第36話 まだまだいけるわよ
「もう直ぐで城に近づくぞ!皆、私と村長の後ろに着け!」
「結界を強めるぞ!」
エトワールの誘導で、ここまで一糸乱れぬ整列で進み結界も綺麗に張れてコットにも皇帝にも気づかれて居ない。
「エトワール!大変!サーブルは城には居ないわ。」
リテが何かを察知した。
「何!?どこに居るか分かるか?一度、馬を止めるか?」
「いいえ。このままで大丈夫よ。ハンナお嬢様の気配も感じるから直ぐに分かるわ。」
そう言ってリテが頭を集中させた。
「大変!!処刑場よ!それに私を信頼してくれたいたモンテスも居るわ!二人は私達が逃げたから見せしめで処刑になってしまう!急ぎましょう!」
「何だと?処刑場だって!?あのデグラスの奴め。思い通りにはさせんぞ!」
村長はやりたい放題の皇帝に怒り心頭だった。
「処刑場の裏に細い抜け道があります。結界を張りながら近づいてお父様の瞬間移動で二人を連れ出す事は出来ないかしら。」
リテが村長に言ったが、村長は成功するか不安だった。
「一人だけなら確実に連れて来れるが二人となると出来るか分からない。もし失敗すると最悪、三人とも移動出来なくなって捕らえられるだろう。ここは一人一人の方が可能性としては高い気がするが。」
「とは言え、皇帝やコットの前に姿を現すのは危険すぎるわ。どうにか出来ないかしら。」
リテは考え込んだ。
「取り合えず、一度止まりましょう。村人にも意見を聞いてみませんか?追いつめられた状態で一人で考えるのは良くないです。」
エトワールが村長に言った。村長は冷静になり一度馬を止めて皆で話し合う事にした。
「皆の衆、知恵を貸してくれ。リテをここに帰してくれた者達が皇帝の手によって処刑されようとしている。もう、処刑台の元に居るようじゃ。どうにかして助けられないものか。誰かいい案を出してくれ。」
「メドックも瞬間移動の魔法が使えるからメドックと行けばいい。」
村人の一人が提案した。
「それはいいが、メドックが抜けたら結界が弱くなり妖術師に見つかるぞ。ハンナお嬢様のご両親もおるからきちんと守らないといけない。」
またある村人が指摘した。
「どうしたもんか…」
村長は時間もあまりないので、直ぐに決断を迫られた。
「こうなったらメドックと行く事にする。ここはエトワールに任せるぞ。」
村長はメドックと瞬間移動をしてサーブルとモンテスを助ける事にした。
「お爺様、ここは私にお任せください。結界を張る事は出来ませんが、何とかして皆さんの事をお守りします。」
エトワールは村長を見て頷いた。
「あなた。大丈夫よ、私が結界を強く張るから安心して。」
そう言ったのは村長の奥さんだ。
「え、お前、何を言ってるんだ。もうお前はもう魔法は使えなくなったではないか。」
村長は奥さんを窘めた。
「大丈夫よ。孫にいい所見せたいわ。」
これには村人もハンナの両親もエクラもやるせない気持ちになった。
「分かった。そうか、じゃあここの皆を守ってやってくれ。」
村長は奥さんにそう伝えた。そこにエクラが走って来た。
「村長、これ、短剣です。私は使わなかったので村長がお持ちください。もしもの時の為に。」
エクラは村長に短剣を渡した。
「おお、これはありがたい。大きな武器だと移動の時に邪魔になるのでいつも外しておるのだが、これは丁度いいな。」
村長がエクラにお礼を言った。
「では、メドック行くぞ。」
「はい。村長。」
二人は呼吸を合わせて何回か深呼吸するとすっと消えた。
その時、結界が一瞬弱くなった。それは魔力を持たないエクラでも分かる程だった。
「や、これはまずいのでは…」
不安な気持ちが大きくなった時、なぜか炎が燃え上がる程の強い結界が張られた。
「え……?なにこれ?」
エクラも村人もエトワールも驚いた。
「どお?まだまだメドックには負けないわよ!」
その結界を張ったのは村長の奥さんだった。村人は一瞬ポカンとしてしまった。
「わあ。ありがたや。奥様、昔の奥様に戻られたようじゃ。」
「これなら安心できるわい。」
ようやく状況を把握できた村人達は手を合わせ空を拝んだ。
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