蘇りし古代の王 その4
◆◆
本来、このゲームの基本ルールで定められた勝敗は三つ。
ライフポイントがゼロになる、デッキからカードを引けなくなる、あるいは何かしらの不正行為によるジャッジキル。
だが、他にルールにない、特別な勝ち方が存在する。それが特殊勝利。カードによって、ルールに新しい勝利の条件を追加する。いうなれば、たった一枚のカードによって、敵味方ともに尊重すべき基本ルールが好き勝手に変化させられてしまうともいえる。
そう。変化だ。
そして邪神連中は基本的におおらかだが、自分の権限の範囲となるとさすがにいつまでも鷹揚とはいかない。自らの司る領域を侵されるのを許容するようでは、自己否定も同じ。越えてはいけない一線を越えたならば、容赦なく排除にかかる。
だから、最初からこの展開は決まっていたことだった。
「私は。手札から雜�ャ。蜈�坤縲繧、繧キ繝・繝ゥ繝サ繧ー繝ゥ繝ウ繝�の効果を発動」
『? 何を言って……?!』
亡者どもに組み敷かれる私の体。その身にまとうドレスの裾が、袖が、ふわりと長く伸びていく。動きやすく装飾控えめなフォーマルなドレスから、まるで舞台で踊るお姫様のようなプリンセスドレスに。その過程で私の手足を押さえていた怪異達の手足が、青く光る布に覆われていく。
『ギャアッ!』
『ア、 アツゥ……イ!』
直後、まるで熱湯に触れたかのように、怪異達は自ら手を放して私から距離をとった。青い布に触れた彼らの指が、ぼろぼろと黒く変色して朽ちていく。
光源もないのに青白くきらめくドレスを翻し、私は手にしたカードを高々と掲げた。金枠の最上級モンスターカード。しかし、そこに書かれているのは一見すると意味のない、訳のわからない単語の羅列だ。
そう。私の背後で光を放つ、全知収集の石板、それに刻まれた文字と同じく。
『なんだ、貴様、何を……うお!?』
玄室が大きく揺れる。地震のように激しい振動に、骸骨将官がその場で膝をつく。振動はますます大きくなる一方で、石の壁や床に亀裂が入り、ガラガラと崩れ始める。その向こうからは、青く輝く光が差し込んでいた。
『ギャ、ギャアア!』
『何が……起きてる……ウガアア!』
崩壊する亀裂に怪異が飲み込まれていく。ついに崩壊は臨界に達し、半ばでへし折れるように玄室そのものが砕け散る。その砕けた壁の向こうに見えるのは青く輝く未知の空間。
地下にあるはずの玄室は今や、得体の知れない空間を漂流していた。
「ふふ」
私はドレスを翻し、頭上を漂う残骸を見上げた。そこではかろうじて崩壊に飲み込まれなかった骸骨将官が、茫然とした顔で私を見上げている。
そう。ここでは重力も引力もない。すべてが、どこともしれない空間に漂っている。ここに秩序はない、法則はない。すべてが思いのままに形を変える、異形の空間。只人が踏み入れば正気を失う、魔の世界。
『変化』の領域である。
「“全知収集の石板”に魔石カウンターが5つ以上存在するとき、私が特殊勝利条件によって敗北した場合、このカードを手札から特殊召喚し、その敗北を無効化する」
『特殊勝利を無効化するモンスターカードだと!?』
見上げる骸骨将官が狼狽も露わに叫ぶ。彼からすれば、そんなものの存在は信じられないのだろう。でも、そうおかしな話ではないだろう? ルール外の方法で特殊勝利するカードが存在するなら、それを無効化するカードだってあっていいはずだ。
だって結局、そのどちらも一枚のカードに過ぎないのだから。
ずぞぞ、と私の背後で蠢く気配がある。それは漂う瓦礫の裏を這いまわり、私の右手から体をぬっと表して、犬のように顔を寄せてきた。私はそれを、長く伸びた袖で優しく撫でてやる。
それは、一匹の奇怪な合成獣だった。哺乳類、爬虫類、魚類、鳥類を問わずごちゃごちゃにくっつけて、それをさらに物理的にひねって捩じったら、このような怪物になるのだろうか。手足はてんでばらばらに無秩序に体から生え、目も牙も口も耳も角も嘴も、その体表に無秩序に生えそろっている。それでいて、それらは全体的に螺旋を描くように突き出していて、全体でみると奇妙な調和を保っていた。
