから、悲しい顔になるのは伝わった。


「どういうことですの? だって国を出るのだし、もうこの家とも作業場ともお別れですよ」


「俺はロレッタ国へ行っても鍛冶師の仕事をする」


「ええ! 本当ですか。また鍛冶師の仕事をすると。私も手伝います!」


「ありがとう。ソフィアが今までのように手伝いしてくれるなら俺は助かる。また一緒に鍛冶をしよう」


「またビンビン体が感じてきました」


「ビンビン来なくていい」


 ソフィアはとても見習いとして優秀なのだが、この性癖には困っているものの、優秀だし助かるから、ずっと手伝いをしてもらっていた。


自宅での作業はしてきて、もうここには来ないかと思うと、しみじみする気分になるのは元は人間だからなのか、それとも魔族でもこんな感情はあるものなのかなと思う。


 最後だし時間はあるのだし、最後に自宅で鍛冶をしていくのも悪くはないかとなって、やってみたくなるから、ソフィアにも聞いてみる。


「最後に鍛冶をしてみるか?」


「作りましょう。タイチ様と鍛冶をしたいです。ダガーなんかいいですよね」


「よし、最後にダガーを作るか」


 ソフィアを誘うともちろんやりますとヤル気になってくれて、一緒にダガーを作るとなって、まずは材料の鉄などを熱する必要があり、熱するのは強力な火力がいるので、そこは俺は火魔法があるから、火魔法を使う。


 火魔法は俺が転生した時から使える魔法で助かっている魔法で、本来は戦闘用の攻撃魔法に使うのが一般的だが、俺は鍛冶にも使用していて大いに役に立っている。


 鋼材を溶かしてから形に成形すると、普通は形にするのに、大変な苦労がいるのだろうが、俺は違っていて、この成形作業は時間はかからないのだが、それは鍛冶スキルがあるからで、鍛冶スキルによって、ダガーを成形できてしまうのだ。


 いろんな作業はあるのでソフィアも俺の助手として作業をしてもらうとソフィアはいつものように、


「タイチ様の鍛冶スキルをみると、感じます、とてもソフィアは感じます」


「手を動かしてくれ」


 いつものように感じてしまうらしいソフィアであって、なぜか俺の鍛冶スキルを見ると興奮状態になるのは困っていて、それは変わらないから、最近は無視している。


 そしてダガーが完成してソフィアに見せる。


「完成したぞ」


「素晴らしいダガーです。この作業場での最後の一品です」


 最後の一品はダガーとなって、ダガーを置いた。


 もう魔族の国には俺は帰ることはないから、お別れとなるものの、まだ工具やかまどなどは必要であるから、道具類はまだお世話になる。


「国を出ても鍛冶はする」


「そうなると、ロレッタ国へ行ってからまた作業場を作ることになります」


「その点は考えた。俺にはスキルでアイテムボックスがある。収納できる物量には限界はあるけど、作業道具の一式は収納持って行きたい。だが鍛冶のかまどや冷却場なども収納できるかどうか」


「さすがにこの部屋にある全部を収納するのは無理でしょう。いくらタイチ様といえど」


 ソフィアも無理だろうと顔になり、俺も厳しいかなと思うも、できる限りアイテムボックスで持っていければ、新天地で鍛冶師の仕事を再開するのにあたって、楽に再開できるメリットがあるからで、アイテムボックスにどの程度収納できるかを試すとした。


 自分でも無理っぽいと思いつつも試してみる。


 そしてアイテムボックスにいざ、収納してみると、


「あれ、作業場の道具が消えました!」


「どうやら俺のアイテムボックスに収納できたらしい、成功だな」


 俺の予想では全部は無理だし不可能だろうと思っていたら、あんがいと全部収納に成功してしまい、部屋のかまどや冷却場が空っぽになって、ソフィアも驚いてしまうことに。


 さすがに俺も驚いたのは自分でも自分のアイテムボックスの限界は今まで知らなかったからで、でも限界はあると思うのは、作業場にある作った剣は残っていて、つまりは剣を入れる容量はもうなかったといえて、自分のアイテムボックスの容量を知れたのは良かった。


 今後のアイテムボックスを使う際に参考になるし、ある程度の容量があるとわかったのは大きいのは、新天地でも役に立つからだった。


 自宅は長らく住んでいたのでお別れは寂しい気分になってきて、でも新たな旅立ちなので、そんな気分よりも新しい生活のことを考えようと自分に言い聞かせてみる。


 いつまでも悲しい想いを持っていても仕方ないし、俺がミスって魔王様の怒りをかったわけで、自宅とは最後のお別れをして、去るとした。


 さて自宅を去り、次は本当に魔族の国を出るわけだが、ひとつ問題があったのを感じていて、それは俺にはとても重要な問題であり、絶対に避けられない問題なのだが、それは俺の姿であって、魔族特有の人族から見たら確実に俺が魔族だと判定できる特徴を持っている点であった。


 つまりはこのままの姿だと、新天地のロレッタ国へ行っても速攻で魔族だと判定され、そのまま敵だと認識されるのがオチだということで、その点をクリアしないと引っ越しした瞬間に俺は人族に殺される運命にある。


 なぜなら魔族は人族にとっては最悪な敵であって、絶対に仲がよくなることはないし、殺すのが最も簡単な方法だろうから、俺とソフィアは即座に死ぬことになる。


 俺が人族なら同じように魔族を殺すだろうし、それくらいに人族と魔族は争いが続いていて、魔王軍と人族軍は互角といえる勢力と言われるから、まだまだ争いは長く続くと思う。


