死と宇宙生物

炉扇

死と宇宙生物

「私は私を殺すことで、私の生を取り戻そうとした」


 私はそう書くことによって自殺を止めた。


 死について考えながらマンションのベランダに出るとき、夜の曇り空にぼやけて光る星を一つの頂点として、ヒマラヤ山脈をはるかに凌駕、いや、太陽すら遠く及ばないほどの山々が宇宙に浮かんでいて、この夜空にその影が浮かんでいても全くおかしくないと、私は思う。


 今後地球上で生み出されるどんなに恐ろしい生き物よりも強大な熊が、幾億もの銀河を構成要素として宇宙に暮らしていて、それが無意識に振った腕の一掻きで太陽系ごとこの地球が消え去ってしまっても全くおかしくないと、思っている。


 それと同時に、少ない街灯で不十分に照らされる夜の車通りに白装束の女が立っていて、個人的な生も死も貫く精神的な旅を共にしたあげく、一方的に夜の車通りの不十分な闇へと消えていってしまうような人生をおくってもおかしくない。


 つまり私の想像や思考の原動力として圧倒的に大きいものが死であり、終生これと付き合っていかねばならないばかりか、死ぬことで解放されるようなものでもないのだ。


 到底言葉にし足りない。代え難い恐怖が、夜になると時々私を襲う。私はひっくり返り、足をばたばた振りまわし、頭を抱える。終いにはイヤホンをつけて脳をかきまわす。これが昼間に来るようになればそれが鬱というものだろう。


 死を解明することこそが、死んでもいいと思えることこそが、私の人生であり、生きる意味である。

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死と宇宙生物 炉扇 @Marui_Rimless

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