これこそが、超次元獣 イシュラ・グランナ。『変化』デッキに加わった、新たなる最上級悪魔である。
私と戯れる悪魔を見て、骸骨将官が怯えたようにたたらを踏んだ。だが、後ずさる足は一歩で止まる。戦意で士気を立て直し、古代の将軍は高らかに声を張り上げた。
『化け物め……! だ、だが、モンスターカードであった事が災いしたな! 私はトリックカード“生贄の針穴”を発動する! このカードは場に存在する、もともとの持ち主が私であるモンスターカードを破壊することで、相手のモンスターカードの召喚を無効化し、破壊する!!』
ああ、やっぱ相手の場に高ステータストークンを奪われたときの対策も兼ねたトリックカードを伏せていたのか。いいね、基本ステータスに劣るトークン達をいくら並べても、鮮血大公ドラクシスみたいなのを呼び出されたら一網打尽だ。対策はしておくに越したことはない。
だけど。
「何かしら? 私には、そんなカードは見えないのだけれど」
『は? 何を。この期に及んで命乞いを……』
「だって。そのカードになんて書いてあるか、貴方には読めるの?」
あざ笑うように指さされて、骸骨将官は己の手にする粘土板に目を向ける。瞬間、うつろな炎に過ぎない彼の眼光が、はっきりと見開かれたのが私にも手に取るように分かった。
『な、な、なんだこれは!?』
動揺のあまりカードを取り落とす骸骨。足場となっている瓦礫に落ちてぐしゃりとつぶれた粘土板の表面には、得体の知れない言葉がつらつらと書き綴られていた。
まるで、文字化けしたように。
『き、貴様、何をした!?』
「私は何もしていないわ。ただ、この空間がそういうものである、というだけ。ここはどこでもないしいつでもない場所。現実の言葉なんて、捻じ曲がって意味など通じない、ただそれだけの事よ」
『だ、だが、貴様のモンスターは……はっ!?』
指摘しようとした骸骨が、今度こそ2,3歩、怯えたように後ずさる。そう、彼自身、言っていたことだ。
先ほど、私の読んだモンスターの名は、得体の知れないノイズのような発音だった。だけど、今ここにおいては、その名は正しく読めるし、正しく発音できる。
それは何故か?
この悪魔が、もともとこの世界に存在していたからだ。
傍らでクルクルとうなりを上げる悪魔に同調するように、ドレスの裾が青白くきらめいた。こうしてみると、クラゲみたいで結構きれいだ。揺れる布の端に、じゃれるように悪魔の触手がゆらゆらと絡みつく。
『ば……馬鹿な、女、貴様、まさか……まさか!!』
「超次元獣 イシュラ・グランナの効果発動。このカードが自身の効果で特殊召喚されたとき、“全知収集の石板”を除くフィールドのカードをすべてデッキに戻す。そして相手プレイヤーは、デッキに戻したモンスターの数だけ、新たにデッキからモンスターカードを場にだすことができる」
クルルル、とうなりをあげてイシュラ・グランナが身を起こす。その体を中心に空間が渦巻き、青い竜巻がフィールドを飲み込んでいく。場のデカサソリもサソリトークンも、伏せられた罠も、第一から第四の石板もすべて、その波に攫われて消えていく。
後には、ただの無だけが残された。
つまり、詰み状態をリセットするのがイシュラ・グランナの特殊能力だ。あの手のカードが存在する限り効果を発揮し続けるのか、一度だけなのかについては解釈がややこしいからね、全部戻してすっきりしようという訳だ。もちろん、さすがにこれだけだとあまりにも理不尽なので、ダイレクトアタックされないように相手には戦力を再展開する権利が与えられている。悪魔のくせに、ゲームバランスについてちょっとは考慮しているというのはなんだか律儀で面白い。
まあ。
そもそも不義理をしていた相手に通す義理もないのだけど。
