陰力のシャドーホーク使い。~幼馴染を助けるため天使どもを血みどろの斬首刑にします~
たたろう
第1話 始まりの手紙
「何で!?何でなの。答えて!?」
悲痛ともいえる声で彼女は、空高く飛んで天使の翼を背中に六枚生やした幼馴染の少女に訴えかける。
そんな言葉に応えるように少女は宙に浮き二本に分かれた大きな裁ちばさみを、縦横無尽に操り攻撃してくる。
「くっ……!」
まるで意思があるようにひとりでに動く鋭い先端をした二本の裁ちばさみを避け回避する。翼を持った少女は下で交戦している彼女に向かって悲しそうな視線を送り言う。
「ごめんね。でも、これも全てあなたの為だから」
そう言うと少女は手を彼女の方に向け前に出し、握る。瞬間、二本の裁ちばさみの先端から黄色の光線が出て彼女の右肩と左腹部を貫く。
「がぁ!……っ」
尋常じゃない激痛が彼女を襲い、地面に跪かせる。腹部から滝のように流れてくる血を手で押さえ飛びかける意識を必死に保ち、彼女は極彩色の空を見上げる。
怪我を負った彼女を見て少女は攻撃を止める。そして下から睨んでくる彼女を後にその場から立ち去ろうとした瞬間――
「絶対にぶん殴る!。殴って、殴って、殴って……、絶対つれて帰る。はぁ、はぁ、そしたらもう一回、二人であの場所に行くんだ……っ!」
その言葉と共に彼女の意識は冷たい闇の底に沈んで行った――。
父親が死んだ。死因は不明、警察は真相究明に全力を注ぐと言っていたがたぶん無理だろう。
警察の見解は他殺と睨んでいるらしいが、まぁこの手の難事件は何十年と過ぎてから分かるのが結末だ。そのころには何もかも手遅れになっている。
二人で暮らしていた賃貸マンションもそこまで広くないのに、今はやたら広く感じる。
あっと何かを思い出したように黒影レイナは立ち上がる。
もう外は暗く、夜の闇が部屋に入って来て辺りがよく見えない。電気を付ければいいのだがそんな気力でさえ起きない。
「遺品整理の続きしなきゃ……」
暗くてよく見えない廊下を長年の感覚でレイナは進んで行く。ふと、開けっ放しの郵便ポストに入っていたノートを見て休んでいた学校の事を思う。
高校を休んでどのくらい経っただろうか、一週間?一ヶ月?、もう分からない。何回か女学院に通っている幼馴染が心配して来たのは覚えているが、混乱していたのかイラついていたのか、あまりにも何回も家に来てインターホンを鳴らすものだから、初めの方は無視していたが最終的にはドア越しに怒鳴って追い払ってしまった。ひどい事をした。人として最低な行為だ。だがもう会う事は多分ない、なぜなら親戚の家にもうすぐ引っ越すのだから。だから謝る必要もない。
外は大粒の雨が降り窓を強く叩く、さっきスマホを通知で知ったがどうやら台風が今着ているらしい。
父の匂いが残る部屋を開け明かりをつけ入ると、フラッシュバックのように父との何気ない日常があふれてくる。同時に雨に負けないくらいの大粒の涙も。
「……うっうっ……」
仕事熱心で娘思いな父親、母親はレイナが生まれて直ぐ他界している。だからレイナの父親は男一人でレイナを育てて来た。母が居ないぶんまでしっかりと愛情を注いで。
涙はもう葬式の時に流しきったはずなのに、未だレイナ涙は頬を伝う。
少ししまだ涙目のレイナは遺品整理の続きを始める。部屋の中は父親の遺品が入った段ボールがいっぱいに積まれ置いてある。昼間に来た親戚が手伝ってくれたのだ。
部屋の奥に進みクローゼットを置ける。いっぱいかけてあった服は全部捨ててもう無い、後はクローゼット中にあるタンスを整理するだけだ。レイナは下段から上段へとタンスをあけ整理する。
「ん、これは?」
整理している最中にレイナは服の隙間に挟んであった手紙を見つける。端に金色の模様を施し、封を閉じた所に蠟が使われ赤色の花柄模様が付いている手紙だ。随分と真新しい手紙を見てレイナは遺言書と思い開ける。何が書いてあるのか読んでみればそれは遺書では無かった。内容を見る限り誰かとやり取りしている内容だった。
字から見て、たぶん男なのだろうと、手紙を読んでいると最後の行に衝撃的な言葉が綴られていた。その言葉はこう書かれていた(あなたは必ず殺されるだろう)と。意味が分からなかった。最初はただの世間話なのに、なぜ最後だけこんな意味不明な言葉なのだろう。
「なにこれ……」
警察が言っていた他殺、あながち間違えではないのかもしれない。レイナは手紙の封を見てそこに書かれてある住所を目を通し、固唾を飲み思う。ここに行けば何か真相が分かるかもしれないと……
作業を中断しレイナは白い半そでとジーパンを身に着け動きやすい格好をし、何かってはいけないと思い護身用の催涙スプレーと財布をポケットに入れ、帽子をかぶり傘を持って家を出ていく。
レイナは後で後悔したこんな事になるなら家にいて遺品整理の続きをすればよかったと……。
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