「影から招かれる」

人一

「影から導かれる」

「どこだ、ここ?」

「完全に迷った…」

  ―こんな事になるなら、近道しようなんて思うんじゃなかった。

もう夕方だからさっさと帰らないと、母さんに怒られるのに…

「なんでこんな時に限って、スマホの充電が0なんだよ。昼間の俺!もっと節約して使えよ!」

 …文句言ってても仕方ないか。とりあえず、誰か探して道聞いて、さっさと帰るぞ。

と思うなり路地に目をやると、人影があった。

「すいませーん、ちょっと道に迷っちゃってー、ここがどこか聞きたいんですけどー」

そう言いながら、路地に入るともう人影は無かった。

「イヤホンでもしてたか?」

まぁ、誰でもイヤホンなんてしてるし、叫んだ訳でもないしな。

 なーんて言っていたら、ちょうど先の路地で揺れる人影を見つけた。

「すいませーん!ちょっと聞きたいことがあるんですけどー!」

 路地に入るがまた人影を見失ってしまった。

周りは住宅地だし、もう家に入っちゃったのか?

  そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていると、路地に入っていく人影を見つけた。

「今度こそ捕まえないと、もう日が落ちちゃうな…」

「すいません!!ちょっと待って貰っていいですか!聞きたいことがあるんです!―


 ……おかしい。なんでこんな走り回ってるのに誰にも追いつけないし、そもそも誰にも会わないんだ?

 …まぁ住宅地だし夕方だしで、皆もう家に帰ってるのが普通か。

「なんかもう1時間は走ってる気分なのに、全然夜にならないな〜時計が無いから時間感覚が狂ってるのかな。」

「…あっ!」

その目線の先の路地には何人もいるようで、沢山の人影が揺れている。

「よし!今度こそだ。」

そう言い走り出そうとする――が。

 ふと、足を止め周りを見回す。

「どこだ、ここ?」

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「影から招かれる」 人一 @hitoHito93

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