「どうぞ、モンスターをお出しなさいな。あなたの場に、デッキに戻すモンスターカードがあれば、の話ですけど」
『む、むぅうう!』
呻く骸骨は、一向に壁を並べる気配がない。まあ、そりゃそうだろうね。彼の基本戦術は、トリックカード中心だ。ゆえに、事故率を下げるためにモンスターカードを減らし、カード効果によって呼び出されるトークンで補っている。
その戦術自体は悪くはない。
だが、勝負を急ぐあまり、相手を甚振りたいが為だけに、あんな闇の魔法カードを加えてしまった。自らの欲望で、デッキの純度を下げてしまった。
その結果が、これだ。
トークンは、あくまで一時的に場に作り出された実体のない存在。場を離れれば消滅するしかなく、当然、デッキに戻ることもない。仮に彼のデッキにモンスターが存在していても、デッキに戻っていない以上、呼び出すことはできない。
地道にロック戦術を展開したまま、私のライフを地道に削ればよかったのに。それであれば私には対抗策はなく、場合によっては勝利もあり得た。イシュラ・グランナも召喚されることなく、手札の中で腐れていただろう。
だが、闇のカードの力により無残な死を与えようと思いあがった結果がこれだ。特殊召喚に必要な最後の魔石カウンターを、自分で満たして召喚条件を整えたのは、まさに因果応報、天罰覿面というほかはない。まあ、私の力の源は邪神なんだけど。
「……何もしないなら、私のターン。ドロー」
天秤アーティファクトも消し飛ばされてしまった以上、ドローロックは停止している。私は一枚のカードをデッキトップから引き、しかしその中身を確認することなく、頭上の骸骨将官を“見下ろした”。
もう、勝負はついている。
「バトル。私は、イシュラ・グランナで相手プレイヤーにダイレクトアタック!」
のそり、と私の横で動き出した獣が首をもたげる。その全身が、内部に満ちるエネルギーで不気味に脈動し、ぶくぶくと膨れ上がる。
「私の血肉をむさぼるというなら、貴様は骨だな。犬の餌にちょうど良い」
『あ、あ……悪魔め! 呪われろ! 砂漠の呪縛が、いつか貴様を冥府の底につれていく!』
「むしろそうしてくれれば有難いんだがね。ああ、闇のカードの代償を恐れることはないぞ。この世界に、あるのは未来と過去だけ。今は、決して追いつくことはない。放て……ブルー・ヴォルテックス」
イシュラ・グランナの全身から放出された青いレーザーが、雨のように骸骨将官へと降り注ぐ。その猛攻は彼の全身を一瞬にして粉砕し、瓦礫を破砕し、すべてを粉みじんにして超次元へとばら撒いていく。
青い宇宙のはるか彼方に落ちていく骸骨を見送って、私は踵をかえして背を向けた。
「さようなら。永遠の中を、気が済むまで漂い続けるといい」
かつかつ、と歩く私の前にすっと回り込んだイシュラ・グランナが、空間に青く輝く光のゲートを作り出す。この先は、現実空間につながっているはずだ。
急いで戻らなければ。ダン少年が、無茶をしていなければいいが。
しゅるしゅると音を立てて元に戻るドレスの裾を翻し、私は渦巻く光のゲートへ飛び込んだ。
「ここは……」
光のゲートを越えるなり、低すぎる冷房の寒波が肌を震え上がらせた。無事に戻れたことに安堵しながら、周囲を見渡して立ち位置を確認する。
どうやらここは、展示室の高所にある細い通路、キャットウォークのような場所だった。体育館とかの壁際にあるアレである。なんだかずいぶんと位置がずれてしまった。
だが状況を確認するにはちょうどいい。
私は足を踏み外さないように注意して、狭い足場から下を覗き込んだ。
「居た……!」
そこでは今まさに、二人のデュエリストによる決戦が行われているところだった。一人はダン少年。もう一人は……なんだ、あれ。浅黒い肌の黒髪のイケメン? おかしい、話の流れ的には戦っているのはファラオのはず。黄金仮面をまとったミイラ男が、なんでイケイケな感じのムキムキイケメンになっているんだ?
