あーちゃんの論理学

蒸気研究所

第1話 早まった一般化

よく晴れた日曜日の朝。

あーちゃんは、お父さんとお母さんといっしょに、近くの公園をお散歩しています。


「わあ、見て! ワンちゃんがいっぱいだ!」

芝生の上には、たくさんの犬たちが、気持ちよさそうにお散歩しています。

犬が大好きなあーちゃんは、大はしゃぎです。


「みんな犬を飼ってるんだね。うちも飼おうか?」

お父さんが笑って言いました。


それを聞いたあーちゃんは、ちょっと首をかしげました。

「それって本当? みんな犬を飼ってるの?」


「え?」


「だって、みーちゃんも、たっくんも、犬を見て泣いてたよ。犬が苦手な人も、けっこういるんじゃないかな」


お父さんとお母さんは、思わず顔を見合わせました。


あーちゃんはしばらく考えてから、ゆっくりと言いました。

「公園は、犬の散歩にぴったりの場所だもん。犬を飼ってる人が集まりやすいだけじゃないかな」


その言葉に、お母さんが感心したようにうなずきます。

「なるほどね。じゃあ、こう聞いてみよう。どうして公園には犬が多いのかな?」


あーちゃんは、自分の考えに自信がついたのか、胸を張って答えました。

「犬を飼ってる人が、よく来る場所だからだよ!」


すると、お母さんがにっこり笑って言いました。

「すごいじゃない、あーちゃん。“早まった一般化”っていう言葉、知ってる?」


「はやまった……いっぱんか?」


「うん。目にしたことや、少しの経験だけで『みんながそうだ』って思いこんじゃうこと。さっきのお父さんみたいにね」


お父さんは、ちょっと恥ずかしそうに頭をかきました。

「たしかに、公園だけ見て“みんな犬を飼ってる”って言うのは、早まった一般化かもしれないな」


そのとき、あーちゃんが思い出したように言いました。

「じゃあさ、『みんなあのおもちゃ持ってる! だから買って!』って、ぼくが言ったときも……」


お母さんがくすくす笑います。

「それも、早まった一般化かもね」


「でもね、お父さん!」

あーちゃんは勢いよく振り向いて、お父さんをじっと見つめます。

「たとえ“はやまったいっぱんか”でも、買ってくれるとうれしいな!」


あーちゃんのキラキラ目線に、お父さんぐらり。

「うっ……論理では……否定できない……!」

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