第6話 コロシアムでの戦い

僕たちは、今、コロシアムにいる。

ターニャのいう24人の精者の中に、戦士と召喚士がいるとわかったので、まずは戦士を探そうと、やってきた。

強い戦士ならば、ここにいそう、という希望的観測からだ。

あと、優勝賞金10万Gにつられたのもある。


きっと、コロシアムの大会に参加すれば、決勝戦の敵が精なる戦士だったりするはずだ。

僕とターニャは1対1の戦いに向いていないので、ジャンヌとリッカがエントリーした。

2人は順当に勝ち上がっていくかに見えた。

しかし・・・


「くっ!不覚ですわ!」

準々決勝で、ジャンヌは敗れてしまった。


「口ほどにもないネ」


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792435409311309


ジャンヌを倒した敵は、全くの無傷だ。

エントリーネームはヤオ。

素手でジャンヌを倒すなんて。


「さぁ、このまま一気に優勝ネ」


一方、リッカは順調に勝ち進み、決勝でヤオと対峙することになった。

あれ?精なる戦士は?


「さぁさぁ、お待ちかね!決勝戦の開始です!始め!」

レフェリーがそう言うと、リッカとヤオは目にも止まらぬ速さで戦いはじめた。

リッカのスピードはジャンヌを上回るが、ヤオの速さはそれを凌ぐ。


イジャンヌが叫ぶ。

「リッカ! 私の仇を打つのですわ!」

「まかせろ!ツインスラッシュ!」


リッカは2本のダガーを同時に繰り出した。

しかし。

「なに!?」

そこにヤオの姿がない。


「この程度かアルね」


ヤオはリッカの背後に回り込んでいた。

服は破れていたが、ダメージはない。

ヤオはリッカに強烈なキックを叩き込む。

「うぁぁ!」

リッカは吹き飛ばされる。

レフェリーが言う。

「場外!ヤオ選手の優勝です!賞金10万Gはヤオ選手に進呈されます!では、表彰台にどうぞ!」

「チョロいネ。これでフカヒレ食べ放題ネ」


しかし、ヤオが表彰台に上ると、突然、レフェリーの体が変化していった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792435409322678


「くくくっ!オレはダークメイジ。バカめ。賞金などないわ。この大会は、強きものを集め、その淫気を喰うためだからな」

「な、なんですってアル!」


すると、ダークメイジが手をヤオに向ける。


「うあぁl!な、なんアルか!」


「混乱を与える魔法、コンフュージャだよ」

黒い光がヤオを包み込む。

ヤオは正気を失った表情をしていた。

「ふふ。これでこいつはオレの下僕だ」

そのとき。

「む!?この魔力は!?」

「・・・ごにょごにょふじさんろくに!おうむなく!フロストブレイクストーム!」


ゴオオオ!


巨大な吹雪がダークメイジを襲った。

ターニャの攻撃魔法だ。

「どうじゃ! お主が正体を現してから、十分に詠唱時間はあったぞ。奇襲こそ、ワシの本領発揮よ」

しかし。

「な!?」

ダークメイジは無傷だった。。

「ふん。オレの周囲は、常に魔法障壁を張ってある。お前の相手は、オレがしてやろう。はぁ!」

魔力の風が、ターニャを襲う。

「くぅ!」


「ターニャ!」

ジャンヌとリッカは、ターニャを援護しに行こうとするが、そこに、操られたヤオが立ちふさがった。

「お前たちの相手は、私ネ」

「さっきは負けましたけど、まさか2対1で勝てると思ってるわけじゃなきですわよね?」

「オレたちもなめられたもんだな」

「2対1?何のことアルか?」


そのとき、ジャンヌとリッカの背後からたくさんの男たちがしがみついて来た。

武闘会に参加していた選手たちだ。

彼らもダークメイジの混乱魔法コンフュージャを受けていたのだ。

さらに、僕の体も男たちに拘束される。


「く! 卑怯ですわ!」

「ふん。くらうがいいアルね!」


ズガァ!

バキィ!


