第八節:「台地の一日――汗と知恵と、夢の鼓動」

### ――朝礼と技師のまなざし


夜明けの冷気が残る中、作業員と技師たちが中央ヤードに円をつくる。

主任技師カルロスが鋭い声で朝の点呼をとる。

「本日も“ゼロ災”を誓う。各班、注意すべき作業は?」

日本の若手技師・西山は心の中で深呼吸する。

(この現場で、命を守る一手を決めるのは自分たちだ……)

安全祈願の旗が風にはためき、全員が無言で頭を垂れる。


**English:**

The crew gathered in the blue chill, hats in hand, as the safety flag fluttered above. Each heart repeated the silent vow: let today return us all unharmed.


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### ――鉄骨の朝、危機一髪


午前八時。蒸気クレーンが巨大な鉄梁を吊り上げている。

見習い作業員ピエールが、僅かな油漏れを見逃す。

「おい、ピエール、ボルトの緩みを見ろ!」

声に気づくや否や、梁がわずかに揺れ、クレーンオペレーターのイヴァンがとっさに緊急停止を叫ぶ。

「止めろ! 全員離れろ!」

鉄梁がゆっくりと地面に着地した時、現場に安堵のため息が広がる。


ピエールは肩を落とし、額の汗を拭う。

西山がそっと隣に立つ。

「ミスは誰にでもある。でも、次は必ず声を上げること。それが“黒川の掟”さ。」


**English:**

A single bolt missed—disaster averted by a shout. Lessons learned in a heartbeat.


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### ――現場の知恵と工夫


昼前、資材班のリーダー、リディアが急ぎ足で工具置き場に駆け込む。

「指定の規格ピンが足りません!」

ベテラン職人・村井は眉一つ動かさず、手持ちの鋼材を計り、手早くヤスリで仕上げる。

「自分たちで作れない部品は無い。それが現場ってもんだ。」


即席のピンが検査を通ると、皆から拍手が起こる。

リディアは胸を張り、

「どの国の手でも、工夫と誇りは同じです。」


**English:**

A missing part, a new solution—steel and pride, shaped by many hands.


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### ――昼休みの語らいと“黒川理念”


昼休み、ヤードの隅で各国の作業員がパンや弁当を囲みながら談笑する。

西山が弁当箱を開き、ピエールがフランスパンをちぎって仲間に分ける。

リディアがポケットから取り出したメモには、黒川真秀の言葉――

「誰かのために叩く一打が、未来の礎になる」

と書かれていた。


メアリー・トンプソンが、仲間たちに尋ねる。

「なぜ、あなたはこんな遠い地で働くの?」

村井は鉄粉まみれの手で答える。

「“この先に誰かが歩く道を作る”――それが俺たちの誇りさ。」


**English:**

Lunch under the open sky.

“We build not for ourselves, but for the road ahead.”


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### ――夕暮れの余韻


陽が傾くと、鉄骨の影が長く伸びる。

昼の事故をきっかけに、西山は現場ノートに“再点検リスト”を書き足す。

ピエールはそっと工具を磨き、リディアは余った部材で新しい改良案を設計図に書き込む。


作業が終わり、皆で振り返る現場には、まだ汗と油と希望の匂いが残っていた。

一日一日が、確かに“未来”につながっていると、誰もが実感していた。


**English:**

Evening fell, but the spirit of the day lingered—hope, sweat, and silent pride, hammered into every beam.


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