「愛」とは所有すること――
SNSが存在する現代にあって、古の掟が息づく砂漠の王国アメニア。
愛する者を外部の脅威から守るため、美しく堅固な「檻」に閉じ込めることが、王族に伝わる至上の愛情表現だと信じられている国。
そんな異質な世界に、現代日本の常識を持つヒロイン、真珠は突然投げ込まれます。
彼女を望んだのは、この国の若き王太子、ウル。
彼の愛は法や倫理を超え、ただ彼自身の渇望だけを指針とする、絶対的な支配そのもの。
ウルが真珠に示す狂おしいまでの執着心が、この物語の根底を支えています。
彼の愛は、ただ一人だけを求め続ける究極の愛。
その激しさは暴力的で、読む者の心に緊張を強いますが、同時に抗いがたい甘美な毒をもたらします。
「お前は俺のものだ」という言葉が放つ、抗えないほどに切実な響き。
それは常軌を逸した独占欲であり、彼の魂の叫びです。
冷酷な仮面の下にある孤独と、愛し方を知らない獣のような純粋さに、読者も彼の虜になってしまいます。
ですが、囚われた真珠も無力なままでは終わりません。
絶望の淵で抗い、傷つき、次第にその檻の中で意志と強さを見出していきます。
支配者に媚びる奴隷であることを拒み、狂気の愛を理解し受け入れて、やがて対等なパートナーとして隣に立つという覚悟を決める。
これは、一人の女性の壮絶な成長物語でもあります。
優しく穏やかな愛の物語を求める方には、この作品はおすすめできません。
愛が自由を奪う危険な支配の果てに、ヒロインが見出すものは何か。
狂った愛の中でしか咲くことのできない、強烈な魂の物語を求める読者にとって、この作品はきっと忘れられない一冊になるはずです。