第四話 「何なのそれ」
「なんですか。いきなり改まった感じでこんなところに連れてきて」
「実は、、、」
そういう彼女は依然顔色を変えず、低いトーンで俺に話してくる。なんだなんだと自分も次第に気になってきた。もどかしい気持ちになっていると
「推しの俳優にちょい似ててさ。ぷっ。」
あーはいはい。推しね。いいね推し。とは当然ならなかった。
「な、何ですかそれ!人をからかわないでください!」
「ごめんごめん。なんだか知りたそうにしている君がかわいくてさ。ほんのちょっとだましたくなったんだよね。」
酒に酔った勢いと逃げだしたアドレナリンが相まって感情があふれたらしい。それが涙になって表れたという。どうやら最初に話しかけたのもそれがきっかけらしく、声など聞こえなかったらしい。しかし、どうやって声が聞こえないのに怒っていたとわかったんだろうと疑問に思うところもあった。
「ていうか何?そのアクセサリー」
「これは高校時代にマネージャーからもらったもので。」
「ふーん」
と彼女は言ったがまたしても顔色が変わった。その顔色はさっきとは違って少し憐れむような、近所の子供をなだめるような、いわゆる 明音顔 をしていた。
「剣道は好きなの?前言っていたみたいに嫌なことではないの?」
「なんだよ。いきなり」
すこし荒い口調で話してしまった。驚いた顔で
「ごめん。剣道の話をする徹は少し悲しい顔をするからさ。興味があって聞いちゃった。」
「そうですか」
そこからというものの、気まずい空間が少しの間流れた。
もう昼休みも終わるだろうとするときに彼女は口を開いた。
「ここ少しの間。そう。あの出来事があったあと。わたしちょっと考えててね。んで、どうしようかなーいおうかなーって。ずっと考えてたの。」
口を開いたと思えばいきなり何を言い出すのか。彼女は本当に分からないひとだった。
「んでね、さっきごまかしたようにいったけどあれ嘘でさ。」
「あれって推しの話ですか?」
「えそうそう。よくわかったね」
「わかりますよ。明音さん嘘をつくとき、必ず首をさすりますもん。」
「えーなんかやだ。」
「でなんですか。まさか付き合ってとかい,,,」
冗談半分でいったおれの言葉を遮るように彼女は続けた。
「私、人の人生をのぞくことができるの。」
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