俺に彼氏が出来た話

@kanaharariri

第1話 幼馴染に告白された

「俺お前の事、好きなんだ。」

時刻は、19時半。

いつもの週末。今日も泊まりで、いつものようにゲームしたり、勉強したり。

…するって思ってるやん?

え?突然、男から告白されたら気まずくない?


どうすりゃ良いんだよ。

普通にいつもの、ゲームしようぜ〜って合図からさ、俺立ち上がりかけの中腰なんだが?

思考が止まって、頭真っ白になるってこんな感じか。

「はぁ?」

って返事しちまった。


「好きだから、付き合ってくれ。」


もう一回言ってくれの、はぁ?じゃねーんだわ。

え?俺、今日涼平の部屋泊まれんの?

つーかさ、お前の親とか、姉ちゃんとかも居るからね?

晩御飯、さっき一緒に食べさせてもらったしさ。

風呂なんかも、今まで一緒入ったりもしててさ。

え??やましい気持ちなんか、お前あったんか?


てか、返事はどうしたら良いのかも、考えた事ないから俺わからん。

まさに、俺中腰のままフリーズしてるからな?


けど、何か言わなきゃ。返事とか?って頭はずっと考えてる。

「え?罰ゲームかなんか?」

「違う」

速攻、食い気味に返事したな。


俺は、背筋を伸ばしてまっすぐ立つと、涼平の本心がわからないから視線を合わせてマジマジと見てみる。

…イケメンが顔赤くしとるな。

こいつ、本気か?

「いきなり意味わからん事言うなよ。」

とか言ってみる。


「ごめん。忠臣が好きすぎて我慢出来なくなった。ずっと好きだったから。

お前が俺の事、何とも思ってないのはわかってた。けど、意識して欲しいってずっと思ってた。

返事は今すぐ欲しい訳じゃない。ただ…」


言葉が出てこないのか、途切れる。

涼平は赤い顔のまま、目線が少し彷徨うけどしっかり俺の方を向いてハッキリと言う。

「俺がお前の事を好きだって知って欲しかった」


…イケメンズルいなー。

生まれて初めて好きだって言われたけど。初めてが男かー。俺、心からおっ◯い好きなんだけどな。

現実逃避したい。気絶したい。

何故なら、何か涼平の真っ赤な顔につられたんだと思う。

俺、絶対に顔赤くなってる!

恥ずかしいじゃねーか!

ヤバい!別に俺も好き!とかじゃ断じてない!焦ってわけわからん事言ってしまいそう。


「お前、何でこの最悪のタイミングでそんな事言うんだ。今めちゃくちゃゲームの流れだっただろ。

気まずっ。今日お前ん家泊まるってなってんのに、わけわからん事言うなよな。」

はい。慣れてないから、プチパニックになりました。


いきなり幼馴染から告白された俺の身になってくれ。

ちょっとゲームなんかしてる場合じゃないんだけど。

「ちょっとお前、そこ座れ。」

説教してやる。

と、棒立ちだった俺が改めて涼平の前に正座する。

「ふはっ。」

涼平は、さっきまで真っ赤だったのに、今は普通に笑ってやがる。腕で口ふさぐ感じで。

確かに笑ってしまうだろうな。こいつは最初からベットに腰掛けたまま俺に告白して来たんだ。


俺は、その涼平を背にしながらテレビとゲームに向き合い、立ち上がりざまに告白を受けた。

つまりは、俺はまだ正気じゃない。

冷静に、「ちょっとお前、そこ座れ」とか、言いながら、正座でちょこんと俺が座り直したら間抜けでしかないな。

めちゃくちゃダサい。イケメンとの差って悲しいな。


まぁ、話が進まないから、笑ってプルプルしているそこのお前も、笑うのやめれ。


コホンと咳払いをして改めて涼平に言ってやるか。

「お前、めちゃくちゃモテてるよな。

しょっちゅう告られてるし。正直、羨ましいと思ってた。けど、自慢の幼馴染がモテるのは嬉しくもあった。お前、いい奴だしさ。だから彼女が出来るのも時間の問題だな。くらいに思ってた。