あとその二人の間にたってる小太りの紳士、あれってもしかしてレフェリーやってんの? 何してるのあのおじいさん。勇気あるなあ。
「いや、まあ、いいけど別に。あれかな、デュエル始まったらなんかこうパワーに満ちて生前の姿に戻った、とかかな……」
ぶんぶん、と頭を振って気持ちを切り替える。そんなことは今、問題ではない。
状況を確認する。ファラオとおぼしきデュエリストの場には、巨大な黄金にきらめくスフィンクスが存在している。全身をきらびやかな黄金の毛に覆われているが、その顔は闇に閉ざされて真っ黒だ。
貌の無いスフィンクス。
ステータスに目を向けた私は、その数値に目をむいた。四大デッキの中で単純なパワーであれば最強のドラクシス、その倍以上。見たこともないステータスだ。間違いなく、あれがファラオの切り札で間違いない。
対して、ダン少年の場にはデーモン・スレイヤーがただ一人。手にはバルザイソード、背中には鱗ある翼を装備しているが、何かの効果で戦闘破壊を免れたばかりなのか、その全身にはヒビが入り膝をついている。だが、肩で息をしながらもその強い眼光は、主人ともども弱まってはいない。
『ダン少年、ファラオの攻撃に耐えきりました! ですが、ステータスの差は圧倒的! さらにファラオの使う最上級モンスター“アブーアル=ハウル”は相手モンスターを戦闘破壊したとき、相手のライフを減らす効果を持っています! このままでは、ダン少年に勝ち目はありません! 次のドローに、すべてがかかっています!』
「がんばれ、ダン!!」
「少年、がんばれー!!」
レフェリーのあくまで中立的な解説に、閉じ込められていた人々が声援を送る。その瞳には、恐怖はあれど絶望はない。皆が、ファラオに立ち向かうダン少年の背中を応援している。
絶望の中にあって、人に希望を見せるもの。誰にでもできることではない。私は状況把握のためもあり、しばし手出しせず少年を見守ることとした。
「俺のターン、ドロー!」
カードを引いたダン少年が、そのテキストを検める。その瞳が、強い戦意を帯びて燃え上がったように見えた。
その炎を受けて、ファラオが腕を振り、胸を張って意気揚々と受けて立つ。意外なことに、その声色には喜びの色すらあった。
「……来るか、勇者よ! この絶体絶命の状況で、民草の声を受けて! 見事このファラオに剣を突き立てて見せるがいい!」
「……俺は、手札から銃神コキュートスを特殊召喚! このモンスターは上級モンスターだけど、俺の場にデーモン・スレイヤーがいる時、手札から特殊召喚できる!」
ダン少年の場に、突如として冷気が吹き荒れる。それは瞬く間に氷の柱となり、バキバキと音を立てて一匹の騎馬へと姿を変えた。複数の足を持つ異形の嘶きが、凍える場の温度をさらに下げていく。
「さらに、場に銃神コキュートスがいる時、手札から銃神インフェルノを特殊召喚できる!」
続けて、天井からすさまじい熱波が降り注いだ。日差しを束ねたような光の柱が薄暗い展示室に降り注ぎ、その中から一匹の鳥が翼を翻して姿を現す。
こちらも上級モンスターだ。
だが、いくらモンスターを並べたところで、あの貌無きスフィンクスの前では無意味だ。いったい何をする気なのか、私はわくわくしながら事の成り行きを見守った。
「いくぞ! 銃神の効果発動! 俺の場にデーモン・スレイヤーが存在する時、銃神達を破邪の聖具として装備させる事ができる! 合体だ!」
《いくぜ、二人とも! 神銃形態!!》
氷の騎馬が高く嘶き、地を走る冷気と化す。天を舞う鳳凰は、雄叫びと共に炎の柱と化した。大地から噴き出す冷気と降り注ぐ熱波が激突、融合し、そこに生まれるのは一つの巨大な銃身。赤と青、二色のバレルで構成された、レールガンを思わせる巨大な大砲……その後部にデーモン・スレイヤーがドッキングし、体全体で重たそうに抱え上げる。二つのレールが展開し、内部からコイル状の第二バレルがせり出し、発射形態に移行する。
その照準は、巨大なスフィンクス!
