Snowdrop saga
ゆきさくら
第1話
ー聖界陣営・会議室ー
「この地点を落とせれば、魔界側は不利になると…ここは現場に頑張って貰わないとな。」
「ああ、現時点で1番結果が早く出せるのがここだ。早く、相手に気づかれないように作戦を完了させないとな。」
ここで会議室のドアが開き、一人の将校が会議室に入る。
「申し上げます!第156中隊から通達あり!G地点に敵影有り、規模は1個小隊、これから交戦状態に入るとのことです。!」
「結構!どうやら勝負はついたようだな。第156中隊は中距離魔法のスペシャリスト!いくら地形が有利だろうとも人数不利に相手が魔法のプロ、犠牲は出ようとも突破は出来るはずだ。」
そう言って会議室にいた上級将校は別の議論を始めた。
ーG地点ー
「あれが魔界側の砦ね…」
部隊の先頭に立つ女性、まだ少女とも言えるかも知れない外見を持つ天使が言う。
目線の先には森の中にポツンと建っている小さな建物があった。
「大隊長、作戦はどう致しましょう。」
「そうだな…C、D部隊が先に空から魔法で攻撃し、A、B部隊は地上で待機、Aは北、Bは南だ。合図と共に素早く建物に侵入、中にいる生き残りをやれ。残る部隊も一斉に突撃せよ!」
「了解!」
そして部隊が四つに分かれまず魔界陣営の拠点に上空から魔法攻撃が降ってきた。次に南北方向から敵兵がやってくる。拠点(と言っても跡形も無くなっている)に入ってくる。そこにあったのは少しの焼け焦げた死体と、地下への階段があった。
「隊長、これは…」
「先頭は私がいく、突撃するぞ、副隊長は殿を頼む。D部隊は外の見張りを頼む。」
「承知しました。」
そうして天使達は地下室の中に入って行く。そして副隊長が入っていき、見張りが外に出ると地下室への階段は消えていった。
多くの階段を降りた先に居たのは多くの魔界兵、敵兵だ。それを見た聖界軍は武勇を示そうとそれぞれ武器を構えて戦った。悲鳴が聞こえ、血が出て皆が奮闘する中、少女、隊長は他の兵士よりも実践経験が豊富故か、地下室を不思議に思っていた。
(この地下室は宿舎…?でも、そうだとしたら食堂は何処に?部屋数が少ない。何かがおかしい。)
あたりを見回す。
(罠の可能性がある。出口、退路の確保は…!)
その時少女は出口を見つけられなかった。否、無かったのである。瞳に焦りの色が見え始める。だか今は敵陣の中、思案する時間は無く、敵に対処しながら戦うしかない。
(くそ、クソッ、この案しか無いか…別の案を考えたいものだがここに時間を費やしたら死人が増えるだけ…それに…これしかないか…)
「副隊長、少し私を守ってはくれないか。準備しなければならないことがある。」
「一体何を…!それは!」
「これが最善策だ。」
少女は魔法詠唱を始める。敵兵が攻めようとするが副隊長がそれをカバーする。そして全部隊に通達する。
「総員!防護壁を展開!衝撃に備えろ!」
「隊長!いきなり何を」
「早くしろ!」
隊長と呼ばれた少女は心を燃やし、魔法を展開した。そして、爆発が起こった。
「!?何だ!いきなり爆発が…!大隊長!皆!無事か」
「何があった!?生存者はどこにいる!」
「魔法か!それとも火薬か!?」
見張りをしていたD部隊が騒ぎ始めるが、空に立っている大隊長がそれを制す。
「大丈夫だ。皆無事だ。出口が見えなくて光魔法で天井を攻撃しただけだ。いくら私の全力と言えども光魔法は天使にはあまり効かないだろう?念の為に防護壁も展開させた。」
同じことをやったお前達も無事だろう?そう言って地下室…今となってはクレーターと呼ぶべきか、から出てきた。出てきたのは隊長と数名の隊員のみ。
「他の人達はいないのですか?」
「他の人?皆そこにいるだろう?あ…れ…?」
周りを見回すと下に敵兵に混じって見慣れた顔が血だらけになり倒れてるのが見えた。そんな姿を見て他の隊員は何が起こったか分からない、理解したくない様な顔をした。そして隊長は告げた。
「…退却だ。これ以上戦闘を継続することは出来ないが、作戦は完了した。上はよくやったと褒めてくれるだろう。」
ー魔界ー
「報告ー!あの場所のことだけど、なんとか防衛に成功したみたい!やっぱ向こうは頭が硬いねー!魔法だけしか頭に無いんだ!」
「そうか。で、"あの場所"ってどこだ。名前で言え。」
「…ここだよ」
少し不満そうな顔をしてその悪魔は地図のある地点を指差す。
「…損害状況は」
「もう何も無いよ?廃墟同然、消し炭になった。ロボット兵もね!まあ元々自爆前提のだったからいいけどね!」
「こっちが良くないんだ!はぁ…自爆前提なのも今知った。コストというものを知っているのかお前は…」
ため息をつきながら男の姿の悪魔は言う。
「まあ、今回の相手はそれなりに実力のある部隊だった。大打撃を与えただけ金星か。」
「やっぱ時代は魔法よりも化学!ロボットだよね〜」
「そうかもしれないな。で?ほかの部隊で運用している機械はどうなっているのかね?」
「…それはね〜」
「どうした?言えないのか?」
「……現場でいきなり故障して動かなくなってそれがきっかけで押されてるらしくて…でもまだ負けた訳じゃないよ!」
「本当に機械は信用できるのか…」
そうぼやきながらひとまず、ささやかな勝利に喜ぶのだった。
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