第38話不死鳥が現れた
「お父様!メドック!」
リテが叫んだ。他の村人も二人の帰還を喜んだ。
「サーブルにモンテスも無事でしたのね。良かったわ。」
リテは安心した。
「ハンナお嬢様は大丈夫でしょうか?」
エトワールが二人に聞いた。
「それが私達はハンナお嬢様と顔を合わせていないのでどの様になっているのかは分からないのです。」
サーブルが答えた。
「恐らく、皇帝はエトワール皇子を牢に入れて血を抜いた様にハンナ妃の事も投獄するのではないでしょうか。地下にもう一つ部屋を作っておられました。」
モンテスが村長に伝えるとハンナの両親の顔が青ざめた。
「なんて事なの。」
母はショックでよろめいた。
「大丈夫です!私が必ず助けます!」
サーブルが母に伝えた。
「私も、ハンナお嬢様の事をお助けします。」
エトワール皇子もハンナの母に言った。
「皆さん、ありがとうございます。ハンナを宜しくお願い致します。」
ハンナの両親は深々と頭を下げた。
「ところで、この強力な結界はどうしたのじゃ?わし等でもこの結界の外に居たら皆の気配も姿も見えなかったぞ。メドックが居ないのになぜこのような事が出来たのじゃ?」
村長は首を傾げていた。
「それが実は…」
村人の一人が村長に事の成り行きを話した。村長はその話を聞くとひっくり返るのではないかと思う程に驚いた。
「ななななんだって!この結界は私の妻が張ってるのか!?」
その話を聞いていたメドックも驚いた。
「まるで時が戻ったみたいです!奥様がまた魔法を使えるようになるなんて!」
村長は奥さんの所に駆け寄り抱きしめた。
「あらあ。何?結界が張れなくなるでしょ。」
村長の奥さんはニッコリと笑った。
「奥様―。メドックは嬉しゅうございます。」
村長と奥さんのやり取りを見てメドックは涙を流した。
「あの!あそこを見て下さい!何かとんでもない力が城に近づいております!」
そう言ってモンテスが空を指さした。その視線の先には何か光輝くものがあった。
「何だあれは。エネルギーの量がとてつもないぞ。」
村長の顔は少し青ざめている。
「怪物なのでしょうか?恐ろしいです。」
メドックも眉間に皺を寄せてその光を見た。その場に居る全員がその遠くに見えている光に注目をしていた。
「あれは不死鳥です!だから未来が見えなかったんだわ!」
リテが大声で叫んだ。
「何だって!?」
村長達は驚いた。
「そんな!?あんな力を持った不死鳥なんて見た事がないぞ!なぜこんな所に現れてるのだ!?皇帝に見つかったらまずいのではないか!?」
村長がリテに尋ねた。
「これは呼び寄せの魔法です!ハンナお嬢様を囮に使ってあの不死鳥を呼び寄せているのです!」
「呼び寄せの魔法だと!?という事はあの侯爵が呼び寄せているのか。一体、目的は何なんだ!?」
「村長。ハンナは大丈夫なのでしょうか?」
ハンナの両親が村長に尋ねた。
「分からぬ。あの侯爵が何を考えてるのか全く見当がつかぬ。」
村長は首を横にを振った。
「あの、私、今からもう一度城に戻ります。ハンナお嬢様を助けに行きます。」
サーブルはそう言うと村人に武器を借りた。
「サーブル殿。私もお供してよろしいでしょうか?」
モンテスが胸に手を当て頭を下げた。
「ワシも直ぐに助けに行きたいのじゃが、さっきの瞬間移動で体の回復を待たねばいかん。」
村長はもう立ち上がるのもやっとの様だ。
「馬をお借りできれば何とかなるかもしれません。」
サーブルが馬を撫でながら言った。
「いや、ここからハンナお嬢様の居る所までは、馬でも一時間程はかかるだろう。そうなると助けるのは難しくなる。」
エトワールはそう言いながら、サーブルとモンテスの方に歩いて来た。
「では、どうすればいいのでしょうか。」
サーブルが困った顔でエトワールに聞いた。
「いい物をお持ちではないですか。」
エトワールがサーブルが隠し持っていた村長から貰った空気銃を指さした。
「これですか?でもこれは一度、使ったのでもう使えないかと。捕らえられた時もおもちゃだと言って没収はされませんでした。」
「構いませんよ。」
エトワールはそう言うと銃に魔法をかけた。すると空気銃は大きな生き物の様になった。
「うわ!」
サーブルは驚いて声を上げた。
「早く!モンテス、サーブル入って!」
エトワールはそう言うと銃口を手でグニュと広げた。
「え?え?」
戸惑うモンテスとサーブルを急かすように銃口の中に入れるた。
「エクラ!私が入ったら銃の引き金を引いて!」
エトワールはエクラに伝えるとサッと銃口に飛び込んだ。
「分かりました!」
エクラはそう言うと引き金をグッと引いた。だけど一人の力では少し足りない。
「手伝うわ!」
そう言ってリテも一緒に押してくれた。
――スポーーーーン!――
生き物の様な大きな空気銃はいい音を出して三人を吐き出した。三人はアッという間に城の方に飛んで行った。
その様子をリテ、エクラ、村長、ハンナの両親、村人達は祈る様に見ていた。
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