「デーモン・スレイヤー《神銃形態》は、このターンのみステータスが三倍になる!!」
「何だと!?」
驚愕するファラオ。この瞬間、デーモン・スレイヤーのステータスはあのスフィンクスを上回った。
「バトル! デーモン・スレイヤーで、“アブーアル=ハウル”へ攻撃!!」
《世界を灼く大いなる炎よ! 汝らの愛は、子らの明日には不要なり! 疾く闇へ還るがいい!! アブソリュート・デュオ……バスター!!!》
業、と太陽が落ちてきたと錯覚するほどの閃光が、合体砲から放たれる。それを正面から受けたスフィンクスの全身が光に飲み込まれ、その中で少しずつ溶けて消滅していく。
「我が父が……!!」
「そして、“鱗ある翼”を装備したデーモン・スレイヤーの効果発動! 相手モンスターを戦闘破壊したとき、続けて相手プレイヤーに連続攻撃ができる!!」
「う、うぉおおおおお!?」
スフィンクスを粉砕した閃光が、その背後に立つファラオを飲み込む。ファラオは両腕を組み、その閃光への盾とするが、苛烈な灼熱は容赦なく、その体を焼き滅ぼしていく。
『コラシス3世選手の残りライフは1! この攻撃が通れば敗北です!』
「決まった……ダン君の勝ちだ!」
「やったあ……あれ、でも、なんか耐えてる……!」
敵ながら天晴、というべきか。すべてを原子の塵へと焼き尽くす閃光の中で、それでもなおファラオは耐え忍んでいた。それは、自らを神と謳う傲慢なる暴君の矜持か、それとも、あるいは……。
「む、むぅ……! まだだ、まだ、私は滅びぬ! 滅ぼされる訳には……!!」
消滅に抗うファラオ。半身を炭化されながらも耐えていたその視線が、不意に何かに気が付いたように標的を変えた。対面するダン少年の雄姿ではなく、暗がりに潜む、酷薄な影に。
そう。今ものうのうとその戦況を観察している、私に。
「き、貴様……そうか……バスカークは……。いや、しかし……この……気配は! 貴様ぁ!?」
私の生還に部下の末路を察したであろう瞳が、しかし血走ったように見開かれる。その憎悪に見開かれた視線は、私を通して、私ではない何かを見ていた。
ああ、この人には見えるのか。
私の背後に居る、連中の事が。
「そういう事かぁ!! 異教の天使め、我を謀りおったか! おのれ、このまま滅びてなるものか……! 我は、われはこの世界に君臨する……ファラ……オ……!! おぉおおおおおお……」
突然激昂し、光から抜け出そうとするファラオ。だが、彼の尽力もそこまでだった。ついに破滅の光が彼のすべてを飲み込み、灼熱の忘却の裏へと押しやる。遮るものが無くなったビームがそのまま展示室を横断して、対面の壁へと降り注ぐと、壁を貫いて大穴を開ける。
ホースの水が途切れるように、ビームが細くなって消滅する。
闇の戻ってきた展示室に、外からの陽光が優しく降り注ぎ、勝者を照らし出した。
『決着! 勝者……ダン選手!!』
「……へへ、やった」
レフェリーを務めた老紳士が静かに、しかし力強く勝敗を宣言し、ダン少年がへたり、とその場に尻もちをついた。デーモン・スレイヤーは重たそうに合体キャノンをその場で立てかけ、降り注ぐ日光を浴びながら見得を切った。
一瞬の静寂。
爆発するような歓声が、展示室を満たした。
「やれやれ」
その様子を見降ろしながら、私は降りるための階段を探すべく、その場を離れた。
★★★作者からのコメント★★★
読んでいただき、ありがとうございました!
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