今も、何かの冗談じゃないかと思ってる。」

ここまで言って、涼平の反応を見てみる。


ちょっと、真顔で何か言いたそうに口を開きかけるが、手を上げて話をさせないでおく。

反論は、俺の話を聞いてからにして欲しい。

確かに、冗談で告白する奴じゃない。優しい奴だ。

「けど、お前が冗談でこんな罰ゲームみたいな事を言う奴じゃないってのもわかってる。

わかっては、いる、が、俺の事もわかってるはずだ。」

俺はだんだん、苦虫をかみしめたような表情をしてきていると思う。…そう。結局は、俺はまだ思考停止してるんだ。

頭が真っ白で何も考えられない状態だ。

「俺は、今混乱してて、逆に俺が聞きたい。夢じゃないよな?何で俺にこのタイミングで告白したんだ?俺はどうしたら良いんだ?」

この状況が全くわからない。

本当にこいつは何考えて、こんな告白してくるんだ?

ハッキリ言って、たちが悪い。

何なんだよ。思考がうまく働かないからだんだんイライラしてくる。

滅多にない怒りが湧いてきて、もうこんな奴知らね。って気分になって、さらに口を開く。

「涼平がどんなつもりで好きだとかって言っても、俺女の子好きだし。お前とはそんなつもりで、つるんでたんじゃない。幼馴染で親友だから、俺もお前の事は好きだ。たぶんだけど、俺とお前の好きは違うと思う。悪いけど。」

ムカつくから、今すぐフッてやる。

考えるだけ時間の無駄だ。

今日は華金だぞ。せっかくゲームして、泊まりで、楽しく週末過ごす予定だったじゃねぇか。やっと入った高校生活、夏休み直前だぞ。クソッ。

何で楽しくするだけじゃ駄目なんだ。いきなり意味わからん事ぶっ込んでくるなよな。

俺は、おもむろに立ち上がってこう言う。


「俺、帰るわ」

やめだやめだ。帰るしかない。こんなつまんねー奴って知らなかった。あと、何か身の危険を感じる。

俺を好きっつってる奴と一緒に寝てたら襲われるかもしれねーし。

さっさと逃げるに限る。貞操の危機だ。


「忠、待って。」

腕を掴まれる。結構、強く握ってくるな。

「話がしたい。」

一瞬、目があう。

こいつ泣きそうな顔してる。

まぁ、俺がフッたからな。泣きたくなるのは分かる。妙に冷静になりながら、必死に俺にすがりついてくる感じは嫌いじゃない。

けど、俺だって折れる気はない。

「俺は、話なんかしたくない。」

帰りてーんだ。うんざりする。


「涼、手を」

離せって、言おうとしたけど最後まで言えない。

掴まれたままだった左手が、強く引っ張られて俺のバランスが崩れる。

涼平の方に倒れこんで、涼平の胸付近に顔がぶつかる。

「ぶっ。」

…痛い。

と思ったら、涼平の腕が俺に回り込む。

…抱きしめられてないか?


涼平は、俺を抱きしめてきて、ごめん。違うんだ。困らせるつもりじゃなくて。話したくて。とか何とかベラベラと喋りだす。

俺は俺で、涼平の心臓めっちゃバクバクしてる。

とか。こいついつも冷静で頭良くて、すっげぇ優しくて、めっちゃモテるのに、本当に俺の事好きなんか?って思えてくる。


しかし、動けん。力任せに抑えされて、何かヤダな。いい加減離せ。

「おい、離せよ。もう帰る。

お前の気持ちには答えるつもりねぇから。」

出来るだけ、冷たく答える。

イライラは全然おさまらんし、帰るのも妨害されて。力任せに押さえつけられてもさ。

許す気も無くなるわ。俺、今日泊まり楽しみにしてたのに、空気読めよ。


「忠、帰らないで欲しい。今は帰したくない。

このまま帰したら、忠はもう俺とは話もしてくれないだ」

「当たり前だろーが!」

最後まで言われる前にかぶせて、大きめに声に出す。

「まず、離せ。話はそれからだ。」

これも、出来るだけ冷たく聞こえるように言ってみる。


「嫌だ」


………はぁ?

