第二十八話:黄金の旅立ち

 朝焼けが、黄金色の草原を淡く染め始める。


 焚き火の煙が細くたなびく中、キャラバンは、静かに旅立ちの時を待っていた。


 悠月は、ゴブリンたちに背を向け、ゆっくりと歩き始める。

 

 小さな子供ゴブリンが、布切れを大事そうに胸に抱え、小さな手を精一杯振っている。

 その瞳は、別れの寂しさに、朝露のようにきらめいていた。


 親ゴブリンたちが、子供の背にそっと手を添える。

 悠月に向かって深く、無言で頭を下げた。

 彼らの表情に、熾火おきびのような、ほのかな温かさが宿る。


 リーダーゴブリンは、一歩前に出る。

 悠月の背中をじっと見つめた。その眼差しは、遠い地平線の向こうを望むかのような、深い信頼と敬意だった。


 悠月は、その見送りの光景に、足を止めた。

 ただ、深く、ゆっくりと息を吐き、静かに頷く。

 口元に、穏やかな笑みが浮かんだ。


 悠月は再び歩き始める。秋風が、背中を押す。


 風が運ぶは、乾いた土と草の匂い。

 その奥には、あのキャラバンから漂う、生命の温かい息吹が、確かに存在する。

 それは、彼の心に深く刻まれ、離れても消えることのない、確かな思い出。


 悠月は、広大な黄金色の草原を、ただ一人、穏やかな足取りで進んでいく。

 どこまでも続く地平線の彼方へ。


「この世界には、まだ、どんな『季語』が隠されているのだろうか……」


「そして、そこには、どんな『生命の輝き』が……」


 尽きることのない探求心と、新たな出会いへの温かい期待に満ちていた。


 旅は、これからも続いていく。


 広大な異世界で、俳句が、再び新たな「和」の絆を紡いでいくことを予感させながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る