白河紬には近づくな

自宅厨

プロローグ



 この学校には、関わっちゃいけない人間ってのが、何人かいる。

 トラブルメーカーとか、陽キャの帝王とか、教師泣かせの問題児とか。

 そしてもう一つ。――やたらと綺麗な人間も、だ。


 白河紬(しらかわ・つむぎ)は、まさにそれだった。


 派手な格好をしてるわけでも、誰かと騒いでるわけでもない。むしろ、いつも静かにしてる方だ。

 でも、誰が見ても一瞬で目を奪われる。背筋は真っ直ぐで、黒髪はよく手入れされていて、目が合うとちょっとだけ笑う。

 だからこそ、関わりたくなかった。

 そんな人と話してたら、周りが勝手に騒ぐに決まってる。余計な噂だの、嫉妬だの、めんどくさいことが山ほどついてくる。


 俺は、静かにしていたいだけなんだ。


 それなのに、あの日の放課後――

 校舎裏のベンチで本を読んでいた俺の前に、彼女は立っていた。


「――ねえ、君、名前なんていうの?」


 それが、全部の始まりだった。

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