ヤオの蹴りがジャンヌたちを吹き飛ばす。

「ふふ。お前たち、あとは好きにするがいいネ」


「ぐおぉぉ」

男たちは、戦闘不能になったジャンヌとリッカに近づいて襲い掛かった。

「あぁ!」

「くぅ!」

ジャンヌとリッカから淫気が放出される。


一方、ターニャは、ダークメイジに倒されたいた。

「く、やはり1対1は厳しいのう」

「くくく! お前にはオレが直々に手をくだしてやろう」

「うぐっ」

シュウウゥ。

ターニャからも淫気が放出される。


ゴクン。


ダークメイジはジャンヌ、リッカ、ターニャから放出された淫気を飲み込んだ。

「さて。あとはあの男だけだな。お前に任せたぞ」

「かしこまりましたアル」

ヤオが、選手の男に羽交い締めにされた僕に近づいてくる。

「ふふ」

ヤオは、僕の体を足で踏みつける。

「くぅっ」

「こういうのが好きアルか?」

ヤオは靴を脱ぎ、柔らかい足裏で僕を攻撃する。

「うあぁ!」

と、そのとき、僕の股間が光り、ヤオの脚にその光が移っていく。

「な、なんアルか!?」

キュゥゥゥ・・・

「わ、私、何をしてたネ?」

ヤオは、正気を取り戻していた。

それを見たダークメイジが驚く。

「バ、バカな!オレの魔法を無効化しただと!」

ヤオは、ダークメイジに向き直る。

「散々、好き勝手してくれたネ」

ヤオはダークメイジに向かって飛びかかっていく。

「やぁぁ!」

ヤオは、白く光る脚でダークメイジを蹴り飛ばした。

ズゴォォ!

「ギャアァァァ!」

ダークメイジは吹き飛ばされ、消滅していった。

すると、ジャンヌ、リッカや僕を押さえてあた選手たちも正気に戻った。

脚が白く輝いているヤオが僕に近づいてくる。

「こ、これは何アルか?」

「精脚、といったところかの」

立ち直ったターニャが言う。

シュウウゥ・・・

白い光が消えていく。

「やはり、1度で使えるのは一撃のみのようじゃの」

「精脚、アルか?」

「うむ。お主は16人の精者の1人。精なる格闘家。わしらと共に魔王を倒すものじゃ」

「驚きアルけど、さっきの光の力、信じるしかないネ」

「精脚の名前はお主が好きにつけるが良い。ジャンヌは精剣スペルミウム、わしは精術スペルマージじゃ」

「うーん。では、精脚、スペリアレッグ、ネ」

「うむ。いい名じゃ」

そこに、ジャンヌとリッカもやってきた、

「戦士は見つからなかったけずけど、結果オーライですわね」

「うん。ヤオもボクたちの仲間に・・・」

すると、目の前に警告メッセージが現れた。


<パーティーの人数かいっぱいです。別れる仲間を選んでください>


「え?どういうことですの?」

「そうか。ほとんどのゲームでは、パーティー、つまり一緒に戦う仲間の上限は4人なんだ。ヤオが加わると、5人になる」

「え?じゃあどうやって16人集めるんですの?」

「仲間を待機させる場所、例えば酒場や基地。あるいは乗り物、例えば馬車や飛空艇なんかが必要になるね」

すると、ヤオが言う。

「馬車なら心当たりがあるネ。ハーマルの町に商人がいるネ」

「でも、1度はオレたちの中から1人、パーティーから外れないといけないんだよな?」

「そうなるな。どうしよう」

「ヒロトが外れればいいてわすわ」

ジャンヌが言う。

「いや、わしが離れよう」

ターニャが言った。

「ここ数回の戦いで思い知ったわ。今のわしでは、戦闘で戦力にならぬ」

僕は驚いて言う。

「そんなことないだろ。確かに詠唱は長いけど、魔法は貴重な力だし、スペルマージの威力は、他の精なる力より強いと思うけど」

「じゃからじゃよ」

「どういうこと?」

「スペルマージは強すぎるのじゃ。この戦いでも使うことは可能じゃったろう。しかし、ジャンヌやリッカ、ヤオやお主を巻き込まずに使うことはできぬ。だから今回は精術を引き出さなかった。ならば、通常時の魔法を戦いで使えるようにするしかない」

「そ、そうか」

「案ずるな。方法は考えてある。ただ、少しばかり修行が必要じゃ」

そう言うと、ターニャは宝石の付いた指輪を取り出した。

「これにはわしの魔力が込めてある。お主らの位置もわかる。修行が終わったら合流しよう。それまでに馬車を手に入れてくれれば良い」

「わかりましたわ。きっと戻ってきてくださりましてね」

こうして、僕たちはターニャと一旦別れ、ヤオと一緒に旅を続けることになった。

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