 魔王様の願いは人族を支配することだったから、俺はそのために必死に働いてきて、四天王シュテファンの軍で戦闘も参加したものだった。


 ソフィアも俺と常に一緒に行動していて、戦闘へ参加しており、戦闘力は軍でも評価されていたのは知っていて、鍛冶師の仕事がしたい理由は不思議だったのはある。


 鍛冶師の仕事よりも戦闘に特化しても何もおかしくないくらいの人材だと思うものの、なぜか俺の作業場に来ては手伝いをしてくれたから、俺の鍛冶師の評価も上がったのはソフィアの影響だと断言できるかな。


 ロレッタ国へ行く前に姿の問題をしないといけないわけで、とても重要な話であるが、実はそこは俺はクリアできる能力を持っているんで、突破できそうであった。


「ロレッタ国へ行く前に問題がある。俺とソフィアは魔族の姿だろう。変身する」


「変身ですか? お化粧でもしますか?」


「化粧じゃない。魔法がある」


 俺とソフィアに魔法である人族変身魔法を使うことにして、これは俺が転生した時からある魔法で、これまで使うこともなくて全く不要な魔法だなと思っていたのだが、ようやく役に立つ時が来た感じだ。


 実際に変身魔法をした結果はというと、


「まあ!! タイチ様が人族になりましたわ!」


「ソフィアも変身させた。人族にしか見えないよ」


「タイチ様はお似合いです。人族のタイチ様も素敵です」


「ありがとう」


「私も人族を気に入りました。悪くはないですわ」


 まあ、元の俺は人間だったわけだし、人族に変身するのは抵抗は特別にないわけで、違和感はないと思うし、ソフィアがどうなのか気になっていたが、彼女も人族の姿になって、嫌うどころか逆に気に入った感じもするから安心した。


 魔族は人族を毛嫌いするところがあるから不安だったけども、ソフィアは抵抗はなかったらしい。


 人族のソフィアは逆に可愛いくらいで、俺が思わず見てしまうとソフィアは、


「どうしたの、私の体になにか?」


「いやいや別に何でもないよ。それじゃあ、家を出て出発だ」


「はい」


 変身したソフィアをじっと見てしまうと、変な風に思われてしまい、思わず話を変える俺はいったい助手に何を期待しているんだと少し反省もする。


 それとも俺も人族の姿になったから、性欲が人間の性欲になったとかはないよなと余計なことを考えてしまう。


 たぶんソフィアが可愛い過ぎたのが原因だろうが、現在はまだ魔族の町であり、国を出るまでは人族の姿は危険なので、元の魔族の姿に戻すのは忘れないでおく。


 魔都は魔王様のいる最大な都市であり、魔族の人口も多いのが特徴で、そこは人族の国とも共通しているところで、魔都を歩くと知った魔族が俺達に挨拶をしてくるのは日常であるが、こいつらと魔族は俺が追放されたことは知らない。


 別に魔族の連中とお別れする理由も、する気もない俺は軽くいつものように挨拶だけしてすれ違うだけにして、魔都を出た。


 そうして2人で自宅から魔都を出て魔族の国とロレッタ国への国境線まで徒歩で移動する。


 移動は大変だがソフィアは俺と一緒なら苦労じゃないと言うから、そこは徒歩での移動しかないから、かなりの距離を歩くことになった。


 魔族の国はいっても領土は広いし、ロレッタ国とは隣接しているんで、その国境線まで歩くのが最初の試練だった。


 国境線までくれば、ほとんど魔族に発見されることもないし、逆に人族がいる領土に入ることになるんで、ここで例の人族へと変身魔法で姿も変身させる。


 ロレッタ国は俺は初めて来るのは、今までは人族の国には魔王軍遠征で行っているものの、別の国だったから、実質は初めてのロレッタ国へ入国となる。


 地図は持っているんで、国境線までは迷うことなく来れたのいいとして、ついにロレッタ国へと。


 俺はこれからは魔族だが、姿は人族になり、人族として偽りつつ、鍛冶スキルを活かして生きていくとなったわけで、ソフィアと歩きつつ決意をする。


 ロレッタ国に入国して試練もあるのは魔物であり、魔族の国にも魔物はいるが、人族の国にも当然出現してきて、魔物と戦いながら移動となる。


「タイチ様、ウッドベアーです!」


「剣で討伐する」


 ウッドベアーと遭遇し、魔物でも熊に似た魔物で、体は人よりも遥かに巨体を持っているのが、俺に襲い掛かるので戦闘になって、俺は剣を振るうと、ウッドベアーを切り裂いた。


「お見事です」


「ここらは魔物が多いな」


 ウッドベアーを討伐に成功し、移動する際に貴重な食料として火魔法で料理して食するとし、ソフィアと一緒に食べる。


 ソフィアは生まれた時から魔族だし、魔物を食べるのに何も抵抗はなくて、むしろ俺は転生した時は食べるのが一番苦労していて、魔物を食べる習慣は日本にはないから、抵抗があったが、時間とともに慣れてきて、今では焼けば肉は食べられる。


 獣の肉はいいがトカゲや虫などはさすがに食欲は起きないから、獣の魔物だけを狩って食用にするのが一番いい。


 特に昆虫類は苦手であるが魔族は気にしないで食べることもあるから、俺はそこは人間っぽい部分が残っているんだなと思う時だ。


 食料は移動しつつ狩っていき、食べるので問題はなかったのは、俺とソフィアは四天王シュテファンの軍に所属していたから、そこでは戦闘はしていたし、多少の強い魔物と遭遇しても、死ぬことはない。


 その点は戦闘経験を積んだのは役に立っている。

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