ホントにあった嘘みたいな話
ただのうに
先輩
本当にあった嘘みたいな話。
高卒でとある製造業の会社に入社
はじめての会社、はじめての一人暮らし
はじめての社会人
緊張と不安とちょっとの楽しみと
いつの間にか始まっていた社会人としての生活
実際やっていけるか不安だったけど
なるようにしかならないかなっと
あまり期待もせず社会人の第一歩を踏み出した。
会社もそこそこ有名だったので
初めの研修もしっかりしていて
2週間ほど研修を行って
所属する課を教えてもらいその後その課は
何をしていて何を造っているのか
また、研修が2週間くらいあった。
もともとヲタクだったから
社会人になったらゲームとかアニメとか
見なくなったりしなくなるのかな・・・
ついにヲタク卒業か~とか思っていたら
とある先輩に仕事を教わることになった。
T先輩は自己紹介をした後すぐに
仕事について教えてくれた。
生産ラインの最終工程を任されていたT先輩の
仕事を覚えてひとりで1ライン見れるよう仕事と覚えるように
班のリーダーに言われていたから
必死でメモをとって失礼の無いように頑張って覚えようとしてた。
ある程度教え終わったくらいでT先輩が
「ずっと仕事の話じゃつまんないでしょ」
そう言ってきたが、早く覚えないと!とおもって
そんなことないです。早く覚えろって言われたので・・・
っと答えると
「うちのリーダー怖いからねぇ・・・ほかの班の人たちが
うちの班の事なんて言ってるか知ってる??」
いや、わかりません。
「軍隊班って言われてるよw」
うちの班はリーダーもサブリーダーも今じゃ考えられないくらい
厳しい人だった。
ミスをすれば殴る。言い訳をすれば殴る。
遅れれば殴る。そんな厳しい班だった。
「覚えようとしても限界あるしさー
そういえば休みの日はなにしてるの」
T先輩がニコニコしながら聞いてくるから
自分ヲタクなので部屋から出ないでずっとゲームしてます。
そう答えるとT先輩は目をまんまるにして
「え!?マジ!?いいじゃん!何してるの??」
実はT先輩も普段からゲームばっかり
今期のアニメもほとんど見てるそういった
自分と同じヲタクだった。
こうなるとヲタクは一気に距離が近づく
そこからはゲームの話とアニメの話で仕事の時間が終わるまで
お互いの好きなものを語り合っていた。
そんな適度に仕事の話をしつつヲタ話をメインに
日々の業務をこなしていたある日
その職場でリーダーに指示を出す人
つまりリーダーよりもちょっと偉い人から呼ばれ
「おまえそこそこ仕事できてるみたいだから
来週からこのラインの最終工程をお前ひとりでやってみろ
だから来週から班も違う班に行ってもらうから」
そう言われて嬉しさとT先輩と離れてしまうショックで
複雑だった。
言われてすぐにT先輩に
違う班になってしまいました。と伝えると
「そっかーー残念だけどその班リーダーすっごい優しくて
いい人だから良かったじゃん!がんばれよー!」
T先輩は応援してくれてた。
班は変わっても職場は交替勤務で
T先輩と仕事をする時間は一緒だったから
わからないことも困ったことも
アニメもゲームの話も
仕事の合間を見て話に行っていた。
そんなはじめての社会人としては良いスタートを
きれたんじゃないかと思っていたある日
班がまた代わりT先輩と仕事時間が合わなくなった。
まぁしょうがないか
そう思い日々辛い仕事をこなしていく中
だんだん自分のことでいっぱいになり
T先輩なにしてるんだろう
そんなことを思う暇もなくなり
1日を乗り切るのに必死になっていった。
ひとりで仕事を任されるようになり
余裕がなくなり時間内に仕事が終わらず
なかなか帰れない日も増え
帰っては寝る。起きたらもう仕事に行く時間
そんな繰り返しに段々口数も減り
言われたことをするだけのロボットみたいになっていった。
そんな時に何故か急にT先輩とのことを思い出した。
そういえば先輩元気にしてるかな?最近会ってないな
今日仕事終わって引き継ぎ終わったら
先輩の見てるラインに行ってちょっと話しに行こう
そう思い仕事を珍しく頑張って早く終わらせて
T先輩に会いに行った。
しかしそこには違う先輩がいた。
あれ?T先輩はお休みですか?
「あ~あいつここ1週間会社に来てないよ。
も~困ってんだよこっちも」
え?どうして??体調崩したのかな?
そんなことをいろいろ考えながら
ほかの先輩やT先輩と仲がいい人に聞いていると
なんとなくT先輩がどうなってるかわかった。
ある日T先輩が休みを取った。
しかしリーダーは「どうして?なんで?」
と、問い詰めたらしい。
普通はNG行為だが当時はそんな感じ。
そして次の日どこどこのコンビニにT先輩が居たとか
パチンコ屋に居たとか
いろいろ言われリーダーにもそこで問い詰められ
大変な目にあったらしい。
しかし、うちの会社の先輩たちは
みんなやってる事だった。
仕事前にパチンコ屋にいってあたりが終わらないから
休むなんて皆よくやっていた。
しかしT先輩の班は軍隊班
ただで済む訳もなく大変だったらしい。
その日以降T先輩と連絡が取れないらしく
課長たちが住んでいるマンションにも行ってみたが
生きてはいるが会ってはくれないそうで
呆れたリーダーは「そんないい加減な奴いらん」
そんな事を言っていたらしい。
可愛そうだな。あの班じゃなければ
ここまで酷くならなかっただろうに・・・
復帰したら班も変えてもらえるみたいだから
早く元気になるといいな。
そのくらいの感情で自分も暇じゃないし
毎日楽じゃないからと
そう思うだけで終わってしまった。
そんなある日
仕事前の朝会で課長が今出社している人を集めだした。
仕事忙しいのに何なんだよ・・・そんなこと思っていたら。
「えー非常に残念なことにTが亡くなりました」
・・・・え?
