第十話 恋歌
懐かしい声が耳に入り、その方向に目をやると高校時代の自分を支えてくれていたマネージャーだった立花がいた。
「元気にしてる?」と優しくもあり、どこか心配そうなトーンで彼女は俺に問いかけてくる。その声色を聞くと当時の記憶が次第によみがえってきて、同時に隼との思い出もよみがえる。我ながら女々しい男だとつくづく思う。過ぎたことを過ぎたと割り切れずに、過去の思い出に執着する。そんなことが最近特に恥ずかしくなってきていた。心の中でぶつぶつ言っていると、
「探してたよ。隼。また三人で遊びたいねって。」
「そうか。」
「そうかってなによ。前から言いたかったけど、なんであの時に逃げたの!大体さ、悪いのは自分でしょ?それなのに私たちが悪いみたいになってさ。おかしいよ。」
「ごめん。」
何も言えなかった。自分勝手に人を振り回してきた結果、大切にしていた人に怒られてしまった。
「もういっかい三人ではなそーよ。今なら話せるよ。きっと。待ってね、隼に連絡するから。」
「それはやめよう。」
といったのは、涙目になっていた明音だった。
「それはやめよう。まずは落ち着いて徹と話すべきじゃないかな。焦ると大事なことの順序がわからなくなるよ。」
「あなた誰ですか。この話に首突っ込まないでくれます?そもそもそんな見た目の人と絡んでるから徹がおかしくなるんですよ。」
「そうかもしれないけど、一旦話しましょ?ほら徹の気持ちだってあるしさ。」
明音が言ったことに聞く耳を持たずに立花はスマホをタップしていた。自分の気持ちは自分がよくわかる。いまアイツと会ったところで何も思いを伝えられないのが現実だと。
「...こう。」
「え?」
「行こう!!」
と明音は言い、
「え、は!?ちょ待ちなさいよ!」
そんな立花の言葉から逃げるように俺たちは車に乗り込み、まだ深くはない夜の道を駆け抜けていった。
蜷局を巻いていても @imimnasi
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