何なんだよ。

力強いな。グッと力を入れて、抱きしめ状態から抜けようと思っても、がっつりホールドされて離れられん。

「そもそも、忠が俺の顔が好きって言うから、俺がだんだん気になって来たんだろ。忠のせいだよ。」

…言ってねぇ。

「しかもさ、泊まりの時には無防備な薄着で。パンイチとかさ。一緒に風呂だって入ってくるし。俺の事誘ってるのかなとか思えてきて。忠はさ、俺の事煽ってんのってくらい顔近い時あるぞ。俺だってずっと我慢してたんだ。」

…待て待て待て。

いきなり情報多いぞ。

「俺といると、めちゃくちゃ可愛い顔してくるじゃんか。いつも楽しそうに凄い笑顔でさ。それって、俺といる時だけ嬉しそうだし。」

……。

「時々、キスしたいのかなってくらい俺の顔じーっと見てくるだろ。あれ、1日1回はじーっと見て来てるからな。だから、断られる事だけは無いと思ってた。何なら告白したらすぐに付き合ってくれるかもくらいには思ってた。」


…………ダメだ。

色々突っ込みが追いつかんかった。

しかも何か恥ずい。自分で分かる。顔赤くなってるだろ。何か言葉が出ないってコレの事だな。

はくはくって口は動くのに、声が出らん。


けど、奴は違った。

何か熱い目で見つめてくる。

「忠、好きだ。付き合ってくれ。断るのはなしで。」


「だが断る!離せ!」


涼平もこんな返事が帰ってくるとは思ってなかったようだな?ボフっと腹にパンチを入れる。

驚いた顔で涼平の腕の力が緩んだ隙に、抱きしめ状態から抜け出す。


「忠臣、待って。」

「じゃあなっ。」

とりあえず、玄関にダッシュだ。涼平の部屋を出て階段を降りる。

途中、涼平のカーチャンにも声をかける。 


「帰ります。お邪魔しましたっ」


「あら?忠くん、泊まらないの?」


今止まる訳にはいかんのだ。


「はい!おやすみなさい!」


ダダダダっと、涼平が追いかけてくるのを無視して玄関から一気に走る。


俺ん家近いんだよな〜。けど、追いつかれたら面倒だ。3軒先のマンション3階。ここが俺ん家。

エントランスに入る前にチラリと後ろをみれば、涼平とバッチリ目が合う。

とりあえず、追いかけて来ても家に入れんとこ。

ひらひらと手を降って、エレベーターに乗り込む。


「…はぁ。何でこうなったんだ。」


エレベーターの中で、何なんだよって呟いたら何か泣きそうになって来た。頭に手を置いて

俺が何か泣きそうな気分だ。

フったのに、失恋した気分。

失恋よりも、キツいかもな。幼馴染で親友で。

そんな唯一無二を失ったんだ。

何か切ない。


エレベーターが3階で止まる。

ドアが開いて、俺は目を見開く。

目の前に、息を切らした涼平が俺を睨んでる。

また手首を掴まれて、中に押し込まれる。

逃さないとばかりに1階のボタンを押して、無言でお互いを見つめ合うだけ。

時間にしても数十秒なハズなのに、空気が重い。

外に出て、手首を引っ張られる。


…この先の公園か。


まぁ、話をするならそこになるわな。

はぁ。寝たいな。

沈黙が怖い。嫌だな。帰りてー。

外は、もうほとんど誰もいない。街頭の灯りと家の灯り。時折、車が通るくらい。

風も生ぬるい。


涼平が手をつかんでテクテク前を進むのを見ながら、俺もテクテクついていく。

手、離してくんないかなー。

マジで、考えまとまってねぇんだよ。誰か助けてくれ。俺だって気持ちの整理をしたい。


とりあえず、ブランコ前に誘導される。

最終会議の時間か。地獄だな。

まぁ。俺的には嬉しくない話にはなるんだろうな。

そう考えながら、とりあえず座って涼平の話を待つ事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る