頭が理解してくれなかった。
あ、夢見てる?そんなことある?
そんなドラマやアニメみたいな・・・え?
でも、事実だった。
マンションの屋上からだったらしい。
お葬式とかはもうすでに終わらせていたらしいが
ご両親が会社の人にもお世話になったからと
会社の人間だけでの式を行ってくれるらしい。
参加したい人は課長に言うようにっと
自分にとってはじめて仕事を教えてくれた人で
社会人になって初めての
会社の先輩だったから行かない選択しはなかった。
当日
会社がバスを出すから
休みの日に会社に初めて着る喪服を着て
バスを待っていると。
軍隊班のリーダー御一行が現れた。
班が変わっているのに参加している自分を見て
「なんでお前がいるの?そんなに仲良かったか?w」
「暇だから来たんじゃないですか?w」
この人たちなんでこんなにヘラヘラしてるんだろう・・・
え、今から遊びに行くと思ってるんじゃないの?
すこしイライラしつつ
こいつらと一緒だと思われたくないと思い
全員がバスの後ろの方に集まって喋っていいたので
一番前にひとりで座り
イライラを抑えつつ考えていた。
なんでT先輩は自ら命を・・・
会社の話では預金がほぼなく
ギャンブルで使い切ってしまい
それが原因でって言っていたが
ホントにそうか?班の人間が攻めすぎたせいじゃないのか?
なんでだれも気にかけなかった・・・
もし休んでいる現状をしった自分が
もしあの時連絡していたら
もしもう少し自分に行動力があったら
こんなことになってなかったんじゃ
そんな事を考えても何も変わらない
もうT先輩はいない。
いろいろ考え段々落ち込んでいる自分に
後ろの連中の声が無駄に大きく聞こえる
「弁当出るらしいっす!どんな弁当ですかねぇ!」
「そこそこいいやつみたいっすよ!」
「貧乏人どもが!弁当ではしゃぐなよw」
イライラが増す。
お前らのせいでT先輩は!!!っと
大声で言いそうになる。
そんな勇気がある訳もなく
ただひたすら聞かないように意識しないように
たった20分程度の移動時間が
ものすごく長く感じた。
式場に到着して初めてT先輩のご両親に会った。
とっても優しそうだった。
「うちの息子がご迷惑おかけしました。」
迷惑・・・・
そんな事言うんだ・・・
何もかもが納得がいかない。
出されたお弁当。とっても豪華だったけど
一向に箸が進まない。
残しちゃうと失礼になるだろ!と言われたが
ぜんぜん食べれない。立ち直れない。
周りの人間の声がうるさい
イライラが収まらない。
結局ほとんど食べれず残してしまった。
いろんな感情でぐっちゃぐちゃになり
帰り着いて一人ずっと考えていると
あの時何もしなかった自分も
あの人たちと同じじゃないか
電話でも一回してたら
それもできないくらい疲れていたか?
なんで何もしなかった。
そんなことを考えていると
いつの間にか椅子で寝てしまっていた。
その次の日
気持ちは切り替わらず落ち込んでいたが
そんな時でもお腹はすいてしまう。
昨日お弁当もまともに食べれず
帰ってきてもいろいろ考えてたら寝ちゃってたし
なにか食べよう。
そしてまたあしたから仕事も始まる
切り替えないと・・・
その日の夜中
多分2時頃だったと思う
スマホが鳴る。
こんな時間にだれ?すこし怒りながら
スマホを手に取り見てみるとそこには
[T先輩]の文字
ぇ!?ありえないと思ったけど
確実にT先輩からの着信
迷わなかった。電話に出て
もしもし!T先輩???
「ーーーーーーーーーーー」
無音。
T先輩どうしました?T先輩??
「ーーーーーーーーーー」
なにか聞こえるかもしれないと思い
目を閉じ音に集中する。
「ーーーーーーーーーーーーー」
「ーーーープーープーーープーーーーー」
電話は切れた。なにも聞こえなかった。
悔しくなってもう一度かけ直す。しかし
「おかけになった電話番号は・・・・」
そりゃそうだよな・・・・・
その日の仕事で仲が良かった同期一人に
この事を誰にも言わないでと言い
伝えると
「は??怖!!てか、お前よく電話に出たな!!!」
そう言われて初めて思った。
たしかにそうじゃん
普通に考えたらおかしいじゃん
「お前やばいかもよ?その履歴消したほうがいいって!」
そう言われて
たしかに・・・と愛想笑いをした。
消せなかった。
ちっとも怖くなかったし
不思議とあの電話ではなにも聞こえなかったけど
自分にはT先輩が
お前はやっぱりわかってくれてたんだ
お金が無くなったからとかそんな理由じゃない
そう言ってくれてる気がした。
お前はあいつらと一緒じゃない。
T先輩が慰めてくれたような気がした。
それが本当なのかはわからない
T先輩にしかわからないし
あの電話もどうしてかかってきたのかわからない
だけどあの電話がなかったら
自分も立ち直れていなかったかもしれないのは事実
T先輩あの電話の意味は
自分の感じているものと同じですか?
そんな嘘みたいな
本当にあった不思議な体験。
ホントにあった嘘みたいな話 ただのうに @Uni73
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