第36話 祈祷、雨乞いの儀
「ちょ……アニーちゃん。これは一体どうしたの? 呪いの道具?」
「てるてる坊主って言うのだけれど。まぁ、ある種、呪の道具ね」
紙を丸めて作った、てるてる坊主が逆さ吊りにしてある私の部屋を見てシルビア達が仰天している。
「なんの呪いよ! 気持ち悪くてしょうがないわ」
「呪いにだって
販売が開始してから一度も雨が降らない。降らないどころか、空は雲一つ無いピーカンが続いている。私の日頃の行いが良すぎたのか、それとも私達の中に晴れ女が潜んでやがるのか。
アニー・アンブレラの販売手法は、雨が降ると売れる仕組みだ。当然ながら雨がふらなければ売れないのだ。この地域は比較的降雨量が多いはずなのに、そして雨の多い季節なのに、なぜ降らない。
経営術オリンピアは、三ヶ月間の決算に加え、売上利益、口コミなど多角的な評価で優勝チームが決まる。三ヶ月間ずっと雨が降らないなんてことは、流石にないと思うが幸先の悪さに辟易とする。
弥生時代の人の気持が手に取るようにわかる。そりゃ卑弥呼が崇められるのも納得だ。科学の世界に育った私は、お祈りやスピリチュアルとは縁遠い人生を送ってきた。が、しかしだ。現実に転生して中世ヨーロッパのような世界にいるのも事実。
「みんな! 雨乞いをするわよ!」
「「「えぇぇぇぇぇー」」」
「ついにアニー先生が壊れた。でも、壊れたアニー先生も素敵♡」
各々が思う雨乞いのスタイルに着替えた。
シスターの格好をするシルビア。スカートが短すぎないか? エロ過ぎる。
体中にコットンの綿を貼り付けて雲に扮するテレサ。なんかチンチクリンで愛らしい。
魔女のようなツバの大きい帽子と杖に黒いドレスのヴェロニカ。というか、このスタイルの良さは何を食えばそうなるんだ。まるでパリコレのスーパーモデルじゃないか。
「アニーちゃん……その格好はなに?」
「ふふふ。卑弥呼よ」
「ヒミコ?? 誰それ」
私達は馬車で伐採場近くの森へと出かけた。
「アニー様たち……今日はどんな催しが?」
ロベルトが笑いを堪えているのがわかる。
「雨乞いよ! ロベルト、貴方も参加しなさい」
「アニー様、それはご命令でしょうか……かなり気が進まないのですが」
「業務命令よ!」
時代が時代ならパワハラで訴えられるだろう。が、これもビジネスの為だ。ロベルトよ人柱になりなさい。
「ぷぷぷぷ」
「ふ、ふふふ」
「あははっははははは」
上半身裸、下半身が草木の
くぅ。ロベルトがあと二、三十歳若ければ……
こうして始まった雨乞いの儀。各々が好き放題雨を願っている。前世の私ならこんな事はしない。初詣すら行かないレベルの無神論者の私が珍妙な踊りをし始めて三十分。
「はぁはぁ、疲れたわ」
「雨どころか、どんどん日差しが強くなってるじゃない」
「もうやめたい」
「私……お腹、空きました」
上裸のロベルトがその場に槍を置き、遠くに停めた馬車の荷台から絹の風呂敷に包んだ物を持持ってくる。その絵面といったらは酷く滑稽であった。
「みなさん、お昼にいたしましょう。ジョゼさんに寿司を結ってもらったのです」
風呂敷を広げるとランチョンマット代わりになる。これはロベルトがリタに作ってもらったものらしいがかなり便利そうである。寿司ジョゼのお持ち帰り用に発注するのもありかもしれない。
良い天気の中、ピクニックお寿司ランチ。魔女っ子とふわふわとパリコレモデルと上裸のおじさん。異様な光景であるが、有意義な休日を過ごせたと思えばよいか。
「わぁ、ウニ、イクラもあるわ! さあ、みんなでお寿司を楽しみましょう」
寿司を堪能し、片付け始めると。
ポツ――
ポツポツ――
さっきまでの快晴はどこに言ったのか。どこからともなく生まれた分厚くて黒い雲が太陽を隠し、バケツを引っくり返したようなと比喩される程の豪雨が降る。誰の雨乞いの効果が出たのかを特定して、雨傘の売上の為に雨乞い部長に任命しよう。
私達は両手を広げて空を仰ぎ、雨を喜こんだ。
こんなに雨が降っているのに。
「なんで雨傘を持ってこなかったのよぉぉぉぉ」
私達はずぶ濡れになって帰るのだった。
◤ ̄ ̄ ̄ ̄◥
あとがき
◣____◢
読んでくださりありがとうございます!
『落ちぶれ令嬢の経営術!』 お楽しみいただけましたか?
わぁ面白いわよー! 続き読みたいわよー! と思ってくれましたら
フォローと♡、目次ページの下の方の評価☆☆☆をくれると、とっても嬉しいです。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
〝恋愛はそっちのけ! 好きなように人生を謳歌しちゃおう!〟
『宮殿から飛びだせ!令嬢コンテスト』に参加しております。
応援、ご指導、ご鞭撻のほど、是非よろしくおねがいします。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
次の話もお楽しみいただければ幸いです。
がみさん🐾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます